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受粉を担う「蜂」は2万6000種いる可能性【専門家が足りない】

  • 2026.2.26
受粉を担う蜂は世界に2万6000種もいる可能性 / Credit:Canva

花を訪れ受粉を担うハチ(ハナバチ)は、実は私たちの食生活と健康に欠かせない存在です。

果物や野菜、ナッツ類など、日々の食卓に並ぶ多くの食べ物は、ハナバチたちの働きに支えられています。

オーストラリアのウーロンゴン大学(University of Wollongong)の研究チームは、このハナバチが世界にどれくらいの種類いるのかを、初めて統計的な手法で正面から推定しました。

その結果、従来考えられてきた数よりもはるかに多く、最大で約2万6000種に達する可能性があることが示されました。

研究成果は2026年2月24日付の『Nature Communications』に掲載されています。

目次

  • 受粉を担う「ハナバチ」は2万6000種存在する可能性
  • 偏在する「未発見の蜂」と専門家不足というボトルネック

受粉を担う「ハナバチ」は2万6000種存在する可能性

ハナバチは、ミツバチやマルハナバチだけでなく、ハチ類の中で、花に訪れ、蜜や花粉を集め、幼虫の餌としてそれらを蓄える習性をもつ多様なグループの総称です。

研究では、このハナバチ全体(Anthophila)を対象に、世界にどれだけの種がいるのかを推定しました。

なぜ、その数を知ることが重要なのでしょうか。

先行研究の試算では、食料作物の多様性の約75%、総食料生産量の約35%が、動物による受粉の恩恵を受けているとされています。

顕花植物全体で見ても、およそ9割が動物に花粉を運んでもらっていると推定されており、植物は酸素の供給や炭素の固定、土壌の保全、生態系の基盤づくりなどに欠かせません。

このような背景から、ハナバチは生態系のバランスを支える「中核的な存在」とみなされています。

ところが、その「主役」がそもそも世界に何種類いるのかという、非常に基本的な質問にすら、これまでははっきり答えられていませんでした。

2007年時点では、既知種は約1万8000種、総数は2万種超と推定されていましたが、これは専門家の経験則にもとづく概算であり、統計的な裏付けは十分ではありませんでした。

そこで研究チームは、世界中で集められたハナバチに関する膨大なデータを総動員しました。

具体的には、830万件以上の出現記録、約2万1000の有効種名と約2万4000のシノニム(異なる名前がついた同じ種)、各国ごとのチェックリスト、文献から得られた記録などを統合し、生態学で用いられる種数推定の統計手法を適用しました。

この統計手法の発想は、「どれだけ“まれな種”が多いか」を見ることです。

たとえば、ある場所を何度も調査しても、いつも同じ種類ばかり出てくるなら、その場所の種はかなり出尽くしている可能性が高いと考えられます。

一方で、めったに見つからない種類が次々に現れるようなら、まだ姿を見せていない種がたくさん潜んでいるかもしれません。

研究チームは、この考え方を国単位・大陸単位・地球全体へと拡張し、「観察されたデータから、最低でもどれくらいの種数が必要か」を計算しました。

その結果、世界のハナバチは 2万4705種から2万6164種の間に収まると推定されました。

これは従来の推定値よりも18〜25%多いものです。

では、どの地域にどれだけの「未発見のハナバチ」が潜んでいるのでしょうか。

偏在する「未発見の蜂」と専門家不足というボトルネック

推定値を地域別に分解すると、世界のどこに「見つかっていないハナバチ」が多いのかも見えてきました。

特に未記載種が多いと推定されたのは、アジア・アフリカ・南米です。

具体的には、アジアでは現在知られている種数に対して約40%、アフリカでは約34%、南米では約29%の上乗せが見込まれています。

一方、ヨーロッパは比較的飽和に近く、スウェーデンやスイスのような国では、既知の種数が実際の多様性にかなり近づいていると考えられます。

国別に見ると、トルコでは約843種が未記載と推定されており、これはヨーロッパ大陸全体で見込まれる未記載種数よりも多いという意外な結果も示されました。

また、島国は面積あたりで見ると大陸国家よりもハナバチの種多様性が高いことも分かりました。

島は固有種が生まれやすい一方で、気候変動や海面上昇の影響を強く受けるため、保全上きわめて重要な地域であることが改めて浮き彫りになっています。

では、なぜこれほど重要な生き物の種数が、ここまで長いあいだ正確に分からなかったのでしょうか。

研究チームが指摘する大きな理由は、「分類学的ボトルネック」です。

1960年以降、ハナバチの新種は年平均でおよそ117種ずつ記載されてきました。

このペースはほぼ一定で推移しており、「新しい種が見つからなくなってスピードが落ちている」というわけでもありません。

むしろ、世界にはまだ多くの未発見種が残っているにもかかわらず、それを調べて正式に記載できる専門家が足りていない可能性が高いのです。

さらに、DNAを用いた解析が十分に行われていない地域も多く存在します。

見た目は同じように見えても、遺伝的には別の種である「隠れた種」が含まれている場合、それらは普通の観察だけでは見分けられません。

研究では、1人あたりGDPが高い国ほど未記載種の割合が低い傾向が見られました。

これは「自然の豊かさ」だけではなく、「研究に投じられるお金や人材の量」が、どれだけ種を見つけられているかに大きく影響していることを示しています。

今回得られた2万4705〜2万6164種という数字は、「最低でもこのくらいはいるだろう」という保守的な推定です。

DNA解析や標本データの整備が進めば、この数字がさらに増える可能性もあります。

また、この研究で用いられた統計的アプローチは、ハナバチだけでなく、他の昆虫や生物グループにも応用できます。

地球上に何種類の生き物がいるのかという古くて大きな問いに対して、具体的な方法を提示したという点でも、この研究は大きな意義を持っています。

現在の新種記載のペースが続いた場合でも、今回推定された「未記載のハナバチ」をすべて記載するには少なくとも30〜40年ほどかかると見込まれます。

実際には、残された種ほど見つけるのが難しくなることや、専門家不足が続くことを考えると、さらに時間がかかる可能性もあります。

今後は、分類学者の育成や研究資金の拡充、データベースの整備など、「ハナバチを数えるための基盤づくり」も重要な研究テーマになっていきそうです。

この研究が示したのは、受粉を担うハナバチは最大2万6000種存在する可能性があり、その多くはまだ名前すら与えられていない、ということです。

私たちの食卓を支える小さな相棒たちの正体を、どこまで解き明かせるかは、人類がどれだけ本気で生物多様性と向き合うかにかかっているのかもしれません。

参考文献

How many bee species exist? New global count puts the total near 26,000
https://phys.org/news/2026-02-global-bee-hint-thousands-hidden.html

There May Be Up To 26,000 Bee Species and We Might Never Find Them All
https://www.zmescience.com/ecology/animals-ecology/there-may-be-up-to-26000-bee-species-and-we-might-never-find-them-all/

元論文

Estimating global bee species richness and taxonomic gaps
https://doi.org/10.1038/s41467-026-69029-4

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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