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“退職金2,000万円”と“iDeCo1,000万円”を同じ年に受け取り…→その後、60歳会社員を襲った“思わぬ大誤算”【お金のプロが解説】

  • 2026.3.30
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

50代に近づくにつれ、老後資金の準備として「iDeCo」を活用する人が増えています。積立時は掛金が所得から控除されるため節税メリットを感じやすいですが、実は「受け取り時」こそが最大の難所であることをご存知でしょうか。

「退職金とiDeCoを同時に受け取ったら、想定外の税金がかかった」「年金形式で受け取ったら、保険料が増えて手取りが減った」という声も少なくありません。なぜこのような想定外の負担が発生するのでしょうか。受け取り時期や方法によって、なぜ手元に残る金額が変わるのか。専門家の見解をもとに、後悔しないための出口戦略を解説します。

なぜiDeCoは受け取り方で税金・社会保険料の負担が変わるのか?

---iDeCoで想定外の負担が起きる理由は何でしょうか?積立時のメリットは明確ですが、受取時は何に注意すればいいですか?

石坂貴史さん:

「iDeCoで想定外の負担が起きる理由は、『受け取り方で税金や保険料の計算方法が変わる』ことが、実感として理解されていない点にあります。積立時は『掛金が所得から引かれる』というシンプルなメリットですが、受取時は仕組みが一気に複雑になります。

たとえば、会社員のAさん(60歳)が、退職金2,000万円とiDeCo1,000万円を、同じ年に一時金として受け取ったケースを考えてみましょう。

『別々のお金だから別々に税金が計算される』と考えがちですが、実際にはどちらも『退職所得』として扱われ、退職所得控除や重複期間の調整を通じて、一体的に税金が計算されます。

このとき、退職金側で退職所得控除の枠をほぼ使い切っていると、iDeCoの1,000万円には想定以上に税金がかかる可能性があります。

『2,000万+1,000万を単純に足してから控除するだけ』とは限らないものの、結果的に『まとめて出口を迎えると負担が重くなりうる』構造になっている、というイメージです。

一方、iDeCoを年金形式で受け取る場合を見てみましょう。Bさん(65歳)は、公的年金が年間200万円あり、そこにiDeCoから年間120万円を上乗せして受け取りました。

この場合、公的年金とiDeCo年金を合計した320万円が、その年ごとの『年金収入』として扱われます。すると、税金だけでなく、国民健康保険料や介護保険料などの負担が増えることがあり、結果として手取りが思ったほど増えない場合もあります(具体的な保険料の増え方は、自治体や制度改正によって変わる点にも注意が必要)

ここでの落とし穴は、『税金だけ見て判断してしまうこと』です。

Bさんは『毎年少しずつだから負担は軽い』と感じますが、実際には所得が増えたことで保険料も上がることがあり、『増えたと思った年金が、手取りベースではそれほど増えていない』ということが起こりえます。」

退職金とiDeCoを「同じ年」に受け取ると不利になるのはなぜ?

---退職金とiDeCoを同じ年に受け取ると、具体的にどのようなデメリットがあるのでしょうか?また、対策はありますか?

石坂貴史さん:

「ポイントは、

・受け取り方で、税金・社会保険料の計算方法が変わる
・退職金とiDeCo一時金は、同じ年に受け取ると退職所得として一体的に計算される(単純な足し算ではないが、控除枠の食い合いが起こりうる)
所得が増えると、税金だけでなく保険料も増えることがある

という3点です。

身近な例で見ると、同じ1,000万円でも『いつ・どの形で受け取るか』によって、税金と保険料の負担が変わり、最終的に手元に残る金額が大きく変わる構造がわかります。
退職金とiDeCoを同じ年に一時金で受け取ると不利になりやすいのは、『大きな控除を2回使えない』ためです。

たとえば、Cさん(60歳)は退職金2,500万円とiDeCo800万円を同じ年に一括で受け取る予定です。Cさんは『どちらも退職金扱いだから税金は軽いはず』と考えていましたが、実際には2つを合算して計算されるため、控除を超えた部分に対して税金がかかります。

その結果、『思っていたより数十万円単位で手取りが少ない』ということが起こります。この対策としてよく使われるのが『受け取り時期をずらす方法』です。

たとえば、Cさんが退職金を60歳で受け取り、iDeCoは65歳で一時金として受け取るようにすると、控除を分けて使える可能性があります。これにより、同じ金額でも税金を抑えられるケースがあります。

もう一つの例として、DさんはiDeCoをあえて年金形式で受け取る選択をしました。理由は、退職金が大きく、一時金で受け取ると税金が増えると判断したためです。ただし、毎年の所得が増えることで、健康保険料が上がる点はあらかじめ織り込んでいます。

このように、『一時金にするか、分割にするか』『いつ受け取るか』で結果は大きく変わります。大切なのは、『今年の税金が安いかどうか』ではなく、『最終的にどれだけ手元に残るか』で判断することです。」

50代から始める「将来のお金の流れ」の見える化

---手取りを最大化するためには、具体的にどのような準備やシミュレーションが必要でしょうか?

石坂貴史さん:

「50代の段階でやるべきことは、『将来のお金の流れを一度紙に書き出すこと』です。難しい計算よりも、まず全体像を見えるようにすることが大切です。

Eさん(55歳)の事例で確認してみましょう。60歳から退職金2,000万円、65歳から公的年金180万円、iDeCoは60歳時点で800万円の見込みです。

まず、この3つを書き出します。
次に、受け取りパターンを分けて考えます。

・パターン①:iDeCoを60歳で一時金
・パターン②:65歳から年金形式
・パターン③:一部を一時金、残りを分割

という形です。それぞれについて、『その年の収入はいくらか』を並べます。

パターン②の場合、65歳以降は『年金180万円+iDeCo80万円=260万円』となります。この金額をもとに税金と保険料を引いた手取りを考えます。

一方、パターン①では60歳の収入が一時的に大きくなり、その後は収入が減る形になります。

最後に、『資産が何歳まで持つか』を確認します。Eさんの場合、分割で受け取ると毎年の安心感はありますが、長く税金と保険料がかかります。一時金の場合は、最初の負担は大きいものの、その後の固定費が下がるという特徴があります。

このように、『60歳から90歳までの収入・支出・残高』を並べるだけでも、判断材料は大きく変わります。難しい計算よりも、『見える化』が最初の一歩です。

最後に重要なのは、『少し余裕を持つ設計』にすることです。

想定より長生きした場合や、制度が変わった場合でも対応できるようにしておくことが、結果的に資産寿命を延ばすことにつながります。」

出口戦略で失敗しないために。「見える化」が資産寿命を延ばす

iDeCoの受け取りは、制度上の仕組みが複雑で、税金だけでなく社会保険料まで考慮しないと「手取り」が減るリスクがあることがわかりました。退職金との合算や時期の調整など、戦略的な判断が求められます。

今からできることは、自分の将来の収入・支出を書き出し、パターン別にシミュレーションしてみることです。まずは「見える化」から始め、想定外の事態にも対応できるよう、少し余裕を持った設計を心がけましょう。


監修者:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、日本証券アナリスト協会認定資産形成コンサルタント、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、マネーシップス代表。累計1,200件以上のご相談、金融関連の記事制作、校正・監修を手掛けています。「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」的6つの分野が専門。各種メディアにて毎朝金・プラチナ相場の解説を担当。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポート。