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平屋を購入も「2階がないのに面積2倍」50代夫妻を襲った、見積書での“予想外の落とし穴”【一級建築士は見た】

  • 2026.4.1
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「2階がないのだから、材料も手間も減って安くなると思っていました」

そう語ってくれたのは、老後の暮らしを見据えて平屋を計画されたTさん(50代)夫妻です。

同じ面積の2階建てと比較した際、提示された見積額が予想を上回っており、戸惑いを感じておられました。

平屋は、階段や2階のトイレといった設備を省けるため、面積自体は小さくできる傾向にあります。しかし、家を建てるための「単価」で考えると、別の事情が見えてきます。

基礎と屋根の面積が「2倍」になる理由

家づくりにおいて、最もコストがかかるパーツをご存じでしょうか。それは、建物を支える「基礎」と、雨風をしのぐ「屋根」です。

・基礎の面積:
30坪の家を建てる場合、2階建て(1階15坪・2階15坪)なら基礎は15坪分で済みます。しかし、平屋で30坪を確保しようとすれば、基礎もそのまま30坪分必要になります。

・屋根の面積:
基礎と同様に、平屋は2階建てに比べて屋根の面積も広くなります。

ベタ基礎(床下全体を鉄筋コンクリートで覆う基礎のこと)や屋根の仕上げ材などは、建築費の中でも大きな割合を占めます。これらが2階建ての約2倍必要になることが、平屋の坪単価を押し上げる大きな要因となっているのです。

土地選びと「建ぺい率」の制約

平屋を建てる際、建物本体のコスト以外にも配慮すべき点があります。それが「建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合のこと)」です。

2階建てなら小さな土地でも居住面積を確保できますが、平屋の場合は居住スペースがすべて1階に集中するため、より広い土地が必要になります。

「平屋を建てるために広い土地を買わなければならず、土地代と建築費の両方が膨らんでしまった」というケースも少なくありません。

住宅性能を高めるための工事費だけでなく、土地という資産の持ち方についても、あらかじめシミュレーションしておくことが大切です。

建築士が教える「納得のいく予算配分」

平屋には、坪単価が高くなるという側面がある一方で、2階建てにはない「メンテナンス性の良さ」という大きなメリットもあります。

・足場代の削減:
将来の外壁塗装の際、2階建てのような大規模な足場を組む必要がなく、維持費を抑えられる。

・構造の安定性:
2階がないため自重が軽く、地震の揺れに対しても有利な形状を作りやすい。

大切なのは、「安く建てること」だけを目的にせず、将来のメンテナンス性や、階段のない暮らしが生む「時間のゆとり」まで含めて、トータルで価値を判断することではないでしょうか。

性能と暮らしのバランスを見つめる

Tさん夫妻は最終的に、面積を少しだけ絞りつつ、その分こだわりたい場所に予算を集中させることで、納得のいく平屋を完成させました。

「2階がないから安い」という期待だけで進めるのではなく、基礎や屋根の仕組みを理解した上でプランを立てること。それが、予算破綻を防ぎ、長く愛せる住まいを手に入れるための近道となるはずです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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