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35年前、伝説的グループの最大ヒットは実はこの曲だった 50万枚超を売り上げた疾走の正体

  • 2026.6.10

鳴り出した瞬間に、もう全力で走っている曲がある。ためも、もったいぶった前置きもない。再生した次の瞬間には、聴き手の体ごと前へ引っぱり出されている。疾走の快感だけで、これほど人を高揚させられる曲は、そう多くない。理屈で味わう曲ではなく、体で乗ってしまう曲だ。

TMN(現・TMNETWORK)には名曲が数えきれないほどあるが、聴く者をいちばん遠くまで走らせるのは、まちがいなくこの一曲だ。

TMN『Love Train』(作詞・作曲:小室哲哉)ーー1991年5月22日発売

両A面シングルの表題側として世に出たこの一曲には、ひとつ意外な事実がある。『Get Wild』の鮮烈な記憶で語られがちなこのグループが、全活動を通じて最も多く売りあげたシングルは、ほかでもないこの『Love Train』なのだ。

澄んだ入口の奥で、ギターが歪んで唸っている

この曲を「軽快なポップス」だと思って聴くと、少し足をすくわれる。分厚く歪んだギターと、面を張るように前へ出るスネアの打撃。芯の太いロックが、列車を押し出すように曲を牽引していく。葛城哲哉による澄んだギターのアルペジオと、その奥で唸る轟音。この入口の静けさと本体の激しさの落差が、一度聴いたら忘れられない手ざわりを生む。

落差には理由がある。直前のTMNは、アルバム『RHYTHM RED』でハードロックへ大きく舵を切っていた。その歪みの熱を残したまま、初期TMの覚えやすくポップな手ざわりへ帰ってきた。それがこの曲だ。だから単なる原点回帰ではない。尖った季節をくぐり抜けた体だからこそ鳴らせた、作り直されたポップ。激しさを通過した者にしか出せない、開かれた強さがある。

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1990年8月、TMNへのリニューアル宣言会見より(C)SANKEI

助走なしで、いきなり最高速になる

曲はいきなりサビから飛び出す。「LOVE TRAIN」という言葉が、前置きもなく耳へ飛び込んでくる。最初の一行からもう全開で、その勢いが終わりまで一度も緩まない。窓の外を景色が流れ去るような、抜けていく爽快さがある。

その速度を牽引するのが、宇都宮隆の声だ。この時期の彼には、後年の繊細に包み込む歌い方とは違う、張りつめた野性味がある。歪んだギターと張り合うように、声そのものが前へ前へとつんのめっていく。きれいに整えるより、勢いごと客席へ放り出す。その荒さが、聴く者の体温を一段持ち上げる。

この曲が本当の姿を見せるのは、ライブの場かもしれない。イントロが鳴った瞬間、会場の温度が一段上がる。サビでは、誰からともなく腕が挙がり、頭の上で大きな渦になっていく。見知らぬ者どうしの腕がいっせいに同じ輪を描くとき、客席そのものがひとつの車輪になる。走る曲が、聴き手の体まで巻き込んで回しはじめるのだ。

ライブで鳴り出した瞬間の沸き方がひときわ大きい。出れば沸く。長く追いかけてきた者ほど、この曲のイントロに弱い。

聴き手をまっすぐ運び続ける曲

面白いのは、これほど売れたこの曲が、深く聴き込んだ耳にはときに物足りなく響くことだ。同時収録の『We love the EARTH』のほうへ濃い愛着を寄せる聴き手もいる。難解さや毒で勝負する曲ではないから、通好みには分かりやすすぎると映るのだろう。

だが、その賛否こそ大ヒット曲の宿命であり、勲章でもある。一部を深く刺すのではなく、より多くの人へまっすぐ届く。広く開かれた瞬間に角は丸くなり、その引き換えに、曲は世代の記憶になる。しかしこの曲は、1991年の初夏の空気そのものに、この疾走はなっていた。

累計で50万枚を超える支持を集め、グループ最大のヒットになった。だが数字は結果にすぎない。深く刺すか、広く届くか。この曲は迷わず後者を選び、誰の胸にも入っていける一曲になった。

世の中には、聴き手に何かを問いかける曲がある。意味を読ませ、解釈を促し、立ち止まらせる曲だ。この曲は、その対極にいる。差し出すのは、前へ進む心地よさだけだ。込み入った仕掛けも、隠された主題もない。代わりに、鳴り出した瞬間から最後まで、聴き手をまっすぐ運び続ける。何も要求してこない、その潔さ。だからいつ針を落としても、気分や年齢に関係なく、同じ高さまで連れていってくれる。

理屈で語れる曲ではない。だが、理屈を要らない曲ほど、いちばん長く体に残る。鳴れば、それだけで少し前を向ける。そういう一曲が、確かにここにある。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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