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50年間、歌舞伎の舞台で格を刻み続けた男。66歳でNHK大河に抜擢→大ブレイクした名優とは

  • 2026.6.11
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2016年2月、シネマ歌舞伎『喜撰/棒しばり』初日舞台挨拶に登壇した坂東彌十郎(C)SANKEI

役者の世界には、若くして頭角を現す人もいれば、長い時間をかけて世に見つかる人もいる。坂東彌十郎は、後者の極みにいる人だ。

ただ、彼を「遅咲き」と呼ぶのは少し違う。どこからか突然現れた老優ではない。歌舞伎の世界で半世紀かけて体に格を刻んできた人が、ようやく広いカメラの前に立った。それだけのことだ。どの画面に出ても、同じ重みがにじむ。その不変の格こそが、坂東彌十郎という俳優の正体だ。

カメラの外で重ねた半世紀

坂東彌十郎の出発点は、歌舞伎の世界にある。初代坂東好太郎の三男である彼は、1973年の初舞台から、およそ50年。歌舞伎の名門・大和屋の一員として、二枚目の立役から憎まれ役、老け役まで、あらゆる役どころを引き受けてきた。長身を生かした堂々たる佇まいは、梨園でもひときわ目を引く。

歌舞伎の立役というのは、台詞の少ない場面でも、ただそこに座っているだけで一座の格を決めてしまう。間の取り方、所作の運び、目線ひとつで場を制する技術を、坂東は半世紀かけて体に染み込ませてきた。映像で広く知られるようになったあとも、舞台の人としての評価は揺らいでいない。長い蓄積は、少しも目減りしていない。

66歳で世に届いた蓄積

意外に思われるかもしれないが、坂東は映像の世界にも長く顔を出してきた。古くは1986年、テレビ朝日系の時代劇『暴れん坊将軍II』に出演している。以降も時代劇を中心に、断続的にカメラの前に立ってきた。ただ、その本数は多くなく、舞台で培った格が広く世に届くことはなかった。

転機は2019年だった。三谷幸喜が脚本・演出を手がけた歌舞伎座の三谷かぶき『月光露針路日本 風雲児たち』に、坂東は出演する。その舞台姿を見た三谷が、自らの映像現場へと誘った。そして2022年、三谷脚本のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、小栗旬が演じる主人公・北条義時の父、北条時政を任される

これは新人の快挙でも、苦労がようやく報われた物語でもない。半世紀かけて舞台で刻んだ格を、目利きの三谷が見抜き、映像へと移し替えた瞬間だった。一家の重しとなる父の存在感は、付け焼き刃では出せない。66歳にして、その蓄積がついに広く世へ届いた。

演じた北条時政は、一筋縄ではいかない古狸のような老人だ。坂東は可笑しみと凄みを同居させ、一族の重しでありながらどこか憎めない人物像を立ち上げた。長く舞台で培ってきた格があったからこそ、この厚みのある老人が画面に立った。

どの画面でも崩れぬ格

格は、時代劇の中だけのものではない。TBS系の日曜劇場『VIVANT』(2023年)では、警視庁公安部の佐野雄太郎を演じた。重要な役でありながら、声を荒げて存在を主張するわけではない。出番は長くなくとも、ただそこにいるだけでその場の空気を統べてしまう。歌舞伎の立役で磨いた「座っているだけで場を決める」力が、現代劇でもそのまま効いている。

2025年のフジテレビ系ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』では、三谷幸喜作品に再び加わった。喜劇の座組のただ中でも、坂東の格は崩れない。三谷との縁は、一度きりのものではなくなっている。どんな媒体に置かれても、まとう重みが消えない。それが、この人の強さだ。

どんな座組でも動かぬ柱

2026年、坂東は立て続けに新たな顔を見せる。NHK連続テレビ小説『風、薫る』では、日本橋で商いを営む瑞穂屋の主人・清水卯三郎を演じ、朝ドラに出演。フジテレビ系ドラマ『銀河の一票』では、黒木華が主演する選挙ドラマで、与党・民政党の幹事長、星野鷹臣に扮する。重鎮の説得力が、ここでも生きる。どんな座組にも、動かぬ柱として呼ばれている。

積み上げた重みが中枢で動き出す

2026年7月17日公開の映画『キングダム 魂の決戦』で、坂東は秦の大将軍・蒙驁を演じる。「白老」と呼ばれ、定石を重んじて秦軍を支える老将だ。半世紀かけて刻んだ格が、そのまま役と重なる。

そしてTBS系の日曜劇場『VIVANT』の続編が、異例の2クール連続放送で帰ってくる。坂東も佐野雄太郎として続投予定だ。舞台で半世紀、映像でこの数年。積み上げてきた格が、いよいよ物語の中枢で動き出す。次にこの重みがどこで効くのか、楽しみでならない。


※記事は執筆時点の情報です

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