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「雨の日だけ加速が悪くなる…」整備士の警告を“様子見”した20代男性、国産車を襲った“思わぬトラブル”

  • 2026.5.31
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「晴れの日は普通に走るから大丈夫」

そう思っていた小さな違和感が、ある雨の日に突然のエンジン停止。車の不調は、いつも同じ条件で起きるとは限りません。特定の天候や温度、湿度でだけ現れる症状には、重大な故障の前兆が隠れていることがあります。

今回は、“雨の日だけ加速が悪くなる”という相談から始まった、点火系トラブルの実例です。

「雨の日だけ加速が悪いんです」

ある日、20代男性が国産コンパクトカーで来店しました。

「雨の日だけなんですけど、なんか加速が悪くなるというか、エンジンがもたつく感じがするんです」

ただ、車を預かった日は晴天。試運転をしても症状はまったく出ません。アイドリングも安定しており、警告灯の点灯もなし。診断機にも大きな異常履歴は残っていませんでした。

しかし、詳しく点検を進めると、点火コイル周辺に気になる痕跡がありました。コイルの外側やゴム製のブーツ部分に細かなヒビが入り、絶縁部分が劣化していたのです。

点火系は、非常に高い電圧を扱う部分です。本来はしっかり絶縁されていることで、必要な場所へ正確に電気を送っています。ところが絶縁が劣化すると、湿気や水分が付着した際に電気が逃げる“リーク”が発生します。晴れて乾燥している日は問題なくても、雨の日や湿度の高い日は正常に点火できず、失火や加速不良を起こすことがあるのです。

「今は軽症ですが、このままだと雨の日に失火する可能性があります。点火コイル周辺は早めに修理したほうがいいですね」

すると男性は少し悩んだあと、こう返しました。

「でも普段は普通に走るんですよね。とりあえず様子見でも大丈夫ですか?」

確かに、その場では普通に走っていました。毎回症状が出るわけでもありません。しかし、“条件付きでしか出ない不調”こそ、判断を難しくする危険なサインでもあるのです。

「晴れなら普通」が危険な理由

それから数か月後。その車は再び入庫しました。今度はレッカー搬送でした。

話を聞くと、雨の日の通勤中、交差点で突然エンジンがガクガクと振動し、そのままストール。再始動も困難になったといいます。後続車が急ブレーキを踏み、大きな事故にはならなかったものの、一歩間違えれば追突事故につながっていた状況でした。

原因は、以前指摘されていた点火コイル周辺の絶縁劣化でした。時間の経過とともに劣化はさらに進行。わずかな湿気でも電気がリークする状態になっていたのです。結果として、雨水や湿気の影響を受けた瞬間、正常に点火できなくなり、複数気筒で失火。エンジン停止に至っていました。

点火系は、エンジンを動かすうえで非常に重要な部分です。特にイグニッションコイルは、バッテリー電圧を数万ボルト規模まで昇圧し、スパークプラグへ送る役割を持っています。そのため、わずかな絶縁低下でも高電圧が別の場所へ逃げやすくなり、一気に不調へ発展することがあります。

しかも厄介なのは、初期段階では「雨の日だけ」「湿度が高い日だけ」など、限定的な条件でしか症状が出ない点です。だからこそ、ドライバー側も「たまたまかな」と軽く考えやすいのです。

“再現しない不調”ほど注意が必要

整備の現場では、「今は症状が出ていない」というケースは珍しくありません。特に電装系や点火系のトラブルは、温度・湿度・振動など、特定条件でだけ発生することがあります。

そのため、整備士は症状そのものだけでなく、“どういう条件で起きたか”を非常に重視しています。

・雨の日だけ起きる
・朝だけ調子が悪い
・高速道路だけ振動する
・エアコン使用時だけ不安定になる

こうした情報は、故障原因を絞り込む重要なヒントになります。今回のケースでも、「雨の日だけ」という時点で、湿気によるリークや絶縁不良は十分疑われる状態でした。

しかし、症状が毎回出るわけではないため、緊急性を感じにくかったのでしょう。車の故障は、“常に悪い状態”とは限りません。むしろ初期段階ほど、特定条件でだけ異常が現れることがあります。そして、その段階で対処できれば、比較的小さな修理で済むケースも少なくありません。

「今日は普通だから大丈夫」

その判断が、ある日突然のエンジン停止につながることもあります。再現しない不調ほど、“まだ壊れていない”のではなく、“壊れ始めている途中”なのかもしれません。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り約8年間整備に従事し、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。 年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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