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「しつこいよ!」機内に響き渡る怒鳴り声…新人CAが絶句した“手荷物トラブル”を解決したベテランの一言

  • 2026.3.14
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

みなさま、こんにちは。元国際線CAの、かくまるめぐみです。

飛行機に乗ると、CAが手荷物収納を細かくチェックする姿に「そんなに気にすることないのでは?」と思われたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、手荷物収納の依頼にお客様が立腹され、トラブルになるケースが少なくありません。

そこで今日は、「しつこい!」と怒鳴られながらも機内で繰り広げられた、お客様との攻防戦をご紹介します。

「しつこいよ!」響き渡る乗客の怒声

私がまだ新人CAとして、国内線に乗務していたときの話です。離陸前の準備として、シートベルト着用の確認とともに、お客様の手荷物収納チェックをするために機内を巡回していました。

すると、私のジャンプシート(CAが離着陸時に着席する折りたたみ式の座席)前に着席されたお客様のアタッシュケースが、隣の空席に置いてあったのです。

「あ、これは手荷物収納にご協力いただかないと」となりましたが、そのお客様から出ている“乗り慣れている”という特有のオーラから、なんとなく「お声がけしにくいな」と感じました。

しかし、ジャンプシート前かつ非常口座席であることからも、お声がけしないわけにはいきません。

「恐れ入りますが、お手荷物は上の収納棚にお入れいただけますでしょうか」と笑顔で、できる限り丁寧にお願いしました。すると、お客様はただ一言「ここでいい」と。目も合わせていただけず、取りつく島もありません。

「それでは、せめてシートベルトで固定だけでも……」とお願いしようとした瞬間でした。

「しつこいよ!いつもこれでいいって言われているんだよ!」

怒声が機内に響き渡り、周囲のお客様もあまりの大きな怒声に驚きを隠せません。そして、お客様方の視線が一斉に私に向けられました。

私はあまりの激昂ぶりに言葉を失い、呆然と立ち尽くすことしかできず……。

「いつもいいって言われている」〜頭の痛いセリフ〜

大きな怒鳴り声を聞きつけたチーフパーサーが、すぐに駆けつけてくれました。その落ち着いた足どりを見て「助け舟が来た!」と、胸を撫で下ろしたことを覚えています。

しかし、チーフパーサーがどれほど丁重に手荷物収納をお願いしても

「うるさい!いつもいいって言われているのに、なんで今日はダメなんだよ!」と、お客様の怒りは収まらないのです。

正直なところ「いつもいいって言われている」というこのフレーズは、クレーム対応時に頭を悩ませるものの一つといえるでしょう。

なぜなら、過去のフライトで誰かが「今回だけ」と許可してしまえば、その“前例”はお客様の記憶にしっかりと刻まれ、次回以降の搭乗時でも「許可されたこと」として認識されてしまうためです。

こうした悪循環を断ち切るためにも「前はよかったのに」という前例を作り出すことは、どうしても避けなければなりません。

ですから、たとえお客様に「しつこい!」と怒鳴られても、空の安全を守るためにご理解いただかなければならないのです。

手荷物が凶器に?熟練チーフパーサーが変えた「切り口」

実は、飛行機が離陸滑走中に達する速度は、時速250〜300キロとも言われています。

もし、アタッシュケースが固定されず座席に置かれていた場合、このスピードの中で急ブレーキがかかると、荷物が弾丸のように飛び出す危険性はゼロではありません。

手荷物が「凶器になりうる」という表現は、決して大げさではないのです。

さらに、収納されていない荷物や固定されていない荷物が衝撃によって非常口付近に散乱してしまうと、緊急脱出時の妨げとなり被害を拡大させかねません。

そこでチーフパーサーは、お客様に正面からぶつかり続けるだけでは、怒りの壁は崩れないと判断し、切り口を変えてお客様にこう伝えたのです。

「もし離陸滑走中に急ブレーキがかかった場合、固定されていないお手荷物は勢いよく飛び出してしまいます。その荷物が前に座る乗務員に当たってしまった場合、怪我する恐れもあるのです。もし客室乗務員が重傷を負えば、緊急脱出の際にお客様を誘導できません。ぜひ、お客様ご自身の安全のためにも、お手荷物の収納にご協力いただけないでしょうか」。

チーフパーサーがこのようにお願いすると、例のお客様は不服そうではありましたが、アタッシュケースを手に取り上の収納棚へ収納してくださったのです。

新人の私は「荷物をしまってください」と、ただお願いすることしかできませんでした。

しかしチーフパーサーは「ルールだから」ではなく、あくまでも「お客様ご自身の安全のために」と切り口を変えたことで頑なだった心を開き、ご納得いただけたのではないでしょうか。

「面倒だなあ」の先にあるもの

あのフライト後の反省会では、同乗したCA全員が同じことを願っていました。

それは、お客様が「なぜ、CAがしつこく手荷物収納をお願いするのか」を理解してくださって、次に搭乗された際に「前はいいって言われた」という言葉を使わないでいただけたら、ということです。

飛行機を利用すると、シートベルトの着用や手荷物の収納、電子機器の使用制限と、実にさまざまな規制があって「窮屈だなあ」「面倒だなあ」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、機内で客室乗務員がお願いするすべてのことは、お客様を安全に目的地へお届けするために必要なことなのです。

だからこそ、お客様の安全のために「しつこいCA」にならざるを得ないこともあります。

次回飛行機をご利用になる際に、手荷物収納をお願いされたときには、このコラムのことを思い出していただけたら嬉しいです。


ライター:かくまるめぐみ
大学卒業後、日系航空会社に客室乗務員として入社。国際線をメインに乗務し、世界中を飛び回る。結婚を機に退職し、イタリアへ移住。現在も家族とともにイタリアに在住し、Webライターとして活動。客室乗務員の経験から培った「細やかな心配り」を大切に、コラム記事からSEO記事まで幅広く執筆中。


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