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33歳、独身、彼氏なし。思い描いた未来が少しずつ遠ざかる日々。人生を見つめ直す中で揺れる心情を丁寧に描いた等身大の物語【書評】

  • 2026.3.17

【漫画】本編を読む

『33歳という日々 独身彼なし、このみの場合』(鈴木みろ/KADOKAWA)は、ひとりの女性の日常を通して、揺れ動く心の内を丁寧に追った作品である。

ネイルサロンで雇われ店長として働く33歳のこのみは、結婚願望はあるものの、彼氏はもう5年ほどいない。仕事に大きな不満があるわけではないが、忙しさの合間や夜ひとりになったとき、ふいに孤独が顔を出す。「いつかは結婚してお母さんになる」という、子どもの頃から当たり前のように思い描いていた未来が、気づけば指の間からこぼれ落ちそうになっている。

年齢を重ねるにつれ、周囲の何気ない言葉や視線にも敏感になりながら、彼女は自分のこれからを静かに見つめ続ける。本作は、そんなこのみの心の機微を、日々の細かな場面を通して自然に映し出している。

本作の魅力は、「独身のつらさ」を強く打ち出すのではなく、この年齢だからこそ感じる小さな心の空白や迷いを、等身大の言葉で描いている点にある。結婚や恋愛といった大きなテーマの裏側には、歳を重ねることで少しずつ変わっていく人との距離や、友人たちの人生が先に進んでいくことへの寂しさなど、複雑な感情が折り重なっている。人数合わせのように招かれた結婚式、合コンで年齢を答えた瞬間の微妙な空気……。どれも特別な出来事ではないが、だからこそ胸に静かに刺さる場面ばかりだ。

「ほっといてほしいけれど、誰かに手を差し伸べてほしい」というこのみの矛盾した感情は、大人になれば誰もがどこかで抱えるものではないだろうか。本作は、その言葉にしづらい心の動きを描ききっている。

恋愛や結婚の有無に関わらず、「誰かに必要とされたい」「自分も誰かを大切にしたい」という思いは、多くの人が胸のどこかに秘めているものだ。33歳という数字はひとつの通過点に過ぎないが、このみの日常を追う時間は、私たち自身の人生を愛おしむきっかけを与えてくれるはずだ。

文=坪谷佳保

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