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「明日持って帰る!」が口癖の児童。修了式の日、教室の荷物を全部持って帰らせたと思ったら…発覚した忘れ物に「やってしまった…」

  • 2026.3.20
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元小学校教員で、現在はWebライターをしているみずいろ文具です。

3月の学校は、とにかく“片付け”の季節。

卒業や修了の準備でバタバタする一方で、教室は次の学年に明け渡すため、すっかり空っぽにしなければなりません。

掲示物をはがし、ロッカーの中を整理し、持ち物も少しずつ減らしていく。

年度末の教室は、新しい春へのカウントダウンが始まっています。

最終日に全部持ち帰るのは、至難の業

「最終日に全部持ち帰ればいい」というわけにはいきません。
子どもたちが持ち帰るものは、想像以上に多いからです。

道具箱、絵の具セット、習字道具、鍵盤ハーモニカ、リコーダー、作品ファイル、図工で作った作品…。

だから多くの担任は3月に入ると、「今日はリコーダー」「今日は道具箱」のように持ち物を指定して、計画的に持ち帰らせるようにしていました。
忘れないように黒板にも書いて、帰りの会でも念押し。

とにかく、計画的に持ち帰ることが大切です。

それでも“後回し”が積もる子がいる

ところが、学級には 「明日でいいや」が、なぜか毎日発動してしまう子が必ずいます。

私のクラスにも、マイペースなFくんがいました。
「今日は道具箱だよ」と伝えると、返ってくるのはこうです。

「え~明日持って帰るから~」

悪気があるわけじゃないのでしょう。
たぶん、彼の中では本当に“明日ならできる”と思っていたのでしょう。

でも、明日は明日でまた別の荷物があり、持ち帰るべきものが、その子の周りだけにじわじわ溜まっていきます。

私は何度も声をかけました。
「今日はこれだけ持って帰ろう」
「軽いものからでいいよ」
「袋を持ってきたらラクだよ」

何度言っても、無理やり手に持たせても、「はいは~い」といってスタコラサッサと立ち去ってしまうのです。

最終日、紙袋作戦でなんとか詰め込む

そして迎えた最終日の修了式。

ロッカーを確認すると、やはりFくんのところだけ、まだ荷物が残っています。

作品ファイル、プリント、引き出しの文房具、図工の作品…。

これはもう、今日持って帰らないと、来年度の子たちが困ります。

そこで私は、私物の紙袋を渡して言いました。
「これに入れて、今日は全部持って帰ろう」

同じくらいの重さになるように、なんとか2枚の袋に詰め込みました。
Fくんもさすがに今日持って帰らないわけにはいかないと観念したようです。

紙袋を抱えながら、「あ~あ。多いなぁ…」と小さく笑っていました。

「また4月にね!」のあとに残っていたもの

片付けも終わり、教室も空っぽ。
「1年間、ありがとう!」

そう言って子どもたちを見送り、私もようやく一息つきたかったのですが。

ふと靴箱を見た瞬間、目に入ってしまったのです。
空っぽの靴箱が並ぶ中、ただ一つ、Fくんのところにだけ残された上靴が。

…やってしまった…。

帰りの会であんなに念押ししたのに?
思わず、大きなため息がこぼれました。

申し訳ない電話のあと、照れくさそうな笑顔

放課後、私はFくんの保護者の方に連絡をしました。

「申し訳ありません。上靴が靴箱に残っていて…よろしければ取りに来ていただけますでしょうか」

電話口の保護者の方は、ため息まじりに「またあの子は…紙袋までいただいたようで、すみません…」とおっしゃっていました。

「いえ、こちらこそ…」と言いながら、心の中では“お母さんも大変だろうなぁ”と思っていました。

しばらくして、Fくんがお母さんと一緒に学校へ。

「Fくん、おはよう!」と冗談交じりに声をかけると、少し照れくさそうに笑っていました。

私はその笑顔を見て、やっと肩の力が少し抜けた気がしました。

Fくん親子が去った後、「ああ、今年度もやっと終わった…」と、空っぽの靴箱を見て笑みがこぼれます。

年度末のドタバタを終え、また新しい春へ。

4月からは、靴箱にまた新しい学級の子どもたちの靴が並んでいくのです。



ライター:みずいろ文具

関東の公立小学校で15年間、子どもたちと向き合ってきました。教室での日々を通して感じた喜びや戸惑い、子どもたちから教わったことを、今は言葉にしています。教育現場のリアルや、子どもたちの小さな成長の瞬間を、やさしい視点でお届けします。


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