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実は「塗れば同じ、ただの黒」は大きな誤解…愛車をゴツゴツに変える、三菱自動車でも話題の「ラプター塗装」

  • 2026.4.19
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画像:ライター撮影

最近、街中やキャンプ場などで、SUVやカスタム車のザラザラとした黒い塗装を見かける機会が増えていませんか。あの独特な質感を持つ塗装の正体はラプターと呼ばれる特殊塗装で、単なる艶消し黒とは異なる魅力を持っています。東京オートサロン2026の展示車にも採用されるなど、今やカスタムの定番になりつつある存在です。

本記事では、このラプター塗装の正体とその特徴について、詳しく解説します。

車の“肌感”を変えるカスタマイズ

愛車の印象をガラリと変えたい時、皆様はどのような手法を思い浮かべるでしょうか。タイヤやホイールの変更などさまざまな選択肢がありますが、近年アウトドア系の車に乗る方々の間で、一味違うアプローチがじわじわと注目を集めています。

それが、車の肌感そのものを変えてしまうという手法です。

これまで車のボディやパーツといえば、景色が反射するほど滑らかであること、あるいは光沢を抑えた艶消しであることが一般的でした。しかし近年は、あえて表面をゴツゴツとした質感に仕上げるスタイルが、カスタムの選択肢として広がりを見せているようです。

本記事では、3回連載の第1回として、この広がりを見せるカスタムの中心にあるラプター塗装とは一体何なのか、その正体について分かりやすく紐解いていきます。

ラプター塗装とは何か

まずは、ラプター塗装とは具体的にどのようなものなのかを見ていきましょう。

この塗装の最大の特徴は、その見た目の通り、ざらっとした立体感のある独特の質感にあります。近くで見ると表面に細かな凹凸があり、触れると少しゴツゴツとした感触が伝わってきて、車全体にタフで頼もしい印象を与えてくれます。

しかし、この塗装は見た目をワイルドにするためだけに開発されたわけではないようです。もともとはイギリスで生まれた高耐久のウレタンコーティング剤であり、トラックの荷台や船体など、日常的に激しい摩擦や衝撃が起きる過酷な環境から守るために使われてきたという歴史があります。

つまり、ワイルドな雰囲気を演出するデザイン性と、大切な機材を傷や錆から守る実用的な保護機能を兼ね備えているからこそ、厚い支持を得ていると考えられます。

普通の塗装や艶消し黒と何が違うのか

実用的な保護機能という確かな裏付けがあるラプターですが、私たちが普段からよく知る一般的な塗装や、いわゆる艶消し黒とは、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

一般的な乗用車のボディ塗装は、均一で滑らかな美しさを追求して塗られています。景色が鏡のように反射する美しい光沢は、多くの方がイメージする綺麗な車の姿だと言えます。一方で、光の反射を抑えたマットブラックと呼ばれる艶消しの塗装もありますが、これはあくまで光沢をなくした色味の表現に留まります。

それらに対してラプターは、塗料に含まれる樹脂成分の特性により、塗膜そのものに圧倒的な厚みを持たせられる点に大きな違いがあります。一般的な自動車塗装の数倍から、施工によっては十数倍の膜厚を形成することが可能であり、この厚みが強固な物理的バリアとなります。また、主成分であるポリウレタン樹脂が持つ高い弾力性と硬度のバランスにより、外部からの衝撃を柔軟に吸収しつつ、表面の傷を防ぐ優れた耐摩耗性を発揮すると言われています。

このように、ただ艶を消しただけのマットブラックでは決して生み出すことのできない、本物の道具としての無骨さと、科学的な裏付けのある防護性能が宿っていることが、この塗装の大きな魅力になっているのです。

また、街中で見かけるのは黒が多いため、ラプター塗装といえば黒色の塗料というイメージを持たれがちですが、実はカラーの自由度が高い点も見逃せません。基本となる黒や白に加えて、適合するお好みの自動車用塗料を混ぜて自由に調色できる色替えタイプもラインナップされています。この機能により、純正のボディカラーに合わせて同色に塗装したり、独自の色を作って塗り分けたりといった、車体に合わせた柔軟なカラーコーディネートが可能になります。

なぜ今、ラプター塗装が注目されているのか

確かな機能とカラーの柔軟性を持つラプターですが、なぜ最近になって目にする機会が増えたのでしょうか。その背景には、一部のカスタム愛好家だけでなく、自動車メーカーの展示表現にも取り入れられるようになったことが関係していると考えられます。

その象徴的な出来事と言えるのが、大きな話題を呼んだ東京オートサロン2026での三菱自動車の展示です。この会場において、デリカD:5 ULTIMATE GEARや、デリカミニ ULTIMATE GEARといった魅力的な展示車が披露されました。

デリカD:5にはオフロード環境での走行に適した、ザラザラとして傷が目立ちづらいラプター塗装が車両全体に施されていました。過酷な道を力強く進む車のキャラクターを表現するために、この塗装が選ばれたことがうかがえます。

このように、メーカーが公式の場で提案するワイルドな表現手法の一つとして用いられたことで、ユーザー層にもその存在が徐々に認知されるようになったと言えるのではないでしょうか。最近よく見かけると感じるのは、実際にこうしたトレンドが広がっているからかもしれません。

実は「塗れば同じ」ではない

そのようなトレンドの中で存在感が高まっているラプターですが、展示車のワイルドな姿を見ると、この塗料を使いさえすれば自動的にあのような決まったゴツゴツ感に仕上がるのだと想像されるかもしれません。

実はこの製品、手軽に扱えるという親しみやすい一面も持っています。専用の機材がなくてもハケやローラーを使って塗ることができ、さらに手軽なDIY用のスプレー缶も販売されているため、一般の方でも休日にDIYで塗装を楽しめるという、施工性の高さも大きな魅力です。

しかしその一方で、展示車のような独特のザラザラとした質感を車のキャラクターに合わせて美しく表現するためには、やはり確かな技術が必要になります。同じラプターの塗料を使用した場合でも、専用のスプレーガンの設定や対象物との距離、空気圧などを緻密に調整しなければならず、職人の経験と感覚が仕上がりを大きく左右します。

そして、その高い技術があるからこそ、表面の粒感を自在にコントロールすることが可能になります。たとえば、飛び石が当たりやすいバンパーなどの足回りには粗く吹き付けてより力強い印象を持たせ、一方でフロントグリル周りのような細かいパーツには細かく吹き付けて少し上品な質感を演出する、といった細やかなアレンジが行われます。

つまり、DIYでも手軽に塗ることができる楽しさがある一方で、部位ごとに粒感を緻密にコントロールして美しく仕上げるには職人の確かな技術が必要になるという、非常に奥深い塗装なのです。塗る手法によって完成後の姿が異なるという点も、こだわりを持つ方の興味を惹くポイントになっていると考えられます。

単なる流行ではないラプター塗装の魅力

ここまで見てきたように、ラプターは単なる流行りのザラザラとした見た目だけの塗装ではありませんでした。

過酷な環境から車を守るという確かな保護性能の歴史を持ち、ウレタン樹脂の特性を活かした強固な膜厚によって、車のキャラクターを一段と引き上げてくれる特殊塗装であることがお分かりいただけたかと思います。デザイン性と機能性を高次元で両立しているからこそ、メーカーの展示車に採用されるのも納得の奥深さがあります。

しかし、手軽なDIYから職人の技術による仕上げまで、施工の方法によって表情が大きく変わるということは、実際に自分の愛車に取り入れる際には、メリットだけでなく気をつけておきたい点も出てくるかもしれません。

そこで次回の連載第2回では、実際にラプター塗装を愛車に施す際の具体的なメリットや注意点について掘り下げていきます。さらには、どのような車に向いていて、逆にどのような車だとバランスが難しくなるのかについても、詳しく整理してお伝えしていきます。ぜひ次回もご期待ください。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


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