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「線路にイヤホンを落としました」すぐに対応できない理由…駅員が語る、意外と知らない“持ち主に返すまで”の流れ

  • 2026.3.15
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は、私が駅員時代に経験した「線路内の落とし物に関するトラブル」をご紹介します。目の前の列車に乗れないお客さまとの気まずい思い出です。

ワイヤレスイヤホンを落とした!

駅ではしばしば

「線路にものを落としたので取ってほしい」

と相談されることがあります。スマートフォン、イヤホン、ペットボトルなど、日々さまざまなものが線路に落ちます。

その日落ちたのはワイヤレスイヤホンの片方でした。線路への落とし物の連絡があると、まず駅員は無線機とマジックハンドを持ってお客さまと共にホームへ向かいます。お客さまにどこで落としたか案内してもらうのです。

ホームから線路上の落とし物を見つけたら、無線機で駅の列車管理を担当する社員に連絡し、その線路に列車が来ないように操作してもらいます。列車が進入する恐れがないとわかったら、マジックハンドで落とし物を拾います。

見えない落とし物

ところがこのときは困ったことが起きました。

お客さまが「ここに立っていて落としました」と指差す先にイヤホンが見つからないのです。ホームの下には人が転落したときに列車から避難するためのスペースがあるのですが、もしかしたらそこに転がっているのかもしれません。

私はホーム上での位置確認を諦め、線路に下りてイヤホンを探すことにしました。線路に下りていいか線路に下りていいか列車運転の担当社員に無線で尋ねたところ「もうすぐ普通列車がその線路に到着するから、その列車が出発した後に下りてほしい」との返答があり、私も了解しました。

「すみません。もうすぐ列車が来てしまうので、その列車が出発してから線路に下りて探しますね」

私がそう言うと、お客さまは困った顔をしました。

「私、その列車に乗りたかったんですけど…」

気まずい待ち時間

「もう列車が接近していて危険なので、申し訳ありませんが、いま取りに下りることはできません」

と説明し、待っていただくしかありません。やがて普通列車が到着し、ドアが開きました。この列車は快速列車の通過待ち合わせのため、数分停車します。

このお客さまの目的地は本数の少ない普通列車しか停まらない駅だったのかもしれない。そう思うと、目の前で開いているドアに乗りこめずに待っているお客さまとホームで立っているのが非常に気まずく感じられました。

「あの、これって今下りることってできませんよね…?」

お客さまはダメ元なのか、困ったように笑いながら言います。

もちろん、列車とホームとの間に私が下りていけるような隙間はありません。列車の先頭まで迂回して線路に下り、退避用のスペースを頭を低くして通ることはもしかしたらできるかもしれませんが、危険なのでやはり現実的ではありません。

列車出発後にスピード解決

やがて快速列車の通過待ち合わせを終え、普通列車のドアが閉まりました。ゆっくり列車が動いていき、私はすれ違いざまに、今回の件にまったく関係のない車掌へ一応会釈しておきました。

列車が出ても、すぐに線路へ下りられるわけではありません。列車管理担当の社員からの許可を待ち、自身でも目視と指差し確認で左右から列車が来ていないことを確認し、ようやく下りられました。

イヤホンは退避用スペースではなく、ホームからは死角になるような線路のすぐ隣に落ちていました。

線路に下りてからイヤホンを見つけ、またよじ登るまでにかかった時間は1分程度だったでしょうか。

線路に落ちていた意外なもの

ちなみに、線路に下りた私はイヤホンと同時にもうひとつの忘れ物をホームの死角から発見しました。

それは安全ピンの壊れた名札で、恐らく車掌が落としたものと思われます。イヤホンをお客さまに渡して駅事務室に戻り、当務駅長に渡して改札口に戻ったので、その後の名札の行方は不明です。

珍しいものが落ちていたものだと思った一方、もし駅の線路を端から端まで探したら、もっといろいろなものが見つかるのではと興味を持ちました。

残念ながらそれを実現するだけの余裕はダイヤにないのですが…。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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