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【若葉竜也さんインタビュー】「僕はやっぱり、人が好きです。面倒くさいですけど(笑)」

  • 2026.3.18

1978年、パンクに影響を受けたロックバンドが結集。‟東京ロッカーズ”と呼ばれ、日本のロック界に革命を起こす――。カメラマンとして彼らの‟熱”を記録した地引雄一による原作を、80年代にパンク・バンドのボーカルだった田口トモロヲさんが監督を、パンクコントバンド「グループ魂」でギターを担当する宮藤官九郎さんが脚本を務め映画化した『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』。この映画に若葉竜也さんが出演しています。映画のこと、演技についての思い、若葉さんに聞きました。

台本丸々1冊を、2時間ほどで覚えられました

1978年、セックス・ピストルズに衝撃を受けたカメラマンのユーイチ(峯田和伸)は、ミニコミ誌「ロッキンドール」で東京のアンダーグラウンドなロックシーンを知る。そうして訪れた渋谷のライブハウスで、「TOKAGE」のボーカル、モモ(若葉竜也)と出会う――。映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』のオファーを受けた若葉さんは、「あの『アイデン&ティティ』のスタッフと映画作りができる!」と心が躍ったそう。
 
「やっとだ。という感じで。フリクション、ザ・スターリン、じゃがたらなどのバンドは知っていましたが、‟東京ロッカーズ”のことはあまりわかっていませんでした。その頃ちょうど阪本順治監督の作品を撮影していたのですが、阪本さんも実は当時、あるバンドの裏方だったそうで、『最高の1枚をやるから』とじゃがたらのアルバムをいただいたりして。監督のトモロヲさんといい、‟目撃者”の温度ある証言を聞くことができたんです」
 
自分のなかに溜まっていた不自由さのようなものを吐き出したい。そんな時期だったという若葉さん。台本は「自分が書き殴ったんじゃないか?」と思うくらい、自分の思いが言語化されていると感じたそう。
 
「台本はいつも数日かけて丸々1冊を覚え、そのあと台本に触れない期間を作り、現場で思い出す。そんなサイクルですが、これは2時間ほどで覚えられました。しかもそこから、台本を開くことはありませんでした。それくらい、モモの言葉に違和感がなかった。そのうえで、それを映画に焼き付けられたことが大きかったです」

ファイティングポーズをしっかり取れるものに、真剣に向き合っているか?

映画が始まってすぐ、ユーイチがライブハウスで初めてモモのボーカルを目の当たりにするシーンがあります。それはこうしたシーンによくある聴衆を圧倒する声、とは違い、バンドの一部としてサウンドに溶け込み、歌詞に込めたメッセージを内向きに咀嚼しながら観客に切実な思いを伝えようとする、そんな歌声。実は今作では、ライブ・シーンはオリジナルの音源を使っているとか。つまりそれは「TOKAGE」のモデルであるリザードのボーカル、モモヨさんのもの。違和感のなさに驚かされます。
 
「役者がとても能動的に動く現場で。バンドメンバーとごはんを食べていて、僕が『練習したいんだよなあ』と言うと、メンバーのひとりがその場で電話してスタジオをとって。(出演者のひとりである)吉岡(里穂)さんにも連絡し、『明日どう?』みたいな感じで。また曲も、聴き込んで聴き込んでいきました。どんなことを考えながら歌っていたんだろう? モモヨさんが伝えたいことに触れにいく、無理かもしれないけど、という感じで」
 
演奏を練習しても、それが劇中で使われることはありません。でも「演奏のクオリティが低いとほかのなにをしても説得力がない」と、たくさん練習したそう。劇中のモモも、やりたい音楽に妥協はしません。一方で、レコード店を営む実家暮らしで、“かーちゃん”の前ではただの甲斐性なしのかわいい息子だったりします。出がけに母親から、「今日は夕飯食べないの? アジフライだよ!」「…じゃあ食べますっ」なんて言う。ごく自然に、役柄の多面性が生まれています。
 
「確かにこれは映画で、台本はあるのですが、‟こんなシーンになる予定じゃなかった”ということがたくさん起きました。トモロヲ監督がプレイヤーだから役者の気持ちをわかっていただけて、気持ちを保ちやすかったのはもちろんです。そのうえで役者たちの映画にかける思いが化学反応を起こし、奇跡みたいな瞬間がたくさん生まれたのだと思います。走り抜けたというか、全力疾走というか」
 
映画は田口トモロヲ監督の‟プロフェッショナル”的な声で、その背景が語られるところからスタートします。ユーイチは「東京ロッカーズ」という新しいムーブメントに立ち会い、その熱を浴び、わけのわからない勢いと高揚感に触れます。そして、そこに飲み込まれて落ちていく人、突然現れて駆け上がる人と出会う――。当時の映像を交えながら、青春映画として駆け抜けます。
 
「こういう音だから、パンクっぽい格好をしているからパンクではなくて、やりたいこと、やりたい表現をやる。そこにふわっとした才能や縁、タイミングという抽象的な言葉はいりません。あなたたちの衝動でやりたいこと、そこで戦う覚悟はあるのか? 自分が作りたいもの、ファイティングポーズをしっかり取れるものに真剣に向き合っているか? です。その精神は、映画をやっている僕にもわかります。だからこれは懐古的なものではなく、2026年のいまをしっかりと描き出した映画です。観れば必ず、なにかが動き出すと思うんですよね」

現代にも通じる、パンクの‟DIY精神”

インディーズ、自主レーべル、オール・スタンディング、ロック・フェス・スタイル……これらは「東京ロッカーズ」を中心としたムーブメントから生まれました。やりたいことをやりたいように、自分の手で実現する。そんな‟DIY精神”は、「テレビに出なくても‟自分の城”はつくれる時代」であるいまでこそ、実感できそうです。そんなモモを演じた若葉さん自身は、昨年『アンメット‐ある脳外科医の日記‐』の三瓶先生役でお茶の間にその存在を強く知らしめます。「悲しいことを悲しいように演じるのではなく、感情を隠すほうが悲しく見える瞬間がある」、そんな思いを体現したかのような演技が注目されました。
 
「これまで映画でやってきたことが、ふだんあまり映画に触れない人たちに新鮮だったのかもしれません。この映画も、あの頃こういう音楽があった!ということが、いまの人たちに新鮮だろうと思います。新しいとか古いではないんです。それを、生き証人である田口トモロヲ監督が撮ったことが大切で」
 
淡々とした言葉に、自然と熱がこもります。完成した映画を観た感想について尋ねると……。
 
「最高でした。まだ客観的に観られているかわかりませんが、これは世に伝えなくちゃいけない、 という使命感が生まれました。自分のフィルモグラフィーのなかでも、大きな分岐点になると思います。『葛城事件』(2016年公開)に始まり、それを超えようと闘って。『街の上で』(2021年公開)があって、「アンメット」の三瓶があって。いろいろなイメージがつきまとうなか、次はたぶん、これを超えなきゃいけなくなってくるだろうなと」
 
「いまや、次になにをやる?というのが注目される存在ですよね?」と尋ねると、「あいつどうなってんの?と思ったあたりでいきなり世に出てきたりするからじゃないっすか?」と笑います。それでいて、「僕は全員の期待を裏切りたい。そっちか!と思わせるのもエンタメのひとつ」と続けます。
 
「本当は自分の表現でいいはずなんですよ。思ったことを自由に話せばいいのに、どこかで常識みたいなものが生まれ、歪んでしまう。劇中でモモが、『売れているものが良いわけじゃない』と言いますが、いまはそうしたことを言うのは恥ずかしいとかガキくさいと思われる時代で。でもいいじゃん。やることしっかりやってりゃ多少青臭くても。と思ってますね」

36歳、すべてにシンプルです

映画でもドラマでも舞台でも、若葉さんが登場すると、軽いタッチのものも、重厚感のある作品も、その格が一段階上がるよう。一瞬でその作品に風穴を空け、観る者を鷲掴みにして離しません。そんな俳優としての腕っぷしの強さはかなりのもの。なぜそんなことが可能に? 役を構築する道筋が決まっているのでしょうか。
 
「いやいやいや、全然そんなことはなくて。例えば『神は見返りを求める』という映画では、現場に入ってからもず~っと台本を見てセリフを覚えていました。普通は頭で咀嚼して言葉を選んでしゃべりますから、セリフを口に出すときにちゃんと思考が入ります。でもあの役は中身もなにもない空っぽの人。頭を使わなくても言葉が出てくるようにしないと、彼の空っぽさは滲んでこないだろうなと。要は個人的に大嫌いな、ただセリフを覚えてただ言っている俳優をやったというか(笑)。それに対してモモの場合は、圧倒的に思考を入れて、モモという人物を彼自身が演じている、そんな感覚でした。やり方は役によって千差万別で、ものすごく試行錯誤しています」
 
それでいて、「日常でやってきたことしか(表現として)出ない」とも。
 
「背伸びしても、映画館のスクリーンに映し出されたらすべてがあぶり出されてしまう。人の言葉を聞いたり、それを受けて自分もしゃべってみたり、誰かとなにかを共有したり。そうしたなかにヒントや種は散らばっています。僕はやっぱり、人が好きです。面倒くさいですけど(笑)」
 
考え抜いて構築したはずの、切れ味鋭い演技をし続ける若葉さん。自宅に植物の部屋があるというので、オフのときは植物の世界へ逃げ込むように過ごすのかも?と勝手な想像をしました。
 
「それは単純に、植物に合わせた温度で生活できないから専用の部屋を作っただけです。なんか僕、深読みされるタイプなんですけど(笑)、そんなに深い意味はなかったりします」
 
育てているのは「アガベ」などの多肉植物。「格好いいから」という理由で育て始めたそう。格好いい!と思うものに触れ、人との関りのなかに生き、演じることと真摯にまっすぐ向き合う。36歳のいまは、「すべてにシンプルです」と若葉さん。余計なことに悩んだりはしない。悩むのは、「仕事をするということ」についてだけ。
 
「役者って、アマチュアでいい。プロの役者と言えるところは、監督が演出のなかで言語化できなかったところをキャッチする能力かなと。監督の言いたいことを感覚的に体温でキャッチし、監督が思い描く以上のものを演技として提出したい。それだけです」
 
そうした‟アマチュア”の姿勢をキープするのは、年齢を重ね、キャリアを積むとどんどん難しくなるようにも思えます。
 
「僕は現場以外緊張とかないんですよ。誰と話してもどんな状況でもどんなこと起きても、全然なんとも思いません。ただ、撮影現場ではものすごく緊張します。映画の現場だけは恐怖なんです。たくさんの人に見られるなか、緊張しないほうがおかしい。安心したら、過信ですーー 。現場で役者は不安じゃなきゃダメだと思っているんですよね」

PROFILE
若葉竜也(わかば・りゅうや)
1989年生まれ、東京都出身。2016年映画『葛城事件』で注目を集め、2021年今泉力哉監督の『街の上で』で映画初主演。最近の主な出演作に、ドラマ『おちょやん』『群青領域』『アンメット ある脳外科医の日記』など、映画『生きちゃった』『AWAKE』『あの頃。』『くれなずめ』『神は見返りを求める』『前科者』『窓辺にて』『愛にイナズマ』『市子』『ペナルティループ』『ぼくのお日さま』『嗤う蟲』『てっぺんの向こうにあなたがいる』など。

[映画]
『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』
1978年に巻き起こった、日本で初めてのパンク・ロック・ムーブメント「東京ロッカーズ」。インディーズというスタイルを生み出し、ライブにオールスタンディングを導入し、数多くのバンドが集うロック・フェスを開催。いまや当たり前となったカルチャーの原点を築き、日本の音楽シーンに多大な影響を与えた若者の姿を描く。原作は彼らのカメラマン兼マネージャーだった写真家・地引雄一の自伝的エッセイ「ストリート・キングダム」。田口トモロヲ監督と脚本家・宮藤官九郎が、『アイデン&ティティ』(2003年公開)以来、再びタッグを組んで手がけた作品。
●監督:田口トモロヲ
●原作:地引雄一「ストリート・キングダム」
●脚本:宮藤官九郎
●出演:峯田和伸 若葉竜也 吉岡里帆 仲野太賀 間宮祥太朗 中島セナ 神野三鈴 森岡龍 山岸門人 マギー 米村亮太朗 松浦祐也 渡辺大知 大森南朋 中村獅童
●配給:ハピネットファントム・スタジオ
●3月27日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

©2026映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』製作委員会 

撮影/本多晃子 スタイリスト/タケダトシオ[MILD] ヘアメイク/FUJIU JIMI 取材・文/浅見祥子

この記事を書いた人

大人のおしゃれ手帖編集部

大人のおしゃれ手帖編集部

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