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「気持ちよく眠れる」毎日お酒を飲んで就寝→いびきを放置し続けた結果…ある日、50代男性を襲った“想定外の悲劇”

  • 2026.3.17
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「今日も仕事を頑張ったんだ、これくらいのご褒美はいいだろ」

50代男性・Bさん(仮名)は、毎晩の晩酌を何よりの楽しみにしていました。お酒を飲んで寝た日は特にいびきがひどく、途中で呼吸が止まることも。見かねた妻が「少し控えたら?」と忠告しても、「気持ちよく眠れるんだよ」と笑って取り合いませんでした。

しかし、ある冬の早朝、Bさんは強い胸の痛みに襲われ救急搬送されます。診断は、急性心筋梗塞。緊急心臓カテーテル治療によって一命は取り留めたものの、今も心臓の発作を気にしながら暮らす日々を送っています。

このケースを踏まえて、医師および睡眠コンサルタントとして数多くの患者さんを診てきた現役医師の松岡が、いびきの注意点を解説します。

いびきは睡眠中の「心臓への過酷な負荷」

仕事終わりの一杯が至福の時間であることも、いびきをかくというだけでは病院に行く気になれないことも、どちらもごく自然な心理です。

しかし、大きないびきと無呼吸がセットの場合、心臓には強烈な負担がかかっています。

【いびきが心臓を追い詰めるメカニズム】

  1. 寝ている間に喉の筋肉が緩み、気道が塞がる
  2. 無理に息を吸おうとし、胸の中が「陰圧」になる
  3. 心臓が外から引っ張られて、血液を送り出すのに余計にエネルギーが必要になる
  4. 酸欠で身体が危機を感じ、睡眠中なのに「交感神経」が活発になる
  5. 心臓は一晩中「全力疾走」状態で、血管にも負荷がかかり続ける

「たまのいびき」と「危険ないびき」の境界線

もちろん、たまにいびきをかいているだけであれば問題ないこともあります。一方で、「体重増加・肥満」、「寝酒」によるいびきは要注意です。

首回りに脂肪がつくと空気の通り道は劇的に狭くなります。体重が10%増えると、睡眠中の無呼吸リスクが「6倍」に跳ね上がるというデータもあるほどです。

また、アルコールは喉の筋肉を緩ませて、気道を塞がりやすくしてしまいます。

無呼吸の放置は、知らず知らずのうちに心臓や血管の寿命を削っているのと同じです。自分の睡眠状態を知ることが、将来の健康を守る最初の分かれ道になります。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

危険ないびきかどうかは、以下の3つのサインからチェックできます。

1.起床時の頭痛とだるさ

休んだはずなのに、一晩中の酸欠と交感神経刺激、血圧上昇による疲労が抜けていない証拠です。

2.昼間の強い眠気

脳が呼吸を再開させるために細かく覚醒を繰り返しており、無自覚のうちに睡眠の質が低下しています。

3.夜間の頻尿(トイレに起きる)

胸の陰圧で引っ張られた心臓が「血液が戻りすぎている」と勘違いし、水分を尿として排出させるホルモンを分泌するため、トイレが近くなります。

まとめ

疲れて帰って一杯だけ晩酌をしたい、いびきなんて大したことはない。そんな思いは誰しもあるものです。Bさんの後悔は決して特別なものではありません。

あの時、睡眠外来を受診していれば、心臓の不安を抱えながら暮らすことは防げたかもしれません。

睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣の改善で改善が見込まれる病気です。少しの減量や寝酒を控えること、横向きで寝る工夫をするだけでも気道が通りやすくなります。

まずは、いびきの状態を確認するところから始めてみましょう。「いびき録音アプリ」などを活用して「10秒以上息が止まった後、息苦しそうに呼吸が再開する」パターンがある場合は要注意です。ぜひ一度医師にご相談ください。

睡眠は本来、全身がゆっくりと休むための大切な時間です。人知れず「全力疾走」している心臓に、本当の休息をあげましょう。


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。