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数年前から“ED”に→「年のせいだから仕方ない」と放置し続け…数年後、50代男性を襲った“想定外の事態”【医師は見た】

  • 2026.3.23
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「最近元気がないが、年のせいだから仕方ない」50代男性・Cさん(仮名)は、数年前からED(勃起不全)を自覚しつつも受診せずにいました。

最近は歩くとふくらはぎが痛むものの「休めば治る」と様子見。妻の勧めにも「ネットで調べたら脊柱管狭窄症らしい」と答えるばかりでした。

しかしある日、足先に激痛が走り、色が真っ青に変わり救急搬送されます。足の血管が詰まり、あわや切断という事態でした。治療で足は残ったものの、少し歩くだけで痛みが走り、大好きなゴルフも楽しめなくなりました。

皆様こんにちは。日々呼吸と循環を守る麻酔科医の松岡です。手術室で足の切断という苦渋の決断を迫られた患者さんを数多く見てきました。今回は「男性の悩みと足の病気の意外な関係」を解説します。

EDは全身の動脈硬化を知らせる「初期の警告」

EDを一人で抱え込むお気持ちはよく分かります。

しかし、これが全身の血管が詰まり始めているサインであることはあまり知られていません。『ED診療ガイドライン』では、心筋梗塞など命に関わる血管の病気が起こる「2〜3年前」に、EDが自覚されることが多いと指摘されています。

【EDから足の病気へと進行するメカニズム】
・加齢や生活習慣で血管が硬く狭くなる(動脈硬化)
・全身で最も細い「陰茎の動脈(1〜2mm)」の血流が最初に滞る
・数年後、より太い「心臓(3〜4mm)」や「足(5〜7mm)」の動脈に及ぶ
・足の血管が狭くなり、筋肉が酸欠を起こし歩行時にふくらはぎが痛む
・完全に血流が途絶えると足先の組織がダメージを受け壊死へ

ネット検索の落とし穴と「危険な足の痛み」の境界線

EDを「年のせい」とし、その後の足の痛みをネットで調べて「脊柱管狭窄症だろう」と安心したというのは、ごく自然な心理とエピソードです。
しかし、歩行中にふくらはぎが痛み、少し休むとまた歩ける症状(間欠性跛行)には、腰の神経圧迫と足の血管の詰まりの2パターンがあります。

見分ける最大のポイントは「休む姿勢」です。
神経の痛みは前かがみになったり座ったりしないと引きません。一方、血管の詰まりは姿勢に関係なく「立ったまま数分休むだけ」で血流が回復し痛みが消えます。Cさんのように「立ち止まるだけで治る」と様子を見ることこそ、血管からのサインを見逃す要因なのです。

特にタバコを吸う方、糖尿病の方は注意が必要です。タバコは血管を傷つけ、糖尿病は神経を鈍らせて痛みを感じにくくします。この2つが重なると血管が詰まるスピードが急激に早まります。
EDや「立ったまま休むと治る痛み」に気づき受診していれば、自分の足で歩く日常を守れたかもしれません。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

危険ないびきかどうかは、以下の3つのサインからチェックできます。

1.ED(勃起不全)の自覚が何年も続いている

足や心臓の太い血管が詰まる2〜3年前に現れる前兆です。

2.歩くとふくらはぎが痛み、数分休むとスッと消える

「立ったまま数分休むだけ」で痛みが引くのが、血管の詰まり特有のサインです。

3.足先が常に冷たく、血色が悪い

安静時でも血流が不足している危険な状態。足の壊死と切断が間近に迫っているサインです。

まとめ

「年齢のせい」としたり、ネット情報で安心してしまうのは誰にでも起こり得ることです。Cさんが受診をためらったことも決して特別ではありません。
しかし、ED診療では心血管系の精密検査が推奨されており、もし受診していれば足の血管の状態なども検査で判明し、必要に応じて内科的治療が始まって、未来は変わっていたはずです。

足の血管が詰まってくると、上肢と下肢の血圧に差が出てきます。簡単な方法として、仰向けに寝た状態で、腕で測定した血圧と足首で測定した血圧に差がないかを確認してみましょう。これは、実際に脚の血管の性状を検査する時の方法と同様の原理です。
足の血管が細くなっていることは、足の血圧が低く出ることで検出できます。

動脈硬化は、生活習慣の改善と適切な治療で進行を食い止められます。まずはEDの症状、足先の冷え、歩いた時の痛みを振り返ってみてください。心当たりがあれば一人で悩まず、泌尿器科や循環器内科にご相談ください。あなたの大切な体を守れるのは、あなた自身の行動にかかっています。


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。