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【参加費1万6000円で水だけ?】意外と過酷な「代理婚活交流会」の現実…30代独身の息子を持つ親が困惑した「お相手」親子の関係性

  • 2026.4.6

【参加費1万6000円で水だけ?】意外と過酷な「代理婚活交流会」の現実…30代独身の息子を持つ親が困惑した「お相手」親子の関係性

「ちゃんと育てたはずなのに、いい年したウチの子がなぜ結婚できないの?」——そう悩む親たちが、いま子どもに代わって出会いの場を探す「代理婚活」に動いています。30代の独身息子2人を持つ母親でジャーナリストの石川結貴さんが、自ら「代理婚活交流会」に参加して見えた現実とは? 話題の新刊『ウチの子の、結婚相手が見つからない!』から抜粋してお届けします。第2回は、代理婚活交流会で話が盛り上がった相手から、まさかの言葉が……!

代理婚活交流会が「まさかの水だけ?」の理由

後半の交流時間は残り5分、私は喉がカラカラだった。会場隅のカウンターへ向かい、整然と並べられたグラスにピッチャーから冷水を注ぐ。この会場に足を踏み入れたとき、1万6000円の参加費を支払いながら軽食の用意もなく、「まさか水だけ?」と驚いたが、今になって理由のひとつに思い当たった。あの親この親と矢継ぎ早に交渉し、気持ちが上がったり下がったりで、何かを口にする余裕などまったくない。これが代理婚活というものか、そう疲れた息を吐き出すばかりだ。

自席に戻ってようやく喉を潤し、受け取った女性の身上書の枚数を数える。自分が相手方に渡した身上書の枚数と受け取った枚数が合致するかどうか、きちんと確認するよう主催業者から伝えられていた。

4枚渡し、4枚受け取っている。その数が多いのか少ないのか見当もつかないが、よくよく考えれば大事なのはここからだ。女性の身上書を息子に見せ、気に入るか否かを確認し、仮に「会ってもいい」となったらあらためて相手の親と交渉しなければならない。相手側から断られたら身上書を返送し、同意されたら見合いの日程調整やらなんやらとまた交渉だ。

そもそも何の交渉もなく、双方がすぐに相手の身上書を返送することも十分あり得る。子どもが「お相手」候補を気に入らなければそれまでの話。わざわざ「お断り」の連絡をしなくても、時間を置かず相手側の身上書を送り返せば、それが意思表示になるわけだ。ちなみに身上書を返送する際には、〈貴重な機会を頂戴しながら申し訳ありません〉などと、詫び状を添えるよう主催業者の注意があった。

あらためて交渉する、見合いを打診する、失礼のないよう丁重にお断りする、身上書を返送する、いずれにせよ親がすべてを担うわけで、そう考えると今の疲労感など序の口かもしれない。

──間もなく女性側のアプローチタイムは終了です。交流が終わった親御様は、順次お席にお戻りください。──

主催業者のアナウンスが流れる。会場内に散らばっていた娘を持つ親たちがすべて着席すると、再び代表者が舞台上でマイクを握った。

「皆様、交流はいかがだったでしょうか。親御様同士、なごやかにお話しされたでしょうか。たくさん身上書を交換された方、思うように交換できなかった方、いろいろな親御様がいらっしゃるかと思いますが、ここからフリータイムのお時間となります。どなた様もご自由にお席を移動されて構いません。先ほどのお相手ともっとお話ししたい方、あらためて別の親御様と交流されたい方は、どうぞこの時間をお使いください。身上書を交換後の進め方など、ご質問がある方はお近くのスタッフまでお声がけください。フリータイムは30分、終了は午後2時40分です」

一気に言うと、代表者は表情と声のトーンを緩めた。

「そうは言っても皆様、お疲れではないですか。私もこの交流会に長く携わっておりますが、短い時間内で初対面の方とお話しするのは、やはり神経を使われると思います。会場隅のカウンターにコーヒーをご用意しましたので、ご自分のお席でしばし休憩を取っていただいても結構です」

休憩という言葉が効いたのか、あらためて交流をはじめた親は半数ほどだった。残りの半数は順次コーヒーを受け取り、自席に着いて思い思いに過ごしている。同じ円卓を囲む親同士が、ここにきてようやくホッとしたように歓談する姿もあった。

私もコーヒー目当てに立ち上がろうとした矢先、先ほどの父親がやってきた。子ども同士が小学生時代をすぐ近くで過ごしたことで、すっかり意気投合した父親だ。見合いは既定路線、結婚まで視野に入れて舞い上がったから、より具体的に、たとえば見合いの日程でも提案してくるのかと想像が膨らんだ。

父親はにこやかに笑うと、顔を近づけておもむろに切り出す。

「先ほどはありがとうございました。ちょっとお話しできなかったことがありまして。今、追加でいいですか」

親同士の話が盛り上がっていたとき、別の母親から声がかかって中断、入れ替わった経緯がある。「追加」というのはやっぱり見合いの件か、そう私は昂った。

「実は今日がはじめての参加じゃなくて、これまでいろんな交流会に行ったんです。そこで身上書を交換した親御さんたちから、ウチの娘は『ぜひ』って熱望されましてね」

父親からは予想と違う話が振られたが、どうやら娘は「引く手あまた」と言いたげだ。

「ステキな娘さんですから、たくさんお声もかかるんでしょうね」

当たり障りなく持ち上げてはみたものの、一転して気持ちはざわつく。

「まぁそれほどでもないですけど、この前『ぜひ』ってお願いされたお父さんは、○○って会社の社長さんだったんです」

その相手から誘われ、都内の有名店で食事をしたという。高価な懐石料理をごちそうになり、息子との見合いを懇願された。娘に話すと渋々ながら了承し、当人同士も有名店で見合いをした、そんな話に目を細めてつづける。

「なにしろ相手のお父さんは立派な方だし、息子さんもエリートで、条件としては言うことないじゃないですか。お見合いのあと、相手の方はわざわざ娘の住むI市まで会いに行ってくれたりして、2人は何度かデートしてるんです」

いったい何が言いたいのだろう。立派な父親に懇願され、エリート男性が遠方に出向くほどの娘だから、おまえのところなんてお呼びじゃないという意味か。それとも我が家も同様に、有名店で見合いを組めと言いたいのか。

返す言葉が見つからないまま、私はあいまいな笑いを作った。父親はいっそう顔を近づけると、こちらの反応を意識するかような上目遣いをした。

「あちらはずいぶん期待してたみたいですけど、娘のほうは乗り気になれないからって、結局お断りしたんです。それでね、ウチの娘はデートのとき、相手にキスもさせてませんから」

一瞬、吹き出しそうになった。困惑も度が過ぎると違うベクトルになる、そんな感じだ。

30代半ばの娘とその父親が、「キス」を話題にするってあり得るのか。そうまで親密な親子関係ならば、身上書に貼付された女性の顔写真が、父親言うところの「仏頂面」なのはどうしてか。こちらが聞いてもいないのに、わざわざ過去の男性を引き合いに出す意図はなんなのか。そんな思いが渦巻いて、私の気持ちは次第に尖った。

「過去にどんな方と何があった、そういうお話はウチとは関係ないかと思いますけど」

冷静でいようとしても、口調が苛立つのを抑えられない。

「もちろんそうですよ。ただ、ウチの娘はそれくらい自分を大切にする、相手の家柄やお金なんかに目がくらまないってことです。お宅の息子さんとは会いたいって言うに決まってますし、それこそいろんな話題があるから楽しみですけどね」

こちらの苛立ちを受け流した父親が、娘のアピールをしたかったことはわかった。「ぜひ」と熱望されてきた我が子の価値と真面目な人柄を表すために、過去を引き合いに出したと言いたいのだろう。

それでも私は感情の収拾が追いつかない。期待が大きかったぶん落胆も深く、先行きが明るいと舞い上がっていた自分が滑稽だ。

「まぁひとつ、そのあたりも含めて、息子さんによろしくお伝えください」

父親は動じる気配もなく、愛想笑いを浮かべた。かろうじて「はい」と取り繕ったが、本音では今この場で身上書の交換を取り消したかった。

※この記事は『ウチの子の、結婚相手が見つからない! 親の代理婚活でわかった「結婚の壁」』石川結貴著(文藝春秋刊)の内容を、ウェブ記事用に再編集したものです。

※写真はイメージです

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