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「1人で眠れない」という通報内容…“搬送が必要じゃない”パターンに救急隊員の決断は…

  • 2026.3.29
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。ライターのとしです。

救急要請のなかには、強い痛みや息苦しさのような分かりやすい症状よりも不安の強さが前に出ていることがあります。

今回の通報内容は「不安が強くて、一人では眠れない」というものでした。

会話はできていて、見た目にも大きく崩れている印象はありませんでしたが、「搬送が必要かどうか」だけで話を終えるには、少し危うさが残る空気もありました。

今回は、状態を丁寧に見ながら、不安の背景を一緒に整理していった現場を振り返ります。

症状よりも“不安”が中心に見えた通報だった

現場に到着すると、ご本人は受け答えができ、立っていることもできました。

呼吸や顔色を見ても、その場で強く切迫している印象はありません。

ただ、口に出てくるのは「このまま大丈夫でしょうか」「急に悪くなりませんか」という言葉ばかりでした。

「一人でいるのが不安で……」「眠ろうとしても、何かあったらどうしようと思ってしまって」そんな様子からも、症状そのものより怖さのほうが前に出ている感じがありました。

まずは淡々と状態確認。結論を急がない

こういうときでも、最初にやることは変わりません。

意識、呼吸、脈拍、血圧、体温などを測り、必要に応じて心電図モニターも装着しながら、危険なサインがないかを一つずつ確認します。

不安が強く見える通報でも、身体の異常が隠れていないとは限らないからです。

この現場も、バイタルサインや心電図モニターで確認できた範囲では、直ちに緊急搬送が必要と言い切る状況ではありませんでした。

「搬送できません」だけだと危うい空気があった

ただ、そこで結論だけを短く伝えると、不安がさらに強くなることがあります。

不安が強い人は、説明の内容より先に気持ちがいっぱいになっていることがあるからです。

「じゃあ私はどうしたらいいの」と取り残されると、その後に無理をしたり、逆に家で抱え込んだりすることもあります。

このときも、搬送の可否だけで終わらせず、その先をどうつなぐかが大事だと感じました。

不安の背景を言葉にしてもらい、整理していく

そこでこのときは、症状だけで終わらせず、不安の中身を少しずつ言葉にしてもらいました。

確認したのは、次のようなことです。

  • いちばん心配なことは何か
  • いつから不安が強くなったのか
  • 今夜一人で過ごすことがつらい理由は何か
  • 頼れる人は近くにいるのか

話していくうちに、ご本人の表情や声のトーンは少しずつ落ち着いていきました。

状態確認の結果もあらためて伝えたうえで、このときは直ちに搬送するのではなく、必要時の受診先や相談先を案内しながら、まずは様子を見る流れになりました。

ご本人も最後には「少し落ち着きました。いったん様子を見てみます」と話されていて、その言葉にこちらも少しほっとしたのを覚えています。

迷ったときの相談先を知っていると安心につながる

すぐに119か迷う段階なら、相談窓口を挟むのも一つです。

  • 救急相談窓口(#7119)
    救急車を呼ぶべきか、受診の目安はどうかを相談できる窓口です。地域によって実施状況は異なります。
  • 医療機関案内(各自治体の案内窓口)
    夜間や休日に受診できる医療機関を案内している自治体があります。東京都の「ひまわり」はその一例です。
  • こころの相談(いのちの電話など)
    不安が強くてつらいときは、気持ちを言葉にできる相談先が支えになることがあります。

もちろん、意識がもうろうとしている、強い呼吸苦、激しい胸痛、片側の麻痺などがあるときは、迷わず119で大丈夫です。

学び:不安が強い人には「話を聞いて整理する」も大切

不安が強い人への対応は、搬送の可否だけで終わらない場面があります。

状態確認を丁寧にしたうえで、不安の背景を一緒に整理すること。

頭ごなしに否定せず、その人が少し落ち着いて次の行動を考えられるようにつなぐこと。

この現場で、改めてその大切さを感じました。


ライター:とし
元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。  


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