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新車「777万円」級なのに…メルセデス・ベンツEQAが“300万円台後半”から狙える意外なワケ

  • 2026.4.18
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

新車価格777万円クラスのメルセデス・ベンツのEVであるEQA。実は、中古車市場に目を向けると、走行距離の少ない高年式の車両が300万円台後半から400万円台で流通していることがあります。なぜこんなに安いのかと疑問に思うかもしれません。

本記事では、EQAの確かな魅力と前期・後期モデルの違いに触れつつ、プレミアムEVならではの市場背景や流通事情から、その安さのカラクリをひも解きます。

ベンツのEVが半額級で出回る驚きの現状

新車価格がおよそ770万円台からに設定されているメルセデス・ベンツのEQAですが、中古車市場を探してみると少し不思議な現象が起きています。それは、2021年から2023年式といった高年式のモデルが300万円台後半から、そして走行距離が1万キロメートル未満の2024年式以降のモデルであっても400万円台から見つかることがあるという事実です。

新車価格の半額以下にもなるこれほどの大きな価格差を目の当たりにすると、何か見えない重大な欠陥があるのではないかと不安を感じる方は多いかもしれません。憧れの輸入車ブランドの高額なモデルが、わずかな期間で急に安くなっていれば、警戒するのはごく自然な心理と言えます。

しかし、この目を見張るような価格差は、決して車体そのものにネガティブな理由があるから生じているわけではありません。実は、車両の品質や性能の問題ではなく、現在の自動車市場の仕組みや特殊な流通の構造が大きく関係しています。ここからは、その驚きの価格を生み出している理由について詳しく見ていきましょう。

そもそもEQAはどんな車なのか?確かな魅力

市場の仕組みについて触れる前に、まずはEQAという車が本来持っている実力について整理しておきます。前提としてお伝えしたいのは、この車は決して魅力がないから安くなっているわけではないということです。

EQAは、日本の複雑な道路事情や狭い駐車場でも扱いやすいサイズのSUVとして設計されています。電気自動車ならではの静粛性や、モーターがもたらす滑らかで力強い加速感はもちろんのこと、メルセデス・ベンツ特有の上質な内装や乗り心地もしっかりと備わっている車です。最新の運転支援システムも充実しており、長時間の運転でも疲れにくい工夫が施されています。

ここで少し注意しておきたいのが、年式による仕様の違いです。中古車市場で300万円台から見つかるのは主に2023年以前の前期型であり、こちらは最大トルクが370N・m、カタログ上の航続距離が422キロメートルという仕様になっています。一方で、2024年のマイナーチェンジで登場した後期型では実用性がさらに向上しました。バッテリー容量が70.5kWhに拡大され、航続距離が591キロメートルへと延びただけでなく、最大トルクも385N・mへと引き上げられています。より高性能なこの最新モデルであっても、中古市場では400万円台から500万円台がボリュームゾーンとなっており、新車と比較すると非常に魅力的な価格帯になっています。

このように、車そのものの完成度や商品力は非常に高いと言えるでしょう。それにもかかわらず、なぜ中古市場ではこれほど価格が落ち着いて見えるのでしょうか。その背景には、電気自動車を取り巻く環境と、いくつかの複雑な要因が絡み合っていると考えられます。

なぜここまで安く見えるのか?4つの市場構造

EQAの価格が中古市場で下がりやすい背景には、大きく分けて4つの構造的な理由があるようです。

1.新車価格の高さと補助金制度

1つ目の理由は、新車価格の高さと補助金制度が関係しています。プレミアムブランドの電気自動車は大型バッテリーなどを搭載しているため、スタートの価格帯がどうしても高額になります。しかし、新車を購入する際には国や自治体からの補助金が適用されるため、オーナーの実質的な負担額はカタログ価格より低くなります。

一方、中古車市場ではその補助金分があらかじめ差し引かれた実勢価格からスタートすることが多く、見かけ上の値下がり幅がより大きくなりやすいというマジックのような構造が働いています。

2.日本国内の電気自動車需要

2つ目は、日本国内における電気自動車需要の現状です。2023年から2024年にかけての日本の新車販売台数における電気自動車の普及率はおよそ1%から2%台にとどまっています。市場の過半数をハイブリッド車が占める現状では、中古の電気自動車を積極的に探している買い手はまだ極めて限定的と言わざるを得ません。

買い手が少ないということは販売店にとっても在庫リスクとなるため、需要の穏やかさに応じて価格を下げざるを得ない土壌があると考えられます。

3.消費者の不安感

そして3つ目の要因は、中古の電気自動車に対して消費者が抱く特有の不安感です。スマートフォンと同じように数年でバッテリーがダメになってしまうのではないかというイメージが先行し、購入への足踏みを引き起こしている側面があります。

しかし実際の現代の電気自動車は、20万キロメートル走行しても80%以上のバッテリー容量を維持するケースが多く、極端な劣化はしにくいとされています。それでも、中古車のバッテリー状態を客観的に評価する業界の統一基準がまだ定まりきっていないことへの警戒感が、需要を落ち着かせる要因になっているのではないでしょうか。

4.輸入車の流通事情

最後の4つ目として、輸入車特有の流通事情も大きく影響している可能性があります。輸入車ディーラーでは、試乗車として短期間使われたデモカーや、販売店名義で登録されただけの未使用車が一定期間が経過したのちに中古車市場へ放出されることが少なくありません。

需要を上回る供給が一時的に生まれるため、EQAのような比較的新しい車種であっても、こうした走行距離の少ない良質な車両が豊富に流通することで、市場全体の価格が下がりやすくなる仕組みが存在しているようです。

安さの裏にある理由と賢い選択肢

ここまで見てきたように、EQAが中古市場で安く見える理由は、プレミアムブランドゆえの価格構造や、日本特有の電気自動車市場の成長段階、そして輸入車ならではの流通事情が複雑に掛け合わさった結果です。決して、車としてダメだから価格が落ちているわけではないということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

この背景を踏まえると、EQAの中古車は条件さえ合えば非常に賢い選択肢になる可能性があります。たとえば、自宅に充電環境を整えることができ、日常的な近距離や中距離の移動がメインの方には適しているでしょう。また、将来のリセールバリューよりも、今現在の乗り心地や充実した装備による満足感を重視する方にとっては、手の届きやすいプレミアムカーとして魅力的に映るはずです。

一方で、数年後の買取価格を最優先に考える方や、頻繁に長距離のドライブをする方、あるいは自宅周辺での充電環境の確保が難しい方には、少し慎重な検討が必要かもしれません。

半額級という価格のインパクトだけで安易に飛びつくのは避けるべきですが、安さの背景をしっかりと理解し、ご自身のライフスタイルに合致するかどうかを見極めることが大切です。市場の仕組みが作り出したこの状況は、見方を変えれば、上質な電気自動車をお得に手に入れる絶好の機会と言えるのではないでしょうか。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


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