1. トップ
  2. 暮らし
  3. 日本では見かけない?W杯2026に“660台”も提供…韓国の巨大自動車メーカーの“知られざる正体”

日本では見かけない?W杯2026に“660台”も提供…韓国の巨大自動車メーカーの“知られざる正体”

  • 2026.6.6
undefined
出典元:PIXTA(画像はイメージです)

FIFAワールドカップ2026の開催を目前に控える中、大会運営を支えるため、韓国の自動車メーカーであるKiaが660台もの公式車両を提供することが話題となっています。日本では街中で見かける機会が少ないため馴染みが薄いかもしれませんが、実は世界で年間約313万台を販売するグローバルな巨大企業です。

なぜこれほどの世界的イベントを支えられるのかを探っていくと、日本市場への意外な接点や同社の先進的な戦略が見えてきます。

選手の活躍を裏側で支える移動の重要性

世界中が熱狂の渦に包まれるFIFAワールドカップでは、華やかなスタジアムの熱気や、選手たちの劇的なプレーが多くの人々の心を惹きつけます。その一方で、この巨大な祭典をスムーズに進行させるためには、ピッチの外側にある仕組みも同じくらい重要になります。特に、世界中から集まる大会関係者や運営スタッフ、そしてさまざまな機材を遅滞なく運ぶためのモビリティ、つまり移動の手段は、大会の成否を分ける重要な鍵と言えるのではないでしょうか。

2026年大会において、この移動の役割を大々的に担うことになったのが、公式車両の提供を発表した「Kia」です。同社が今大会の運営用に用意する車両は、なんと合計660台という驚きの規模にのぼります。これらは単なる広告や宣伝のための露出ではなく、広大な会場を飛び回るスタッフの足となり、大会の円滑な運営を文字通り足元からモビリティ面で支援するためのものです。

これほどの大規模なサポートを国際サッカー連盟から任され、世界中が注目する舞台の裏方を支えることができるKiaとは、一体どのような自動車メーカーなのでしょうか。その背景を探っていくと、日本の日常ではなかなか見えてこない、グローバルでの確かな実力が浮かび上がってきます。

日本では見かけない?巨大メーカーKiaの実力

先ほどの問いかけに対する答えを探るために、まずは同社の基本的な立ち位置を見てみましょう。Kiaは韓国を代表する自動車メーカーの一つであり、同じく韓国の大手である現代自動車グループの一員として世界中でビジネスを展開しています。

しかし、私たち日本のユーザーからすると、日常のドライブや通勤風景の中で同社のエンブレムを見かける機会はほとんどありません。日本の自動車市場は、トヨタやホンダ、日産といった歴史ある国産メーカーのブランド力が非常に強いため、海外ブランド、特に韓国の乗用車ブランドが一般に浸透しにくいという環境があるからです。そのため、名前は聞いたことがあっても、どのような車を作っているのかイメージが湧かないという方が多いのかもしれません。

ところが、日本を一歩離れて世界市場に目を向けてみると、その印象は大きく覆ります。同社が発表しているデータによると、2025年の世界販売台数は約313万台という極めて大きな規模に達しています。これは、グローバルな自動車業界において大手メーカーの一角を占めていることを証明する数字であり、日本で見かけないからといって決して小さなメーカーではないという意外な事実に気づかされます。これほどの実力を持つメーカーだからこそ、世界最高峰のイベントの公式車両を任されるわけですが、提供される車両の中身を見ると、その得意分野がさらに見えてきます。

大会運営にぴったりな車種ラインナップと得意分野

今回のワールドカップに向けて提供される660台の車両には、同社の強みが凝縮されています。具体的な車種名としては、Telluride(テルライド)やSportage(スポーテージ)、Sorento(ソレント)といった世界的に評価の高いSUVから、多人数乗車に最適なミニバンのCarnival(カーニバル)、さらにはセダンのK4やコンパクトなNiro(ニロ)にいたるまで、実に幅広いモデルが含まれています。

こうしたラインナップを見ても分かるように、同社は単一のジャンルに偏ることなく、多様なユーザーのニーズに応えられる技術と生産体制を持っています。特に、多くのスタッフや重い荷物を効率よく、確実に運ぶ必要があるワールドカップの現場においては、室内の広さと悪路走破性を兼ね備えたSUVや、実用性の高いミニバンが非常に重宝されるのではないでしょうか。また、近年世界的なトレンドとなっている電気自動車やハイブリッド車といった電動化モデルもしっかりと網羅されており、環境への配慮が求められる現代の国際大会にふさわしいモビリティ支援を実現していると言えそうです。

さらに面白い取り組みとして、同社は車両のハードウェアを提供するだけでなく、対象地域に向けて車内ディスプレイの表示デザインをFIFAワールドカップ2026のテーマに変更できるデジタルコンテンツの配信も行っています。単に車を移動手段として提供するだけでなく、乗る人のユーザー体験や大会全体のムードをデジタル面でも盛り上げようとする姿勢に、現代の自動車メーカーらしい工夫が感じられます。

このように世界中で愛されるモデルを展開する同社ですが、私たち日本のユーザーにとっては、まだどこか遠い海外のニュースに感じられるかもしれません。しかし、実は日本市場との距離も少しずつ縮まっています。

実は日本にも?次世代モビリティPBVで進む再接近

グローバル市場で躍進を続ける同社ですが、実は最近になって、日本市場に対してもこれまでとは異なる新しいアプローチで参入を始めています。日本の従来の乗用車市場は先述の通り非常に壁が厚いため、一般的なセダンやSUVをそのまま導入するのではなく、全く新しいモビリティの形を提案しているのです。

具体的には、日本の総合商社である双日株式会社がKiaと正規販売総代理店契約を締結し、その100%子会社としてKia PBV Japanを設立しました。Kiaが直接日本法人を立ち上げたわけではなく、日本市場に精通したビジネスパートナーとともに、PBVと呼ばれる次世代の電気自動車の展開へと舵を切った形です。

ここで使われているPBVとは、Platform Beyond Vehicle(プラットフォーム・ビヨンド・ビークル)の略称であり、従来の車の概念を超えた自由なプラットフォームを目指して開発された車両を指します。例えば、2026年5月には直営ディーラーの第1号店としてKia PBV 東京西がオープンし、日本国内向けの第1弾モデルとしてEVバンのKia PV5が導入されることになりました。このモデルには、ビジネスでの活用が期待される2人乗りの貨物バンであるPV5カーゴだけでなく、5人乗りの乗用バンであるPV5パッセンジャーもラインナップに含まれています。

こうした車種展開からも分かるように、同社が描く日本での展開は、決して法人のビジネスや物流の現場だけに留まるものではありません。広々とした室内空間や、野外でも便利に活用できる車載バッテリーの利便性を活かすことで、個人のお客様に向けた販売も広く想定されているようです。そのため、キャンピングカーへの架装を楽しんだり、日々の移動から週末の車中泊や旅行に出かけたりと、アクティブなライフスタイルを愛する人々のパートナーとしても注目を集めるかもしれません。

仕事の現場だけでなく、私たちのプライベートな趣味の時間をも豊かにしてくれる多様なモビリティを通じて、今後は日本の街中でも同社の車を目にする機会が徐々に増えていくのではないでしょうか。このように、日本市場での新たな挑戦も着実に始まっている中で、今回のワールドカップにおける大規模な車両提供は、同社にとってどのような意味を持っているのでしょうか。

W杯は実力を世界に示す巨大なショールーム

世界中が注目する巨大な祭典において、660台もの車両が世界中からのゲストやスタッフを乗せて走り回ります。この光景は、単なるブランドのロゴマークを広告看板に掲げること以上の、大きなプロモーション効果を同社にもたらすと考えられます。なぜなら、過酷な大会運営をトラブルなく支え続ける姿そのものが、世界規模のモビリティを支えられるメーカーとしての、確かな品質と信頼性に対する最高のアピールになるからです。

そういう意味では、ワールドカップという舞台は、同社にとって世界中の人々に自社の最新技術と実用性を体感してもらうための巨大なショールームのような場所と言えるのではないでしょうか。サッカーの試合そのものや、選手たちの華やかなプレーに熱中する一方で、その移動を陰で支えているモビリティの存在に目を向けてみると、国際的な自動車業界のダイナミックな勢力図が見えてきて面白いかもしれません。

日本ではまだ馴染みが薄い存在ですが、世界におけるその圧倒的な存在感と、多様なライフスタイルに寄り添う合理的な戦略で日本へ再接近する現在の姿を知ることで、これまでのイメージが少し変わったという方もいるのではないでしょうか。今後、街中やアウトドアのスポットで新世代のバンを見かけた際には、それがワールドカップを支えた巨大メーカーの車かもしれないと、少しワクワクしながら注目してみてはいかがでしょうか。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる