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「まだ止まれているから大丈夫」ブレーキパッド交換を後回しにしたオーナーを襲った“痛い代償”

  • 2026.4.21
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

みなさま、こんにちは。元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「まだ止まれているから大丈夫」

ブレーキパッドの交換を後回しにする理由として、よく聞く言葉です。確かにブレーキは、ある日突然効かなくなるわけではありません。徐々に性能が落ちていくため、違和感に気づきにくい部品でもあります。

しかし整備の現場では、この「まだ大丈夫」という判断が、結果的に修理費を大きく膨らませる原因になるケースを何度も見てきました。今回は、ブレーキの摩耗がどのように進行し、どのタイミングで何が起きるのか。そして「どの音がどんな危険サインなのか」まで含めて解説します。

パッド交換だけで済んだはずが高額修理になるまでの流れ

ある国産車で、ブレーキ点検を行った際、パッド残量はかなり少ない状態でした。この段階であれば、パッド交換のみで対応でき、費用も比較的抑えられます。

しかし「もう少し使いたい」というユーザーの意向で、そのまま走行を継続。しばらくして、運転中に「キーキー」という高い音が出始めました。これはウェアインジケーターと呼ばれる機構が作動しているサインです。パッドの残量が限界に近づいたことを知らせる“交換時期の警告音”です。この時点で交換していれば、まだパッド交換だけで済むケースがほとんどです。しかし、そのままさらに使用を続けると状況は悪化します。

やがて「ゴリゴリ」「ガリガリ」といった低く重い音に変わります。これはパッドの摩擦材が完全に摩耗し、内部の金属部分が露出している状態。つまり、ブレーキローターと金属同士が直接接触している状態です。この状態になると、ローター表面に深い傷が入り、再使用が難しくなります。

結果として、

・パッド交換
・ローター交換

が必要となり、費用は当初の倍以上に膨らみます。

「音」で分かる危険度の違いとその意味

ブレーキから出る音には、それぞれ明確な意味があります。

まず「キーキー」という高音。これは、一般的な国産車などに多い機械式のウェアインジケーターがローターに接触して出る音で、「交換してください」という予告サインです。安全上すぐに止まれなくなるわけではありませんが、放置すべきではない段階です。

次に注意すべきなのが「ゴリゴリ」「ガリガリ」という音。これは非常に危険な状態です。摩擦材がなくなり、金属同士が直接接触しているため、ブレーキ性能も低下し、同時にローターを削り続けています。この状態での走行は、制動力低下だけでなく、修理費の増大にも直結します。

つまり、
・キーキー音→交換のタイミング
・ゴリゴリ音→すでに損傷進行中

という明確な違いがあります。ここで重要なのは、「音が出た時点で正常ではない」ということです。特に後者の状態は、“すでに遅い”といえる段階です。

余計な出費を防ぐための判断基準

では、どうすればこのような事態を防げるのでしょうか。ポイントは、「音が出る前に交換する」という意識です。具体的には、ブレーキパッドの残量を定期的に確認し、3mm前後になった時点で交換を検討するのが一般的な目安です。また、「音が出てから考える」という判断も危険です。特にゴリゴリ音まで進んでしまうと、すでに追加修理が前提になります。

もう一つ大切なのは、「止まれるかどうか」ではなく、「部品として正常かどうか」で判断することです。ブレーキは安全装置であると同時に、消耗品でもあります。パッドを適切なタイミングで交換することで、ローターを長持ちさせ、結果的にトータルコストを抑えることができます。整備の現場でよくあるのは、「もう少し使えたはずなのに、結果的に高くついた」というケースです。

数千円〜数万円で済む交換を先延ばしにするか、それとも余計な出費を防ぐか。その分かれ道は、「音が出る前に交換するかどうか」にあります。ブレーキは“効けばいい”ではなく、“正常な状態を保つ”ことも重要です。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り約8年、メーカーで現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。 年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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