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『突然死を招く人』には“共通点”があった。医師が警鐘を鳴らす、健康診断では見つからない「隠れ高血圧」のサインとは?

  • 2026.3.13
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出典元:phootAC(※画像はイメージです)

「健康診断の血圧は正常だから大丈夫」と安心していませんか?実は、健診では見逃されてしまう「隠れ高血圧(仮面高血圧)」が、心筋梗塞や脳卒中といった突然死の引き金になるケースが少なくありません。

「なぜ病院の検査で問題ないのに、危険な状態になってしまうのか?」「どうすれば自分や家族の隠れたリスクに気づけるのか?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、麻酔科専門医の松岡雄治さんに、隠れ高血圧が突然死を招くメカニズムと、見逃されやすい危険な日常習慣、そして今日からできる具体的な対策について詳しく解説していただきました。

健診の落とし穴?なぜ「隠れ高血圧」は見逃されるのか

---健康診断の血圧測定では正常なのに、普段の血圧が高い「隠れ高血圧」に気づかないまま突然死を招いてしまうことがあると聞きます。なぜ病院の検査で見逃されてしまうのでしょうか?

松岡 雄治さん:

「健康診断で見逃される「隠れ高血圧(仮面高血圧)」が突然死を招く背景には、日常生活の多様なストレスによる自律神経の乱れと、血管への持続的なダメージがあります。

一般的に「病院の方が緊張して血圧が上がるのでは」と思われがちですが、しばしば逆の現象が起きています。健診は室温が快適に保たれた環境で、受付を済ませてゆっくりと落ち着く時間があり、椅子に座った安静な状態で測定するため、日常よりも血圧が低く出やすいのです。

しかし、日常に戻れば状況は一変します。通勤の疲労、職場での人間関係、家事の負担、あるいは寒暖差など、無数の刺激が交感神経を過剰に働かせます。これによりカテコールアミンなどのホルモンが分泌され、血管が強く収縮して血圧が跳ね上がります。さらに睡眠不足や喫煙、塩分過多などが重なると、健診での血圧より普段の血圧の方が高い状態になっていきます。

この状態が続くと、治療介入が遅れて、自覚症状がないまま血管の内側を構成する内皮細胞が傷つき、動脈硬化が静かに進行します。心臓は、高い圧力に負けじと血液を送り出すため肥大し、脆くなった血管の突然の破綻によって、心筋梗塞や脳卒中といった突然死の直接的な引き金となります。健診で正常でも、日々のストレスを抱えている場合は注意が必要です。」

「朝だけ高い」は要注意!悪化を招く危険な習慣

---日常のストレスが原因になるとのことですが、具体的にどのような生活習慣が「隠れ高血圧」を悪化させてしまうのでしょうか?

松岡 雄治さん:

「隠れ高血圧を悪化させる日常の習慣は、血圧を一時的に上げるだけでなく、上がりやすい危険な状態を常態化してしまう点に問題があります。

代表的な要因は、睡眠不足の放置です。本来、睡眠中の血圧は日中より低下しますが、睡眠時間の不足や、いびき・睡眠時無呼吸がある場合は、夜間から早朝にかけて交感神経の緊張が解けません。その結果、朝の血圧が異常に高い場合があります。健診は日中の一時点で行われるため、この「朝だけ高い」状態が見逃されてしまうのです。

もう一つ見過ごせないのが、冬場の入浴環境です。暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室へ移動すると、寒冷刺激で血管が急激に収縮し血圧が跳ね上がります。その後、熱い湯船に浸かると今度は血管が拡張して血圧が急降下します。

このヒートショック現象と呼ばれる血圧の乱高下は、失神や不整脈を誘発し、すでに動脈硬化で傷んでいる血管を破綻させる致命的な要因となります。これらに加えて、過度な飲酒や喫煙、塩分の多い食事といった小さな習慣の積み重ねが、気づかぬうちに血管への負荷を高めていきます。」

「普段の血圧」を見える化する正しい対策法

---自覚症状がないまま進行する「隠れ高血圧」から身を守るために、私たちはどのような対策を始めればよいのでしょうか?

松岡 雄治さん:

「隠れ高血圧を防ぐ最初の一歩は、家庭血圧計を用いて「普段の血圧の見える化」を図ることです。健診時の安静な状態と、ストレスの多い日常とのギャップを埋めるには、客観的な記録が欠かせません。

日本高血圧学会のガイドラインでも、診断と治療において、診察室での血圧よりも家庭血圧の数値を優先することが明確に示されています。

血圧計は手首式ではなく上腕式を選びます。手首式は心臓の高さから位置がずれやすく、細い血管で測るため気温などの影響を受けやすい弱点があります。心臓と同じ高さの太い血管で測定する上腕式を用いることで、より正確な数値を把握できます。

具体的な測定は、朝の起きてからと夜寝る前の1日2回行います。日によって多少変動するため最低でも7日分の平均値を確認し、上の血圧が135mmHg、下の血圧が85mmHg以上の日が続く場合は、健診結果が正常であっても医療機関を受診する目安となります。

次に着手しやすく効果が高いのが、食事と運動の見直しです。「汁物を飲み干さない」「加工食品や漬物を減らす」「腹八分目にする」といったことから始めて、塩分とカロリーの過剰摂取を防ぎます。そのうえで食後10分の軽い歩行を足すと、血圧や血糖値の安定も期待できます。

他に、冬場は脱衣所と浴室を事前に暖め、熱すぎる湯を避けて血圧の乱高下を防ぎます。禁煙は血管保護に直結しますが、自力での達成はとても難しいものです。禁煙外来など医療の力を借りることを躊躇わないのがコツです。」

「家庭での血圧測定」から始める、突然死リスクへの備え

健康診断の「正常」という結果に安心せず、自覚症状のないまま進行する隠れ高血圧のリスクに気づくことの重要性がわかりました。

まずは上腕式の家庭血圧計を用意し、朝晩の血圧を正しく記録して「自分の普段の血圧」を客観的に知ることから始めましょう。食事の塩分を少し減らしたり、冬場のお風呂場を暖めたりといった明日からできる小さな習慣の見直しが、血圧の乱高下を防ぎ、あなたの大切な命を守る大きな一歩に繋がるはずです。


監修者:松岡 雄治
麻酔科専門医。総合病院、大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じ、幅広い周術期管理に従事。現在は急性期病院で麻酔科医として勤務する。日々、美容領域を含む各診療科の手術に携わっている。医師としての知識と経験を活かして医療系ライターとしても活動し、医療・健康・美容分野の記事執筆、医学論文の解説、商品監修、AI技術開発関連プロジェクトへの参加などの実績を有する。睡眠コンサルタント、睡眠検定1級の資格も保有。