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『とりあえず金を買えば安心』は間違いだった。売る時に税金で持っていかれる…“意外な落とし穴”とは?【お金のプロが解説】

  • 2026.2.11
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

金が高騰し、売却を検討している人も多いのではないでしょうか。しかし、いざ売ってみると「思ったより手取りが少ない」「税金が想像以上に高かった」と驚くケースが少なくありません。

なぜ金には、このような「落とし穴」があるのでしょうか? 株式の売却益のように、税率があらかじめ決まっているものとは違うのでしょうか?

本記事では、マネーシップス代表の石坂貴史さんに、金の売却にかかる税金の仕組み、多くの人が陥りがちな誤解、そして「損をしないための具体的な対策」について、詳しく解説していただきます。

金を売ると税金が重くなるのはなぜ? 株式との違いと計算の落とし穴

---金が高騰している今、売却を検討している人も多いと思います。しかし、実際に売ってみると「思ったより税金が高い」と感じる人が少なくありません。なぜ、金の売却益には想定以上の税金がかかるのでしょうか? 株式の売却益と何が違うのでしょうか?

石坂貴史さん:

「金を売ったときに税金が想定より重くなる理由は、金の利益が「譲渡所得」として扱われるためです。譲渡所得は、株の売却益のように税率があらかじめ決まっている仕組みではありません。給与や年金など、他の収入と合算したうえで税額が決まるため、収入が多い人ほど税率が高くなり、売却益の多くが税金として差し引かれることがあります。

たとえば、会社員の方が金を売却して利益が出た場合、その利益は給与と合算されます。すでに一定の収入がある人ほど税率が高くなるため、「金だけを見るとそれほど儲かっていない」と感じていても、税引き後の手取りが想像より少なくなることがあります。

計算方法が分かりにくい点も、負担を大きく感じやすい理由の一つです。譲渡所得は、売った金額から、購入時の金額と売却にかかった費用を差し引いて計算します。ただし、購入時の金額が分からない場合は注意が必要です。この場合、税務上は「売却額の5%を購入費用とする」という扱いになります。

つまり、過去に購入した金を300万円で売却したものの、購入時の記録が残っていなかった場合、購入費用は15万円として計算されます。本来はもっと高い金額で買っていたとしても、それは考慮されません。その結果、利益が実態より大きく見積もられ、課税額が増えてしまいます。

さらに、金地金の譲渡所得には、年間50万円の特別控除があります。この控除は、金の売却益だけで判断されるものではなく、同じ年に発生した他の総合課税の譲渡所得と合計した利益に対して使われます。

たとえば、金の売却益が40万円であっても、別の資産の売却で20万円の利益が出ていれば、合計は60万円となり、50万円を超えた10万円が課税対象になります。「金は少額だから大丈夫」と考えていると、思わぬ申告が必要になることがあります。

もう一つ大切なのが保有期間です。金を5年を超えて保有してから売ると、利益のうち課税対象になる金額は半分になります。反対に、5年以内に売却した場合は、この軽減はありません。

同じ利益が出た場合でも、5年以内の売却では全額が課税対象になるのに対して、5年を超えてから売れば、課税されるのはその半分です。価格が上がったからと短期間で売ってしまうと、利益は大きく見えても、実際に手元に残る金額が少なくなることがあります。これらの仕組みを知らずに売却すると、「思ったより税金がかかった」という結果になりやすいのです。」

「金は税金に有利」は誤解? 専門家が指摘する3つの間違い

---「安全資産」のイメージが強い金ですが、税金面でも優遇されていると誤解している人もいるようです。よくある誤解や、特に注意すべき点を教えていただけますか?

石坂貴史さん:

「金は「安全資産」「実物資産」として語られることが多く、その印象から税金面でも有利だと思われがちです。しかし、金そのものに特別な税の優遇があるわけではありません。この点を誤解したまま売却すると、結果として不利な扱いになることがあります。

よくある誤解の一つが、「金の売却益はそれほど課税されない」という考え方です。繰り返しになりますが、金の売却益は総合課税の対象となり、給与や年金などと合算して税額が決まります。そのため、収入が多い人ほど税率が高くなります。

会社員として安定した給与を得ている人が金を売却して利益を出した場合、その利益は給与に上乗せされます。金の利益だけを見ると小さく感じていても、合算後の税率が高くなり、「思っていたより手元に残らなかった」と感じるケースは少なくありません。

また、「少額なら申告しなくても問題ない」という誤解もよく見られます。これも先ほどと重なる点ですが、譲渡所得には年間50万円の特別控除があります。ただし、これは売却額ではなく、利益に対して使われる控除です。さらに、同じ年に発生した他の総合課税の譲渡所得と合計して判断されます。

たとえば、年内に何回かに分けて金を売り、1回あたりの利益は小さかったとしても、合計すると50万円を超えることがあります。「1回ごとに見れば少額だから大丈夫」と考えていると、確定申告が必要だったことに後から気付く場合があります。

相続や贈与で取得した金についても、誤解が生じやすい点です。前提として押さえておきたい点ですが、親から引き継いだ金を売却した場合、利益の計算は相続時の価格ではなく、原則として親が購入したときの価格を基準に行われます。

親がかなり昔に安い価格で購入していた金を相続し、その後に高値で売却した場合、想像以上に大きな利益が出た扱いになります。その結果、「相続しただけなのに、なぜこんなに課税されるのか」と感じるかもしれません。金の「安心そう」という印象と、税金の確認をつい後回しにしてしまう点が、大きな落とし穴といえるでしょう。」

「税金で損したくない」金売却で手取りを増やす3つの戦略

---金投資を検討している、または既に保有している方が、売却時の税負担を最小限に抑えるために今すぐ実践できる具体的な対策を教えていただけますでしょうか。

石坂貴史さん:

「税金を抑えるために、まず意識すべきなのは「記録を残すこと」です。購入時の明細や領収書を保管し、いつ、いくらで買った金なのか説明できる状態にしておくことで、不利な計算を避けることができます。特に、長く持つ予定の金ほど、記録の有無が将来の税額に大きく影響します。

同じ金額で金を売却した場合でも、購入時の記録が残っていれば、実際の購入価格を差し引けます。一方で、記録がない場合は、売却額の一部しか購入費用として認められず、結果として、課税される利益が大きくなることがあります。記録を残すかどうかで、税額に差が出ることは珍しくありません。

次に考えたいのが売却の時期です。保有期間が5年を超えるかどうかで、課税の扱いが大きく変わります。価格だけを見て判断するのではなく、「購入から何年経っているか」を確認し、可能であれば5年を超えてから売ることで、税引き後の手取りを増やしやすくなります。

たとえば、価格が上昇している局面でも、購入からまだ数年しか経っていない場合、あえて売却を急がず、5年を超える時期まで待つことで、同じ利益でも課税対象額を抑えられるケースがあります。売却を1年遅らせるだけで、手取りが変わることもあります。

さらに、売却する年の収入状況も重要です。収入が多い年に売ると税率が上がりやすいため、退職後や収入が減る見込みの年に売却することで、全体の税負担を抑えられる場合があります。

現役で働いている間は給与収入が高く、税率も高くなりがちですが、退職後に収入が減った年に金を売却すれば、同じ譲渡益でも適用される税率が低くなる可能性があります。金は売却の自由度が高い資産です。その特性を活かして、価格と税金の両面から判断することが、結果として、損を防ぐための「売却戦略」につながります。」

金の売却は「税金」がカギ! 賢い選択で手取りを最大化

金は「安全資産」というイメージが強い一方で、税金面では注意が必要な資産であることが、石坂さんの解説で改めて分かりました。

株の売却益とは異なり、給与など他の収入と合算される「総合課税」であること、購入記録がないと不利な計算になること、年間50万円の特別控除の適用範囲、そして保有期間が5年を超えるかどうかで税額が大きく変わることなど、知っておくべきポイントが数多くあります。

「記録を残すこと」「売却時期をよく考えること」「売却する年の収入状況を考慮すること」という3つの対策は、今日から意識できる具体的な行動です。これらの知識を活用し、単に金の価格変動だけでなく、税金という視点も加味した「売却戦略」を立てることが、結果として手元に残る金額を最大化し、後悔のない金売却を実現するためのカギとなるでしょう。


監修者:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、2級FP技能士、AFP、マネーシップス代表。累計1,200件以上のご相談、金融関連の記事制作、校正・監修を手掛けています。「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」の6つの分野が専門。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。