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夜間の救急要請で「赤色灯がまぶしい」と近隣住民から苦情が…元救急隊員が語る、現場の難しさ

  • 2026.3.30
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。ライターのとしです。

夜間の救急要請で現場対応を続ける中、近隣住民から苦情が入ったことがありました。

傷病者対応を優先しながらも、周囲への影響まで考えなければならない。

そんな現場の難しさを感じた出来事でした。

夜間の住宅街で「不安感が強い」という要請に向かった

その出場は、20代女性からの「不安感が強く眠れない」という要請によるものでした。

現場は住宅街で、時間もかなり遅くなっていました。

傷病者宅の前は狭い路地で、救急車をそのまま止めるのが難しい場所です。

そのため、車両は少し離れた場所に止め、赤色灯とハザードをつけたまま現場対応に入りました。

状態をみると、バイタルサインや心電図に大きな異常はありません。

ただ、本人の不安感は強く、すぐに現場を離れられるような様子ではありませんでした。

搬送の対象ではなくてもその場で終われないことがある

本人が訴えていたのは、精神的な不安からくる「眠れない」といった症状でした。

救急搬送は、身体的な症状があることや、搬送が必要と判断できる状態であることが前提になります。

今回は、搬送の要件にそのまま当てはまるものではありませんでした。しかし、ご本人にとっては切実なSOSであり、決して無下にできるものではありません。 

本人の不安感はかなり強く、こちらとしても、話を聞きながら少しずつ落ち着いてもらう必要がありました。

その場では、これまでの経過や普段の受診状況を確認し、かかりつけ医への相談も勧めながら対応を続けていました。

数値だけをみれば大きな異常はない。

でも、現場としてはすぐ引けない。

こういう要請には、そういう難しさがあります。

本部から入ったのは赤色灯への苦情だった

対応を続けている途中で、本部から連絡が入りました。

近隣住民から「赤色灯がまぶしくて眠れない」と苦情が入った、という内容です。

夜間の住宅街だったことを思うと、その苦情も無理はないことだったと思います。

こちらは活動に必要な形で車両を止めていましたが、周囲から見れば、眠ろうとしている時間に光が入り続けている状態です。

現場に入っていると、どうしても意識は傷病者のほうに向きます。

ただ、そのすぐ近くでは普段どおりに生活している人たちがいて、その生活の中に救急活動が入っている。

そのことを改めて感じる場面でもありました。

停車位置を変えたあとも本人対応は続いた

この傷病者は、頻回要請が続いていたケースでもありました。

そのため、本人への対応だけでなく、周囲への影響も含めて見ていく必要がありました。

そのまま同じ位置で活動を続けるのは難しい。

そう判断して、途中で救急車の停車位置を変更することにしました。

とはいえ、車を動かせば終わりという話ではありません。

本人の不安感は続いていて、その後も対応を続ける必要がありました。

車両位置を見直しながら、本人対応も続ける。

ひとつのことだけでは済まない、夜間の現場らしい難しさがあったように思います。

その後、話を聞きながら様子を見ていくうちに、本人も少しずつ落ち着いていきました。

最終的には、その日は不搬送となっています。

夜間の現場では周辺への影響も無視できない

救急活動では、まず傷病者への対応が最優先です。

それは今も変わりません。

ただ、夜間の住宅街で、しかも対応が長くなりそうな時は、それだけでは足りないこともあります。

赤色灯の点灯や現場近くへの駐車は、活動のために必要なものです。

一方で、時間帯や現場の環境によっては、地域の生活に影響を与えることもある。

今回の件は、そのことを改めて考えさせられるものでした。

このあと、同じようなケースでは停車位置により配慮するよう、他隊や近隣署にも情報共有が行われました。

大きな処置を伴う現場ではありませんでした。

それでも、あとから振り返ると、現場を見る目が少し変わるきっかけになった一件だったように思います。


ライター:とし
元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。


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