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女性が男性よりも「痛みを長く感じる」理由が判明

  • 2026.3.3
女性で痛みが長引く理由が判明 / Credit:Canva

事故や手術の後、回復の過程は人によって異なります。

同様に、多くの研究で、女性は男性よりも長く痛みが続くことが知られてきました。

これは単に感じ方の違いなのでしょうか。

この疑問に対し、米国のミシガン州立大学(MSU)の研究チームは、痛みの持続に関わる免疫細胞の働きに男女差があることを示しました。

ポイントは、免疫細胞の一種である単球(血液中を流れる白血球の一種)が放つ「痛みを鎮める合図」の出方が、性ホルモンの影響で変わり得るという点です。

研究の詳細は。2026年2月20日付で『Science Immunology』に掲載されました。

目次

  • 雌マウスの痛みが長く続くの理由が判明
  • 「痛みを止める合図」を送ることに男性ホルモンが関わっている

雌マウスの痛みが長く続くの理由が判明

慢性疼痛(chronic pain)とは、ケガや病気などのきっかけが落ち着いた後も長く続き、日常生活に支障を来す痛みを指します。

一般に「3か月以上続く痛み」が一つの目安とされ、つらさが長期化するほど生活の質を大きく損ないます。

そして多くの慢性疼痛の病態で、女性の比率が高いことが知られてきました。

では、なぜ女性の痛みは長引きやすいのでしょうか。

従来は「女性のほうが痛みに敏感なのでは」「炎症が強いのでは」といった見方もありました。

しかし研究チームは、痛みの強さそのものよりも「痛みを終わらせる仕組み」がどれだけ働くかに差があるのではないかと考えました。

研究チームはまず、マウスの足裏に炎症を起こす物質を注射し、機械刺激に対する反応で痛みの経過を追いました。

すると、炎症直後の強い痛みは雌雄ともに生じ、腫れの程度にも目立った性差は見られませんでした。

ところが約1週間後から、回復のスピードに差が現れます。

オスは痛みが和らぎ始める一方で、メスは痛みがより長く続いたのです。

そこで研究チームは、炎症部位に集まる免疫細胞を詳しく調べました。

細胞の種類や状態を一度に細かく見分けられる解析を用いたところ、抗炎症性の分子インターロイキン10(IL-10)を作る細胞がオスで多いことが分かりました。

さらに、そのIL-10の主な供給源は単球(血液中を流れ、炎症が起きた場所に集まる白血球の一種)であり、IL-10が多い個体ほど痛みの回復が早いという関係も示されました。

次項では、IL-10がどのように働き、なぜ男女差が生まれるのかを詳しく見ていきます。

「痛みを止める合図」を送ることに男性ホルモンが関わっている

この研究の重要な点は、IL-10が単に炎症を抑えるだけではなく、痛みを感じ取る感覚神経に直接働きかける可能性を実験で示したことにあります。

感覚神経にはIL-10受容体が存在し、IL-10が結合すると神経の興奮が抑えられ、痛みが和らぐ方向へ向かうと考えられます。

免疫細胞が神経に「痛みを終わらせる合図」を送っている、という構図です。

研究チームは、この仕組みを確かめるために複数の実験を行いました。

その結果、単球を減らすと痛みの回復が遅れると分かりました。

単球からIL-10が作れないようにした場合も、痛みは長引きました。

さらに、神経側のIL-10受容体を欠くマウスでは回復が遅れ、逆に炎症部位にIL-10を投与すると雌雄ともに回復が早まりました。

単球のIL-10と神経の受容体の両方がそろって、痛みの終息を後押ししていることが示されたのです。

では、なぜオスでIL-10を作る単球が多いのでしょうか。

研究は男性ホルモンの影響を示しました。

メスに男性ホルモンに似た物質(テストステロンに近いホルモン)を投与すると、IL-10を作る単球が増え、回復が早まりました。

一方、オスで男性ホルモンの働きを弱めると、IL-10を作る単球が減り、回復の優位性が失われました。

単球側で男性ホルモン受容体が働かない場合も、IL-10が減り、痛みの回復が遅れました。

さらに研究チームは、人間でも似た傾向があるかを確かめるため、外傷直後の患者を追跡するAURORA研究のデータを解析しました。

ケガをした直後の痛みの強さは男女で大きな差はありませんでしたが、その後の経過では男性のほうが女性よりも早く痛みが軽くなる傾向が見られました。

また、血液中のIL-10や単球の値が高い人ほど、後の痛みが軽いという関連も確認されました。

もちろん、すべての慢性疼痛がこの一つの仕組みで説明できるわけではありません。

しかし今回の研究は、痛みの解消が受動的に起こるのではなく、免疫によって能動的に制御されている可能性を示しました。

今後は、この免疫と神経の連携がどの種類の痛みに当てはまるのか、また新しい治療につながるのかが重要な課題になります。

参考文献

Why chronic pain lasts longer in women: Immune cells offer clues
https://www.eurekalert.org/news-releases/1116635

Women Experience Longer Lasting Pain Than Men and Scientists Think They Finally Know the Reason Why
https://www.zmescience.com/medicine/women-experience-longer-lasting-pain-why/

元論文

Monocyte-derived IL-10 drives sex differences in pain duration
https://doi.org/10.1126/sciimmunol.adx0292

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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