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『新品の鞄を床に置きたくない』機内のルールを伝えても一向に譲らない乗客…元CAが取った行動とは

  • 2026.3.18
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。大手航空会社で10年間、CAとして勤務しておりましたSAKURAです。

航空機内には、安全上、守らなければならないルールが存在します。

特に、悪気はないものの、お客様が大切にされている「こだわり」が、安全上の「決まり」と衝突したときこそ、

思わぬピンチの場面でアイデアを生み出すことも、CAの技術の一つなのです。

今回は、10年ほど前に私が遭遇したある実例から、マニュアルにはない方法でお客様の頑なな心を解きほぐした「機転」についてお話しします。

「説得」よりも、プロとしての「納得への導き方」が、解決への糸口となったその実体験とは――

「汚れたら困る」真っ白な鞄

10年ほど前、ビジネスパーソンの多い国内線での出来事でした。

満席の機内に、春らしい真っ白なスーツに身を包み、同色の鞄を合わせた女性が搭乗されました。

座席へ向かう際、スーツや鞄に汚れがつかないよう慎重に扱われているご様子から、お荷物を大変大切にされていることが伝わってきました。

早めにアプローチしようと思い、「お手荷物、お手伝いしましょうか?」と声を掛けました。

しかし返ってきたのは「え?大丈夫よ。隣の席に置きますから」というお答えでした。

隣席のお客様も間もなく搭乗されるはずですので、お荷物を置くことはできません。

安全上、手荷物は前の座席の下か上の棚に収納しなければなりません

私はそのことを説明しましたが、「新品なの。汚れたら困るから手に持っておく」と譲りません。

「ルール」と、お客様の「こだわり」

その二つが真っ向から衝突しているさなか、隣席のお客様も搭乗され、出発時刻が刻一刻と迫っていました。

マニュアルにはない「ある物」の活用

お客様に悪気はなく、ただ「大切なものを守りたい」のだと感じていた私は、知恵を絞り「ある物」を活用することにしたのです。

キッチンへ戻り、各座席に備え付けられているエチケット袋の予備を引っ張り出すと、素早く手で開いてテープで貼り合わせ、小さなシートを完成させました。

女性の元へ戻り、「手作りで申し訳ございませんが、素敵な鞄が汚れないよう、この上に置いていただけますか?」と提案しました。

女性は驚きながらも、すぐに「あら、ありがとう」と、先ほどまでの頑なさが嘘のように嬉しそうに微笑んでくださいました。

そして、シートを敷き、その上に鞄を置いてくださいました。

どうすれば「安全」と、お客様の「大切なもの」を両立できるだろうか。

今振り返ると驚かれるかもしれませんが、出発が迫る切迫した状況下での苦肉の策でした。

「こだわり」を受け入れる

一時期、鞄を入れるための袋を用意していた航空会社もありましたが、当時はまだ一般的なサービスではありませんでした。

マニュアル通りの「正論」だけでお客様を説得しようとしても、心の距離は開くばかりです。

大切なのは、お客様の気持ちに寄り添い、その「こだわり」を否定せず、まずは受け入れること。

その上で「解決策」を考えることが、プロに求められる仕事なのだと改めて実感した出来事でした。

解決への近道とは

皆さんも「相手が思うように動いてくれなくて困る」という経験があるかと思います。

強引に解決しようとするのではなく、相手が自ら納得し、動いてくれるよう導く方法を考えることこそが、実は解決への一番の近道なのです。

そんな「柔軟な向き合い方」が、機内に限らず、あらゆる場面でのコミュニケーションをより豊かにしてくれるのだと確信しています。


ライター:SAKURA * 心を読む元国際線CA

日系大手航空会社にて10年間、客室乗務員(CA)として勤務。国内線・国際線を経験し、多種多様なお客様と接する中で「感情を読み解く力」を磨く。客室責任者としてVIP対応や後輩育成に携わる傍ら、社内の人材教育やグループ会社での業務にも携わり、多角的な視点から接客のあり方を見つめてきた。

現在は、その鋭い洞察力を活かし、言葉だけでない、「心理的・物理的アプローチによるクレーム回避術」を発信するライターとして活動中。国内線での細やかな気配りから国際線での難しい状況判断まで、現場での実体験に基づいた「心に届く接客のヒント」を言語化し、接客業にとどまらず、人と人とがよりよい関係を築けるサポートをしている。


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