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「危険ですので離れてください!」元駅員が語る、“年度末の駅ホーム”でありがちな実はちょっと困ること

  • 2026.3.27
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は、私が駅員時代に経験した「年度末の修羅場」をご紹介します。

駅は別れの舞台

4月から進学や就職、異動などで新しい街での生活を始める方も多いと思います。また、新生活のために発つ家族や友人、同僚を見送る側の方もいるでしょうか。駅員も異動がある職業なので、私も多くの上司や同僚の異動を見送り、また何度か見送られてきました。

3月の駅では、列車に乗るお客さまのほかにお見送りの方も多く見かけます。改札口で手を振る方もいれば、入場券を購入してホームまで行く方もおり、見送りの方法はさまざまです。

駅員としては毎年の光景なので、改札口の前まで来て
「ありがとうございました、お世話になりました」

と職場の先輩か上司らしき人と挨拶を交わす方を見ると、「そこで立ち止まられると困るなあ」と感じていました。なんでもない日に「通路なので」とお声かけするときより、声をかけにくい雰囲気があります。

出発時刻、しかし…

通行スペースを塞がれた際、改札口よりも深刻な問題になるのが列車のドア付近です。

引越しのために長距離を移動するお客さまは、しばしば優等列車を利用されます。通勤・通学に使われる車両よりドアの数が少なく、また幅も狭いため、乗車するお客さまとお見送りの方々が1組いるだけで、ほかのお客さまがそのドアを使えません。

加えて、列車の出発時刻になれば車掌が
「危険ですのでドアから離れてください」

「お見送りのお客さまは点字ブロックの内側にお下がりください」

と繰り返し放送します。この放送が聞こえていないのか、それとも無視されているのか、お客さまになかなか伝わらないのです。

車掌は列車のベルを鳴らして警告します。私たち駅員も、列車出発時は少し強めの声色で

「列車が出発します。大変危険ですので、点字ブロックの内側までお下がりください」

と構内放送し、安全な列車運転のための措置を取ります。

想像以上に危険

ホームからゆっくりと出ていく列車を見て

「これくらいの速度なのに、『点字ブロックまで下がれ』とやかましく言わなくてもいいじゃないか」

と感じた経験のある方もいるかもしれません。

しかし、実際には見送りのために点字ブロックぎりぎりのポジションを攻めるお客さまの横を列車が出ていくとき、駅員たちはハラハラしながら見ています。運転士や車掌はもっと緊張しているのではないでしょうか。

というのも、一度動き始めた列車を止めるにはどうしてもある程度の距離を要し、列車に服などを引っかけたお客さまが引きずられてホームの端から転落したり、列車とホームの間に挟まれたりすれば、命に関わるためです。

「日本の鉄道は安全」といいますが、係員の正しい管理とお客さまの協力がなければ、簡単に危険な物体へ変わってしまいます。

安全vs別れ

改札口と違って列車の安全に関わるので、車掌や駅員も口調は強くなります。

一方でお客さまたちはドアが閉まり、窓越しの相手の顔が見えなくなる最後の一瞬まで手を振り続けたいようです。3月といえばまだ厚着の方も多く、余計に「列車に引っかかってしまうのでは」と危険に感じていました。

実際にベビーカーが挟まれて引っ張られてしまった事案や、ホームが混雑していたためにドアに引っかかった高校生に乗務員が気づかず列車を動かしてしまった事案があります。鉄道会社が口うるさく

「点字ブロックの内側まで下がって!」

と繰り返すのは、危険な鉄の塊からお客さまの命を守るためなのです。

なぜドア?

ところで、見送る場所はドアでなければいけないのでしょうか?

『ドアの前で直接顔を見て見送りたい』『改札越しでは冷たいのではないか』と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、

私は窓越しでも改札越しでも、あるいは駅まで来なくても、スマホのメッセージひとつだけで、見送りの気持ちは伝わるのではと感じます。

ドラマやアニメでは主人公たち以外の乗客はそこにいません。しかし実際の駅では、たくさんの主人公たちが同じホームで別れを告げようとします。

ドア付近は通路のために空けて、座席が見える窓の近くで点字ブロックより十分に下がってお見送りしていただけると、駅員としては安心して見守れます。また、列車の定時運行にもつながるでしょう。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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