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弁当屋のピーク時に→客「今すぐ100個作ってくれ!」予約なしで飛び込んできて…その後、店長が下した“斜め上の決断”とは

  • 2026.1.26
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

お弁当屋の店長として、数えきれないほどの「昼時の修羅場」を経験してきました。11時半を過ぎれば厨房は戦場です。電話は鳴り止まず、フライヤーはフル稼働。スタッフ全員が限界ギリギリで動いているその瞬間。

もし、「今すぐ弁当を100個作れ!」という無理難題が飛び込んできたとしたら。あなたならどうしますか?

多くの場合、現場の混乱を避けるために「お断り」するのが正解かもしれません。しかし、プロの現場では「NO」と言う前にやるべきことがあります。

今回は、現場がパニックに陥るようなトラブルに対し、既存のお客様を守りつつ、目の前のピンチも救う「第3の選択肢の提示」について、私の実体験をお話しします。

修羅場の厨房…昼のピークタイムに訪れた「無理難題」

11時55分。店内の行列がピークに達したその時、作業着姿の男性が血相を変えて店に飛び込んできました。

「12時半からの会議で使う弁当が、手配ミスで届かない。どこも受けてくれないんだ。今すぐ100個作ってくれ!」

時計を見れば、猶予はわずか35分。通常、100個の注文は数日前の予約案件です。今から100個を受ければ、すでに並んでいるお客様への提供が遅れ、店はパンクしかねません。スタッフたちは一瞬手を止め、「絶対に無理だ」という目で私を見つめました。店内には他のお客様の視線も集まり、異様な緊張感が走ります。

男性の切羽詰まった表情と、戦場のような厨房。店長としての「判断」が問われる瞬間でした。

「全断り」でも「全受け」でもない、第3の選択肢

まず大前提として、昼のピーク直前にアポなしで100個を注文するのは、店舗運営を阻害する行為。通常であれば、すでに並んでくださっている常連様や、適正なルールを守ってくださる他のお客様への提供を最優先すべきです。本来であれば「申し訳ありませんが、無理です」とお断りしている場面です。

しかしこの時、私は「全断り(0か)」か「全受け(100か)」かの二択を捨て、「条件付きの部分受け(交渉)」というリカバリー策を選択しました。

「申し訳ありません、100個すべてを一度にお渡しするのは不可能です」 男性の顔が曇りかけたその瞬間、私は続けました。

「ですが、今から20分で50個。さらに15分で残りの50個なら全力で間に合わせます。その代わり、メニューは『唐揚げ弁当』一択に絞らせていただけますか?」

この判断の背景には、2つの思考プロセスがありました。

  • 心理的負債の解消:男性は怒鳴っていましたが、それは「助けてほしい」という悲鳴です。「全数同時」は無理でも、会議の開始に「半数」あれば場は繋げます。ここで救えば、強固な信頼関係が築ける確信がありました。
  • 現場のリソース最適化:通常メニューでは厨房が崩壊します。しかし、メニューを「唐揚げ」だけに限定すれば、揚げる・盛るというラインを単純化でき、新人のスタッフでも迷わず機械的に動けます。幸い、ピーク時でフライヤーはフル稼働中でした。

これは、既存客への影響を最小限に抑えつつ、不可能を可能にするための「構造的思考」による決断でした。

奇跡を「まぐれ」で終わらせない!トラブルの仕組み化

スタッフに目配せで指示を飛ばします。既存の注文を捌くラインと、特急の唐揚げラインを瞬時に分担。厨房は熱気に包まれました。

結果、12時28分。合計100個を完納。 男性は時計を見て信じられないという表情で「本当にやってくれたのか……」と、深く頭を下げて感謝してくれました。

この件を経て、私はスタッフに対し、突発的な大量注文に備えた「限定メニューによる緊急オペレーション」をマニュアル化しました。

トラブルを「あの時は頑張った」という属人的な根性論で終わらせず、仕組み(構造)に落とし込むことで、店としての対応力は飛躍的に向上したのです。

「できません」の壁を越えるために

ビジネスにおいて、ミスや不測の事態はつきものです。 しかし、そこで「マニュアル通りできません」と切り捨てるだけでなく、プロとして「どうすれば一部でも解決できるか(代替案)」を提示することの大切さを学びました。

  • 納期を分ける(分納)
  • 仕様を絞る(メニュー限定)

その一歩踏み込んだ「交渉」こそが、お客様との強固な信頼関係を築く鍵となります。 現場の危機をチャンスに変えるのは、あなたの「一歩引いた構造思考」と、それを実行する「突破力」なのです。


※本記事は、筆者が過去に勤務していた店舗での実体験です。

ライター:松田 正太郎(まつだ しょうたろう)

​鹿児島県を拠点に活動するフリーライター兼、個人事業主。前職ではお弁当屋の店長として9年間勤務。延べ10万人以上の接客に携わり、現場でのクレーム対応やスタッフマネジメントの最前線を経験しました。「行動ファースト・構造思考」を信条とし、現場のリアルな空気感を言語化しながら、読者が明日から実践できる解決策を提示する執筆を得意としています。現在は自営業を営む傍ら、AIツールを駆使した業務効率化やビジネス設計を行い、圧倒的なスピード感と納期遵守、そしてプロとしての徹底した現場視点を持った記事をお届けします。


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