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鶏よりも軽い小型の肉食恐竜が白亜紀にいた――何を食べていたのか?

  • 2026.3.2
鶏よりも軽い小型の肉食恐竜が白亜紀にいた――何を食べていたのか?
鶏よりも軽い小型の肉食恐竜が白亜紀にいた――何を食べていたのか? / Credit:Gabriel Díaz Yantén, Universidad Nacional de Río Negro.

アメリカのミネソタ大学(UMN)を含む国際研究チームが行った研究によって、ニワトリより小さい恐竜のほぼ完全な骨格が見つかりました。

見つかったのは、アルヴァレスサウルス類(小型の肉食恐竜のグループ)の一種、アルナシェトリ・セロポリシエンシスという恐竜です。

体重はおよそ0.7キログラムと推定され、骨の年輪のような「成長線」などから、完全ではないものの「ほぼ成体(亜成体)」だったと解釈されています。

鶏よりも小さな体で、彼らはいったい何を狩り食べていたのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年2月25日に『Nature』にて発表されました。

目次

  • 鶏よりも軽いミニ恐竜は何を食べていたのか?
  • 「一度きりの小型化」ではなかった恐竜たち

鶏よりも軽いミニ恐竜は何を食べていたのか?

鶏よりも軽いミニ恐竜は何を食べていたのか?
鶏よりも軽いミニ恐竜は何を食べていたのか? / Credit:Argentine fossil rewrites evolutionary history of a baffling dinosaur clade

「恐竜」と聞くと、多くの人はまずティラノサウルスのような巨大な肉食恐竜を思い浮かべると思います。

しかし、実際の恐竜時代の世界には、小型の肉食恐竜や雑食恐竜もたくさんいて、そうした「ちび捕食者」たちが生態系の細かい部分を支えていました。

アルヴァレスサウルス類は、その中でもとくに奇妙なグループです。

後期のアルヴァレスサウルス科と呼ばれる一部のグループでは、体が小さいうえに、腕が極端に短く太くなり、親指だけが大きなかぎ爪として残っています。

歯はとても小さく、鳥のようなくちばしに近い形の種もいます。

そのため、昔は「飛べない鳥」に近いグループだと考えられていた時期もありました。

しかし研究が進むと、このなかまの後のほうの種類は、アリやシロアリを専門に食べる生活(ミルメコファジー)をしていた可能性がある、と考えられるようになりました。

短くがっしりした前あしと大きな親指はアリ塚をこわすための道具、小さく細かい歯と発達した感覚は、アリを探してすくうためのしくみだと説明されてきたのです。

このため、アルヴァレスサウロイドの進化は、「大きな先祖から少しずつ小さくなり、それと同時にアリ食い専用の体に変わっていった」という流れで語られることが多くなっていました。

ところが、このストーリーには大きな弱点がありました。

化石の断片的なものが多く、後あしだけ、腕だけ、といったバラバラの骨で、全身の姿や本当の体重がはっきりしなかったのです。

そこで研究者たちは、ラ・ブイトレラで見つかった、ほぼ完全な約9500万年前(推定)のアルナシェトリの骨格をていねいに調べることにしました。

その結果、骨の年輪のような「成長線」などから、少なくとも数年は生きていたとみられますが、完全成長ではない亜成体(成長途中の個体)だと解釈されています。

また、骨の長さや太さから、他の恐竜や現代の動物との比較式を使って体重を求めると、約0.7キログラムでニワトリより軽いと推定されました。

(※骨の成長線などから既に急激に大きくなる段階は過ぎており、ほぼこのライン(0.7kg+α)で完全成体でも1㎏に収まると考えられます。一方で一般的なニワトリは成鶏で2㎏前後のものも多いです)

アルナシェトリの前あしは、後あしの長さの約6わりと、相対的にはかなり長めです。

三本の指もどれもしっかり伸びていて、後期のアリ食い特化型のような、とても短い腕や縮んだ指にはなっていません。

歯も小さいながら極端に縮小しているわけではなく、そろっていました。

そのため研究者たちは、このニワトリサイズの恐竜は小型ながらも肉食であり、小型の脊椎動物や無脊椎動物など、わりと広い種類の小さな獲物をおいかけていた可能性があると考えているようです。

アリクイ恐竜へと進化する前の段階で、ミニ恐竜として肉食生活を送っていたわけです。

もしこの結果が正しければ、白亜紀の砂漠のようすも、少し違って見えてきます。

たとえば、体重何トンもあるような巨大恐竜の足元で、その千分の一にも満たない小さなハンターたちが、砂丘のかげをすばやく走り回っていたかもしれません。

また研究者たちは、アルナシェトリをふくむ多くの恐竜の特徴をまとめ、「進化の家系図」をコンピューターで作り同時に「体重の変化」や「生息地」も追っていきました。

その結果、モデル推定では、アルヴァレスサウロイドのなかまは、もともと小さめの肉食恐竜として大陸が一つだったパンゲア規模の広い地域に広がっていたというモデルが最も合うことがわかりました。

小さいながらも広大な生息域を持っていたことから、超小型肉食恐竜という戦略が成り立っていた可能性を示唆します。

また進化の中で「全体として体重が少しずつ減っていく」という進化的小型化モデルよりも、「0.7〜数キログラムほどのせまい体重の範囲で、いろいろな枝がそれぞれに大きくなったり小さくなったりしていた」と考えるモデルのほうが、データによく合うことが分かりました。

これは「進化の過程でどんどん小さくなっていった」という従来の考えとは異なるものです。

「一度きりの小型化」ではなかった恐竜たち

「一度きりの小型化」ではなかった恐竜たち
「一度きりの小型化」ではなかった恐竜たち / Credit:Universidad Nacional de Río Negro and University of Minnesota

今回の研究で分かったいちばん大きなポイントは、「アルヴァレスサウルス類は一度だけ小さくなったのではない」ということです。

むしろ、「ある小ささの範囲の中で、枝ごとに何度も小さくなったり、少し大きくなったりしてきた」という、ジグザグした体重の歴史を持っていたと考えられます。

ミネソタ大学のマコビッキーさんは、このアルナシェトリの標本について、「長いあいだ欠けていたピース」や「ロゼッタストーン(むずかしい文字を読み解く決め手になった石)」にたとえています。

バラバラの骨しかなかった一族に、頭からしっぽまでそろった小さな亜成体が加わったことで、古い標本の意味づけや進化モデルを、一度立ち止まって整理し直せるようになったのです。

かつては、「変な小さな恐竜」として片づけられがちだったこのなかまのイメージを、「小ささをうまく使って生きてきた多様な小型ハンターたち」という、より立体的な姿に変えてくれたことです。

もう一つは、断片標本ばかりのグループに、たった一体でも良い標本が加わるだけで、なかまどうしの関係や大陸への広がり、体の大きさの歴史をここまで整理し直せる、という「化石一体の力」を示したことです。

今この瞬間も、世界のどこかの地層や博物館の棚の奥で、まだ名前の付いていない小さな骨が、次の「カギとなる標本」として出番を待っているのかもしれません。

参考文献

‘Tiny’ dinosaur, big impact: 90-million-year-old fossil rewrites history
https://www.eurekalert.org/news-releases/1117307

元論文

Argentine fossil rewrites evolutionary history of a baffling dinosaur clade
https://doi.org/10.1038/s41586-026-10194-3

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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