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30年前、音楽シーンの頂点に君臨した“最強の2人” 「がんばれ」を言わないエールソング

  • 2026.2.26

1996年。街にはまだ、CDショップから流れる音楽が人々の日常を彩る力を持っていた。凍てつく冬が終わりを告げ、新しい生活への期待と不安が交錯する3月の空気に、あまりにも力強く、そして温かい旋律が響き渡った。

B'z『ミエナイチカラ ーINVISIBLE ONEー』(作詞:稲葉浩志・作曲:松本孝弘)――1996年3月6日発売

この楽曲は、リリースされるやいなや日本中の街角で耳にするようになった。当時のB'zは、名実ともに日本の音楽シーンの頂点に君臨していた。そんな彼らが放った19枚目のシングルは、リスナーの心に深く、静かに、しかし情熱的に突き刺さった。

静寂を切り裂く、青い閃光のようなメロディ

イントロが鳴った瞬間、目の前の景色がパッと開けるような感覚を覚えた人は少なくないはずだ。この曲の魅力は、何といってもその「圧倒的なメロディの良さ」にある。激しいロックのダイナミズムを持ちながら、サビへと向かう高揚感はどこかノスタルジックで、日本人の琴線に触れる歌謡曲的な美しさも内包している。ストレートに響く音作り。それこそが、時代を超えて愛される普遍性を生んだ理由だろう。

松本孝弘による作曲センスは、この時期にひとつの完成形を迎えていたといっても過言ではない。歪んだギターの音色さえもどこか優しく聞こえるのは、旋律そのものに血の通った温もりがあるからだ。一音一音に魂を込めるような音の運びが、聴く者の心を震わせた

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B'z(C)SANKEI

言葉にできない「確信」を歌い上げた稲葉浩志の詩世界

稲葉浩志が綴った言葉たちは、単なる「応援歌」という枠には収まらない深みを持っている。私たちは日々、目に見える数字や結果、他人からの評価に翻弄されがちだ。しかし、この楽曲が描いているのは、そうした表面的なものではなく、もっと深い場所にある「目には見えないつながり」や「自分を支える意志」であるように思う。

「頑張れ」という直接的な表現を多用するのではなく、弱さを受け入れた上で、それでも明日へと踏み出すためのエネルギーを提示する。その姿勢は、当時多感な時期を過ごしていた若者だけでなく、社会という荒波に揉まれる大人たちの心も強く揺さぶった。稲葉のハイトーンボイスが、切なさをはらみながらも突き抜けるように響くとき、聴き手は自分の中にある「見えない力」の存在を再確認することができたのだ。

歌声には、ただ力強いだけでなく、繊細なニュアンスが同居している。Aメロの語りかけるようなトーンから、サビで見せる爆発的な感情の解放。そのコントラストが、楽曲にドラマチックな立体感を与えている。

30年経っても色褪せない、魂の鼓動

リリースから30年という月日が流れた今、音楽の聴き方はCDからストリーミングへと変わり、街の景色も一変した。それでも、ふとした瞬間にこの曲のイントロが流れてくると、あの頃の情熱や、胸の奥に灯った小さな火が蘇ってくる。

私たちは今も、目に見えない多くのものに支えられて生きている。大切な人との約束、自分の中に秘めた誓い、そして苦しい時に背中を押してくれた音楽。それらは決して形としては見えないけれど、何よりも強固な力となって、私たちを未来へと運んでくれる。

『ミエナイチカラ ーINVISIBLE ONEー』は、今この瞬間を懸命に生きるすべての人にとって、「独りじゃない」という事実を突きつけてくれる現役のアンセムなのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。