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都会の鳥は女性が近づくと男性相手より1メートル早く逃げ出すと判明

  • 2026.5.3
Credit:canva

ネコなどの動物に簡単に近づけて撫でたり出来る人がいる一方で、近づくとすぐ逃げられてしまうという人がいます。

こうした動物の反応は、近づき方や服装などに理由があるのでしょうか?

ネコについてはわかりませんが、最近イタリア・トリノ大学(University of Turin)を中心とした研究チームから、鳥たちの警戒行動について興味深い報告がなされました。

この研究によると、ヨーロッパの都市部に生息する鳥類37種、2,500件を超える観察データから鳥たちは一貫して、男性が近づくときよりも女性が近づくときの方が、およそ1メートル早く逃げ出す傾向が示されたというのです。

この傾向は、調査が行われた5カ国すべてで一貫していました。

私たちの日常に溶け込んでいる都会の鳥たちは、人間の性別に関連する何らかの違いに反応しているようです。しかし彼らはなぜ女性だけを警戒するのでしょうか?

この研究の詳細は、2026年2月付けで科学雑誌『People and Nature』に掲載されています。

目次

  • 都会の鳥たちの「見えない警戒ライン」
  • なぜ鳥たちは人間の女性を怖がるのか?

都会の鳥たちの「見えない警戒ライン」

私たちが街中の公園を歩いているとき、近くにいるハトやスズメが突然飛び立つことがあります。逆に近づいてもふてぶてしく飛び立たない鳥もいます。

こうした鳥の行動は、単なる気まぐれではなく、近づいてくる相手を「どれほど危険か」と分析した結果だと考えられます。

野外で生活する生き物にとって、敵との距離を適切に保つことは、生き残るために欠かせない判断の一つです。

この様な生き物の警戒心の強さを測る際、指標として用いられるのが「逃避開始距離(FID: Flight Initiation Distance)」という数値です。

これは、人間などの別の存在が近づいてきたとき、その生き物が逃げ出した瞬間の距離を指します。

この距離が長いほど、生き物はその相手に対してより強い恐怖心や警戒心を抱いていることになります。

今回の研究チームは、こうした動物たちが人間を警戒する条件について、都市に暮らす鳥たちを対象に、ヨーロッパ5カ国の都市部で大規模な野外調査を行いました。

調査では、実験参加者が鳥に向かって一定の速度でまっすぐ歩き、鳥が逃げ出した瞬間の距離を記録しました。

この実験では、鳥の種類、群れの大きさ、鳥自身の性別、周囲の木や茂みの多さ、など様々な要因が考慮され、また、鳥に近づく参加者の条件も、身長や服装ができるだけ近くなるように選ばれ、衣服も白やグレー、黒といった地味な色で統一されました。

さらに、近づく参加者の髪が長い場合は帽子などで隠し、参加者ごとの差ができるだけ小さくなるよう配慮されました。

こうして集められた、37種、2,500件を超える観察データを分析したところ、逃避開始距離について、興味深い要因が複数見つかったのです。

鳥たちは、近づいてくる人間が女性である場合、男性である場合よりも平均して約1メートル遠い位置で逃げ出す傾向があったのです。

この「女性をより警戒する」という現象は、調査が行われた5カ国すべてで一貫して見られました。

なぜ鳥たちは人間の女性を怖がるのか?

研究者たちは、この現象の背景にあるメカニズムについて、いくつかの可能性を検討しています。

まず、人間の体格や服装といった明らかな見た目の違いについては、今回の実験で慎重にコントロールされているため、主要な原因ではないと考えられます。

それでもなお鳥たちが反応を変えた理由として、人間には気づきにくい「歩き方の癖」や「骨格のわずかな差」などが挙げられています。

例えば、歩行時の腰の動きや姿勢といった、男女で微妙に異なる特徴を、鳥の鋭い視覚が捉えている可能性が考えられます。

また、興味深い推測として、人類の歴史における「役割分担」の影響も考察されています。

かつての狩猟採集時代において、男性は大きな獲物を狙うことが多かったのに対し、女性は鳥などの小さな獲物を捕まえる役割を担っていたという説があります。

過去に女性が小型の獲物を狙う機会が多かったとすれば、鳥が女性に関連する特徴をより警戒するよう学習してきた可能性も考えられます。

また、匂いのような化学的な手がかりの可能性も考えられます。鳥は視覚や聴覚に頼る動物と見なされがちですが、近年では、捕食者の匂いや化学的なサインを利用して危険を避ける例も報告されているため、その可能性も否定できません。

ただし今回の調査では、参加者は鳥から一定の距離をとっており匂いを感じにくかった点や、月経中の女性は実験から除外するなどの調整を行っていたことから、研究者たちは匂いが主な原因である可能性は高くないと考えています。

一方で、今回の研究では、近づかれる側の「鳥自身の性別」によっても行動に違いがあることがわかりました。

一般的に、オスの鳥はメスの鳥よりも、人間がより近くまで寄ることを許容する、つまり「大胆でリスクを恐れない」傾向がありました。

これは、オスが自分の力強さや生存能力を周囲にアピールするための戦略ではないか、と考えられています。

また周辺環境も彼らの警戒心に影響していました。

鳥たちは、逃げた後にすぐに隠れることができる「低い茂み(ブッシュ)」が多い場所では、比較的近くまで人間を寄せ付ける傾向がありました。

逆に、高い木が多い場所では、より遠くからでも逃げ出しやすいという結果が見られました。

これは、周囲の状況に応じて、鳥たちが常に「危険」と「粘って活動を続ける利益」を天秤にかけていることを示唆しています。

鳥にとっては「早く逃げるほど安全だが、その分だけ餌を食べる時間を失う」というジレンマがありますが、高い木が多い場所では、一度逃げても見通しの良い高い場所をすぐ確保出来るため、安全を確認して再度餌を探しやすくなります。

そのため、無理にぎりぎりまでその場に留まって餌を取り続ける必要がなくなり、より余裕をもって早い段階で飛び立つ行動が選ばれやすくなると考えられるのです。

もちろん、この研究はあくまでヨーロッパの都市部で行われたものであり、すべての環境の鳥に当てはまるわけではありません。

また、鳥が具体的にどの情報を手がかりに人間の性別を判断しているのかという点については、まだ完全な結論は出ていません。

しかし、今回の発見は、私たちの身近に生きる鳥たちは、想像する以上に細かく私たちを観察しているのかもしれません。

元論文

Sex matters: European urban birds flee approaching women sooner than approaching men
https://doi.org/10.1002/pan3.70226

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部

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