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『日向坂46』“2年ぶり”の開催に歓喜 “1度きり”が恒例になった理由 

  • 2026.2.27

日向坂46が9月5日、6日の2日間にわたって2年ぶりとなる『ひなたフェス2026』を開催する。今年もひなた宮崎県総合運動公園のひなたサンマリンスタジアム宮崎ほかを舞台に、あの景色が再び戻ってくることになった。

振り返れば、『ひなたフェス』は一度きりの大型公演として始まったはずだった。それが今では恒例イベントとして根づきつつある。ツアーとは別の軸で、同じ土地に戻りながら育っていく催しは、アイドルの現場でも珍しい。なぜ、『ひなたフェス』は毎回これだけ熱を生み、定着していったのか。宮崎という場所との結びつき、会場全体をフェスとして味わわせる仕掛け、そして日向坂46の楽曲が引き上げる空気まで、あらためて整理してみたい。

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主演映画の続編決定に喜ぶ日向坂46の四期生 (C)SANKEI

ライブだけじゃない、会場全体がフェスになる仕掛け

日向坂46と宮崎のつながりは、2019年の冠番組『日向坂で会いましょう』(テレビ東京系)での宮崎ロケ企画までさかのぼる。3週にわたって放送された「もっと目指せ!始球式 日向坂野球部の奇蹟 in 宮崎キャンプ」では、メンバーが現地で汗をかき、笑い、宮崎の空気の中でのびのび過ごす姿が映し出された。いわば、その時点で“宮崎=日向坂46”という印象が視聴者の中に芽生え、関係性の下地ができていたと言える。

決め手になったのは、『ひなたフェス』が最初から「誰かが用意した地方イベント」ではなかったことだ。2019年の宮崎ロケで、日向坂46はすでに土地の空気を吸い込みながら、肩の力が抜けた表情で現地に溶け込んでいた。そこで育った親近感が、あとから企画に“理由”を与えたのではなく、先に関係性が立ち上がっていたのである。

その流れを決定づけたのが、2024年2月のレギュラー番組での佐々木美玲のプレゼンだった。番組内で宮崎でのライブフェス開催を提案し、「口に出すことは大切」と語ったこの一言は、ただの思いつきを宣言に変えた。つまり、宮崎との縁があったからフェスをやったのではない。縁が育っていた場所を、メンバー自身の言葉で「ここでやりたい」と選び直した。その段取りが入ったことで、『ひなたフェス』は単発の企画ではなく、次につながる約束として受け止められるようになった。

そこに重なったのが、日本のひなたと呼ばれる宮崎のイメージと、日向坂というグループ名が持つ明るさだ。土地の温度感とグループのカラーが自然に噛み合ったことで、宮崎は単なる開催地ではなく、日向坂46の物語の一部として受け取られていった。日向市駅が期間限定で「日向坂46駅」となったこともその象徴だろう。観光地として消費するのではなく、宮崎が日向坂46を迎え入れ、日向坂46がその土地への思いを返していく。そのやりとりが積み重なってきたからこそ、『ひなたフェス』も一度きりで終わらず、続いていくイベントとして形になった。

『ひなたフェス』の面白さは、屋外ライブの一発の高揚感だけで終わらないところにある。会場には飲食ブースや展示、アトラクションをまとめた無料ゾーンのひなたエキスポが用意され、地元食材を使ったフェス飯や物販まで含めて、歩きながら楽しめる導線が組まれている。しかも、ただ出店が並ぶだけではない。メンバーが公園内をめぐるスペシャルパレードがあり、『日向坂で会いましょう』を軸にしたエリアも設けられる。宮崎グルメを堪能できるフードコートエリアまで含めて、会場のあちこちに目的地が点在しているから、会場に着いた瞬間から帰るまでが、そのままイベントになる。開演までの待ち時間も、ただ時間を潰すものではない。食べて、見て、買って、またステージへ戻る。その行き来が自然に生まれ、会場の空気を少しずつ温めていく。ステージ上の盛り上がりだけに頼らず、会場全体で熱を育てていくのが、『ひなたフェス』の強さだ。

今年も宮崎へ 『ひなたフェス』が連れてくる夏の高揚感

その設計を強く支えているのが、日向坂46の楽曲とフェスの相性だ。たとえば「キュン」や「ドレミソラシド」は、言葉より先に体が弾むような推進力があり、屋外の開放感と相性がいい。日差しと風があるだけで、曲の明るさが現実の風景に染み込んでいく感覚が生まれる。「ソンナコトナイヨ」や「君しか勝たん」のように、会場の気持ちをひとつに集めるタイプの曲も強い。フェスは初見の人も混ざる空間だが、日向坂46の表題曲には、振付やフレーズの力で空気をつかむ瞬間が用意されている。緻密な背景を説明しなくても、まず一緒に笑って跳べる。入口が広いからこそ、フェスのように初見の観客も混ざる場で強さを発揮するのだ。

メンバーが参加するパレードも行われ、浴衣姿で盆踊り風にアレンジした「日向坂」のひなたフェス版を披露するなど、会場には夏祭りの空気がはっきり流れていた。大量の水を使った放水演出もあり、屋外ならではの開放感がそのまま盛り上がりにつながる。浴衣でのパフォーマンスは、ライブに“夏のイベント”としての色をくっきりつけた。さらに地元学生とのコラボパレードが加わることで、フェスが日向坂46だけのものではなく、宮崎と一緒に作られている催しとして感じられるようになる。こうした仕掛けは、ライブの見どころとして印象に残るだけではない。ステージの外側にも「いまこの場を楽しむ理由」を増やし、フェスとしての楽しさを会場全体に広げていく。遠征してきたファンだけのイベントにせず、地元の人がふらっと立ち寄っても楽しめる入口を用意する。その積み重ねが、宮崎と『ひなたフェス』の距離を近づけ、毎年続いていく催しとして根づかせている。

地元との連携も、『ひなたフェス』が恒例として続いていく理由のひとつだ。会場づくりでは地元の高校生や大学生、飲食店とも手を組み、環境対策やSDGsへの配慮も含めて運営を整えてきた。人を集めて終わりではなく、準備の段階から地域が関わる。だからこそ、開催が終わったあとも「また来年も」という空気が残る。

宮崎県側も、前回のフェスで得た感動と元気が今も心に刻まれているとして歓迎の言葉を寄せ、受け入れ環境の整備に力を注いだ。2024年の開催では2日間で約4万人を動員し、九州全体で約43億円の経済波及効果があったという。ここで注目したいのは、数字の大きさだけではない。ライブ以外のエリアを入場無料にしたことで、県外からの遠征組だけでなく、地元の人も気軽に足を運べる場になった。その結果、観光イベントとしての熱気と、地域の祭りとしての賑わいが同じ会場で並走する景色が生まれた。

今年は、新加入の五期生にとって初めての『ひなたフェス』になる。宮崎という同じ風景の中に新しい層が加わることで、グループの見え方もステージの熱も少しずつ変わっていくはずだ。その変化を目撃できるのは、2026年ならではの見どころと言える。

しかも今回は、遠方から足を運ぶおひさまのために、JTBから全122通りの多彩なツアープランが用意されることも発表された。飛行機やフェリー、宿泊を組み合わせた選択肢を広げることで、行きたい気持ちを現実の予定に変えていく。最寄り駅のICカード対応や駐車場の増設など、前回の課題を踏まえた改善も進み、運営面もパワーアップした形で整えられたのは嬉しい。宮崎に行くまでのハードルが下がり、会場に着いてからの動きもスムーズになる。その積み重ねが、今年の『ひなたフェス』をさらに見やすく、参加しやすいものにしていくはずだ。

開催決定の生配信には、MCの佐藤満春と金村美玖、高橋未来虹ら7名が出演し、最新情報がファンに届けられた。公演内容の詳細はこれからだが、ライブだけに閉じない会場設計と、日向坂46の楽曲が持つ開放感が噛み合えば、今年も『ひなたフェス』らしい熱気が会場全体に広がっていくだろう。宮崎の夏が、またひとつ楽しみになる。


※記事は執筆時点の情報です

ライター:川崎龍也
大学卒業後にフリーランスとして独立。現在はアイドル雑誌を中心に、取材・インタビュー/コラム執筆を主軸に活動している。主な執筆媒体は『BOMB』『MARQUEE』『EX大衆』『音楽ナタリー』『RealSound』など。
X(旧Twitter):@ryuya_s04