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「離れて暮らす母のため…」“毎月5万円”を現金で手渡し→しかし、50代女性を待ち受けていた“想定外の誤算”【お金のプロは見た】

  • 2026.3.15

 

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

 

親の老後が気がかりで、毎月の仕送りを続けている方は少なくないでしょう。50代女性のAさん(仮名)もそのひとりでした。離れて暮らす母親を思い、実家に帰るたびに5万円を現金で手渡ししていたそうです。

親孝行のつもりで続けていたこの習慣が、結果的に大きな損失につながっていたと知ったのは、職場の同僚との何気ない会話がきっかけでした。「別居の親でも扶養に入れられるよ」と聞き、慌てて調べたところ、数年分の扶養控除を取りこぼしていたことに気づいたのです。

別居の親でも扶養控除の対象になり得る

別居している親であっても「生計を一にする」などの要件を満たせば、扶養控除の対象になりえます。扶養控除は課税所得を減らす仕組みなので、適用されれば所得税と住民税の負担が軽くなる可能性があるのです。

さらに、親が年末時点で70歳以上であれば「老人扶養親族」に該当し、一般の扶養親族よりも控除額が大きくなります。同居している場合は、さらに控除額が増える仕組みです。

ただし、親に年金収入があるからといって、すぐに対象外になるとはかぎりません。親の合計所得金額が上限を超えていなければ対象になりえます。収入の目安だけで判断せず、対象年分の基準と親の他の所得の有無をもとに確認してみてください。

ここで重要なのは、要件を満たしていても手続きをしなければ控除は受けられない点です。冒頭の女性のように、知らないまま何年も過ごしてしまうケースは珍しくありません。

「現金手渡し」が証明を難しくする落とし穴

扶養控除の適用にあたっては、生活費や療養費などの送金が継続的に行われている実態が求められます。銀行振込であれば記録が自動的に残るのに対し、現金の手渡しでは証明が難しくなります。

冒頭の女性も、まさにこの「手渡しの罠」にはまっていました。毎月欠かさず5万円を渡していたにもかかわらず、送金の記録が残っていなかったため、過去数年分の扶養控除を証明できなかったそうです。良かれと思っていた手渡しが、結果的に控除の取りこぼしにつながってしまいました。

また、兄弟で親の援助費を出し合っている場合、扶養控除を受けられるのはいずれか1人のみです。一般的には、収入が最も高い人(限界税率が高い人)が適用を受けると節税額が大きくなりやすいです。兄弟間で事前に話し合っておくと、世帯全体での負担を減らせます。

今からできる3つのアクション

すでに確定申告をしていた年分は、原則として法定申告期限から5年以内であれば更正の請求ができることがあります。一方、確定申告義務のない人が税金の還付を受ける場合は、還付申告をその年の翌年1月1日から5年間にわたり行えます。

心当たりがある方は、まず過去分の見直しから始めてみましょう。

年末調整や確定申告、退職といった節目を迎える前に、以下の3つを確認しておくと安心です。

  1. 親の所得の確認
    ⇒扶養控除の要件を満たしているかどうか、親の合計所得金額を把握しておく
  2. 送金方法の切り替え
    ⇒現金手渡しから銀行振込に変えるだけで、送金の記録が残りやすくなる
  3. 過去5年分の申告内容の見直し
    ⇒控除の取りこぼしがないか、改めて確認する

親への仕送りは、家計にとって大きな負担です。だからこそ、使える制度は正しく活用し、手取りを少しでも守る工夫を取り入れてみましょう。


参考:
No.1180 扶養控除(国税庁)
No.2026 確定申告を間違えたとき(国税庁)
No.2030 還付申告(国税庁)

ライター:中野こうき

名古屋市出身。岐阜大学大学院自然科学技術研究科を卒業したあと、2021年にWebライターとして独立。理系ならではの「根拠を大切にする姿勢」と、FP1級取得を通じて培ったお金の知識を組み合わせ、金融・FP分野を中心に100本以上の記事を執筆してきた。「難しいお金の話を、身近に感じてもらえる記事に」をモットーに活動中。