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レストランに“常連客”が来店→明らかに様子がおかしく…「何かございましたか?」と声をかけると?その後、発覚した“事実”とは

  • 2026.2.7
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出典元:phootAC(※画像はイメージです)

サービス業において、最も恐ろしいのは「慣れ」による慢心です。長年通ってくださるリピーターのお客様は、私たちのサービスを熟知しており、それゆえに「小さな違和感」を敏感に察知されます。以前、私がフロア責任者を務めるレストランで、その「甘え」が引き起こした案内漏れのエピソードをご紹介します。一歩間違えれば、長年の信頼関係を一夜で崩壊させていたかもしれない危機的状況。そこで私が下した判断と、そこから得た教訓を振り返ります。

なぜ「暗黙のルール」は破綻したのか

その日は週末。

旅館内のレストランも満席の活気に溢れていました。

そんな中、長年通ってくださっている常連のA様(仮名)がレストラン会場へご入場されました。

当店では、A様のようなリピーターには必ず追加料理の「本日のおすすめ」を個別に提案するという暗黙のルールがありました。しかし、その日は混雑への焦りから、新人スタッフがメニューのみをお渡しし、追加料理の説明を省いたままオーダーを取ってしまったのです。

私が異変に気付いたのは、メイン料理を提供した時でした。A様の表情は硬く、視線を合わせようとされません。

「何かございましたか?」と問いかけた私に対し、A様は静かに仰いました。

「今日はおすすめがないのかと思ったよ。他の席には説明しているのに、うちには必要ないと思ったのかい?」お客様が感じられたのは「案内の不足」ではなく、組織から「軽視されたのでは」という深い寂しさだったのではと感じました。

私は即座に、単なる「言葉だけの謝罪」ではA様の心に届かないと判断しました。ここで必要なのは、損得の補填ではなく「A様を大切に想っている」という事実の再提示です。

まず、言い訳を一切排除し、ご案内漏れがあったことに対し、心からの謝罪をお伝えしました。

単なる「無料サービス」は逆効果になると考え、A様が以前「一番好きだ」と仰っていた食材を思い出し、シェフに直談判。お口直しとして、メニューにはないA様だけの「特製の一皿」を急遽用意しました。「お好みは忘れておりません」という意思表示です。

さらに、お帰りの際には、本日の不手際を宿全体で共有し、次回のご来店時には 同じミスを繰り返さない決意を料飲の責任者である私から改めてお伝えしました。

「個人の気配り」から「組織の仕組み」へ

この経験を経て、私はレストランのオペレーションを根本から見直しました。

この一件で得た最大の教訓は、「暗黙のルールは、忙しさに負ける」ということです。個人の裁量や意識に頼ったサービスは、プロの仕事とは呼べません。私は直ちに以下のオペレーション改革を実施しました。

顧客リストに「ご案内必須事項」を明文化し、昼礼でのロールプレイングをルーチン化しました。

数週間後、再訪してくださったA様は、「あの対応を見て、やっぱりここは信頼できると思ったよ」と笑顔を見せてくださいました。一度失いかけた信頼を繋ぎ止めるのは、言葉ではなく「誠実な行動」と「二度と繰り返さないための仕組み」なのです。

真の信頼は、ミスの後にこそ築かれる

ミスをゼロにすることは不可能かもしれません。しかし、ミスをした後の振る舞いには、その組織の真価が凝縮されます。お客様の「寂しさ」に誰よりも早く気づき、逃げずに向き合うこと。その積み重ねこそが、本当の意味での「常連様」を作るのだと確信しています。


ライター:na_r
私は旅館スタッフとして、日々お客様をお迎えしております。
華やかなおもてなしの裏側で、実は最も現場の力が試されるのが予期せぬトラブルへの対応です。私はこれまで、予約のダブルブッキングや設備の突発的な故障、無理難題への向き合いなど、数多くの修羅場を経験してきました。
こうした経験から得た「クレームを感動に変えるリカバリー術」や、「お客様の心理を紐解くコミュニケーション」をテーマに、現場のリアルな空気感を交えた執筆を得意としています。読者が明日から使える「折れない心の作り方」や「実践的な対応策」を、現場目線でお届けします


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