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神経科学的な視点から見た、筋力トレーニングの真実。「基礎筋力アップは、脳機能を向上させる鍵」

  • 2026.1.2

これまで多くの専門家たちが、ウェイトリフティングなどのパワースポーツが女性の骨や代謝などにメリットがあると長年啓蒙してきたこともあり、現在では幅広い年齢層の女性の間で”一つのカルチャー”として認知されるまでに至った「筋トレ」。しかし、更年期前後の女性が筋力トレーニングを行う場合、「脚力」を強化するトレーニングを集中的に取り入れるべきだとニコラ医学博士はいう。

「なぜなら、強い下半身は脳の老化を遅らせる可能性があるからです」

2015年、博士は300人以上の双子の姉妹を対象に、マシンに座って脚でペダルこぐ運動テストを実施し基礎脚力を測定・解析を行った。その結果、脳と脚力には深い関連性があり、脚力が強いほど約10年後も記憶力や処理速度のテストの成績や認知力が優れている、という答えを導き出した。

これに続き潜在的な脳の違いの要因をより明確に特定するため、健康状態や生活習慣、そして遺伝や幼少期の環境がほぼ同じで脚力が違う一卵性双生児を対象に同様のテストを行って基礎脚力を解析し、その12年後に脳のMRI検査を行った。すると、基礎脚力の強い双生児の脳には認知機能と深く関わる灰白質が多いことや、同時に実施された認知機能テスト中に(海馬など)特定の脳領域が顕著に活性化したことが判明。つまり、脚力が強いほど回復力があり、脳のエイジグ状態が良好であることがわかったのだ。

さらに、2018年に1,500人以上の高齢者を対象に行われた研究では、脚力が強い人ほど問題解決能力や注意力などの能力を評価する「実行機能テスト」で優秀な成績を収めており、他の複数の研究でも脚力の強さと歩行速度、そして脳の間には密な相関関係があることがわかった。

逆に言うと、「歩行速度が遅い、あるいは低下していることは、特定の認知機能の低下や認知症リスクの増加と少なからず関係している」ということ。では、女性の脳の活性化につながる脚力アップのための具体的なトレーニング方法とはどういうものなのだろうか?

脚力の強化が脳機能の向上につながる理由

「研究では、いくつかの運動の組み合わせが脚力アップに効果的であることがわかっています。そして脚力を高めるには、収縮速度が速く瞬発力や大きな力を発揮する時に使う筋肉「タイプ2(速筋繊維)」を強化するのが最も効果的と言えるでしょう」

ウェイトリフティングや短距離走など、”スプリンター型”の爆発的な瞬発力に必要な筋線維であるこのタイプ2は、加齢とともに最も早く衰える部分だ。主にブドウ糖をエネルギー源とし、それを乳酸に分解して脳にエネルギーを送るため、これを強化すると更年期でエネルギー生成効率が低下しがちな女性の脳に大きなメリットをもたらす。そして、この筋肉を鍛えることで生成される乳酸は「脳のバックアップシステムとして機能し、思考と記憶に使うエネルギーを脳に供給するタンクとなる」と博士は言う。

「脚力を鍛えるには、筋肉を繰り返し収縮させる運動が一番効果的です。運動により、筋肉から様々なホルモンの総称”マイオカイン”が分泌され、血流に乗って全身を巡ります。このマイオカインの中には、脳まで到達して脳の中枢が必要とする栄養素だけを送り込む血液脳関門を通過し、認知プロセスの活性化を促すものがあります。それが、脳由来神経栄養要因子(BDNF:Brain-Derived Neurotrophic Factor)です。このBDNFが運動によって増えることで海馬を育てたり、新たな脳細胞の形成を促すなど、認知症の元となる加齢による脳の記憶領域の萎縮をある程度抑制することが期待されているのです」

脚の筋力トレーニングは脳に多くのメリットをもたらし、血流増加を促し、脳に十分な酸素を供給 すると同時に脳に悪影響を与えると言われる全身の炎症も抑制する可能性がある。そのため、脚力強化し続けることで転倒や認知症のリスクも低下させ、いつまでも”動ける身体”を手に入れることへとつながる、と博士。実際、アルツハイマー病患者の約3分の2が女性であることを考えると、脚力アップは女性にとってかなり重要なものだということがわかるが、具体的にどのような”メニュー”が効果的なのだろうか?

脚力強化で脳機能をサポート

「実際の脚力強化トレーニングで最も重要なのが、下肢の主要な筋肉群を全て鍛えるワークアウトメニューです。筋力トレーニング初心者は、まずスクワットとデッドリフト(=床に置いたバーベルを全身の筋肉を使って引き上げ、直立姿勢まで持ち上げるウエイトトレーニング)の基本動作を学ぶことから始めると良いでしょう。フォームをしっかり確認したり、正しい方法で行うことが重要です」

まずは8~12回繰り返し持ち上げられる重量から始めて、徐々に負荷をかけていくのが正しいやり方だが、ここで注意すべき点はいきなり重量を上げてはならない、ということ。例えば今日10kgを持ち上げたなら、その10%(1kg)以内の重量を段階的に増やしていき、自分が最大8回持ち上げられる重量の限界(ベースライン)を探ることが大切だという。

「それから、6回持ち上げてもうダメだと思っても、最低”あと2回”一踏ん張りすること。限界から数回程度持ち上げられるくらいの負荷をかけることが、筋肉の成長に最も効果的なのです」

こうしてじんわり筋肉に負荷をかけたら、次はスクワット、ジャンプ、ジャンピングランジといった筋肉の伸張・短縮サイクルを利用し、全身をバネのように動かすトレーニング「プライオメトリックス」を取り入れれば、筋力を劇的に高めることが可能だと博士は続ける。

「ジャンプでも、スクワットでも、まず最初は1つか2つのエクササイズを選び、最小回数とセット数から始めてください。そして週に数回このメニューをこなし、息切れがしなくなったり、しんどさを感じなくなったり、体が軽く感じられるようになったら、徐々に回数を増やしていきましょう。プライオメトリックスのような高強度の反復運動は、やればやるほど体が瞬時に力を出し切ることを覚え、肉体的にも精神的にもさらなるパワーアップが期待でき、ひいては脳の認知機能の向上につながります。脚の筋肉は、人体の中で最も大きい”臓器”。脚力が向上したと言うことは、しっかり正しいトレーニングができていることの証でもありますから、実感しやすいと思います」

FROM SELF.COM

Text: Erica Sloan Translation: Masami Yokoyama

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