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結婚・出産してもしなくても「地獄」は変わらない? 不確実な未来への不安に備える2つの視点【サトマイ】

  • 2026.3.9

結婚、出産、子育てとキャリアの両立。仕事では合理的に判断できるのに、将来のライフイベントの話になると、急に心が揺らいでしまう女性は少なくないだろう。

自分だけではどうにもならない「不確実な将来」への不安は、どうすれば解消できるのだろうか。

今回話を伺ったのは、さまざまなエビデンスをもとに“不安との向き合い方”を示した書籍『あっという間にお金はなくなるから』(KADOKAWA)の著者、“統計のお姉さん”ことサトマイさん。

「正解がなく、不確実な問い」をどう言語化し、どう選び取るのか。まだ見ぬライフイベントへの不安と、どう付き合えばいいのかを聞いた。

佐藤 舞(サトマイ)さん

データ分析・活用コンサルタント、ビジネス統計学の専門家。データの活用を通して意思決定コストを削減し、組織力をあげることを得意とする。確率・統計を使って世の中の謎を解く「リアル謎解き」を体験するYouTubeチャンネル『謎解き統計学 | サトマイ』が人気を博している。 X

不安の正体は「将来起こるかもしれない脅威」

編集部:20代~30代の女性にとって、結婚や出産など、自分ではコントロールしきれない将来のライフイベントへの不安は大きいものです。

サトマイさん:その気持ちは、とても自然だと思います。
 
そもそも「不安」とは、心理学的には「将来起こるかもしれない、はっきりしない脅威に対する恐れ」だと言われています。「何か悪いことが起こるかもしれない」という曖昧な脅威。それが不安の正体です。
 
そしてライフイベントの場合は、そこに「葛藤」も加わります。

編集部:「葛藤」ですか?

サトマイさん:例えば「結婚したい気持ちもあるけれど、キャリアが止まるのは怖い」とか、「子どもはほしいけれど、自由な時間が減るのは嫌だ」とか。
 
どちらも自分の本音だからこそ、決めきれない。その気持ちの揺れが不安につながります。
 
しかもライフイベントは、仕事と違って自分だけでは決めきれない要素が多い。相手がいることですし、出産なら年齢の制約もある。だからこそ、より不確実性が高く感じられるのです。

編集部:では、その不確実な脅威や葛藤に、現時点でどう向き合えばいいのでしょうか。

サトマイさん:書籍でも触れていますが、不安に飲み込まれないためには二つの視点が必要です。一つは「脅威の見える化」、もう一つは「安全基地の確保」です。
 
「脅威の見える化」は、その言葉通り、不安を言語化し、可視化すること。不安があるということは、それだけ真剣に考えている証拠でもあります。消そうとするよりも、「私は何に迷っているのか」を具体的に書き出すほうが建設的です。
 
そして「安全基地の確保」とは、「怖いけれど大丈夫」と思える心の拠り所や、物理的な備えを複数持っておくこと。支えが一つではなく複数ある状態をつくることが、不安を過度に膨らませない土台になります。

不安に飲み込まれないための「見える化」「安全基地」

編集部:一つ目の「脅威の見える化」について、ライフイベントへの不安を考えるとき、具体的にどんなことをすればいいのでしょうか。

サトマイさん:「プロコン分析」がおすすめです。プロはプロス(メリット)、コンはコンス(デメリット)。つまり、良い面と悪い面を一度すべて書き出すんです。
 
例えば「結婚が不安」と言っても、本当に怖いのは何なのか。収入が減ることなのか、キャリアが止まることなのか、パートナーシップがうまくいかないことなのか。体調や働き方も含めて、自分がコントロールできることとできないことは何か。
 
具体的に分けていくと、「対策できる事実」と「受け入れるしかない事実」が見えてきます。

編集部:対策できるものと、できないものを切り分ける。

サトマイさん:そうです。例えば収入が不安なら、共働きのかたちをどうするか、スキルをどう維持するかを考えられます。でも「相手がどう変わるか」まではコントロールできませんよね。
 
コントロールできないことを延々と考えても、不安は小さくなりません。まずは、自分で動かせる部分に意識を戻すことが大切です。

編集部:整理するときは、客観的なデータや数字に基づいた方がいいんですか?

サトマイさん:お金の話であれば、ある程度は逆算できますが、ライフイベントは統計データを並べても「自分に当てはまるか」は別問題です。むしろ混乱することもあるので、主観で構いません。
 
メリットもデメリットも、どちらも本音。その両方を並べたうえで、「私は何を優先したいのか」を自分で選ぶプロセスが大事だと思います。

編集部:それでも最終的に、リスクがゼロになるわけではないですよね…?

サトマイさん:ゼロにはなりません。でも「最悪どうなったら困るのか」を具体的に考えると、意外と致命傷ではないことも多いんです。
 
例えば「離婚したらどうしよう」という不安があるなら、そのとき自分はどんなスキルや収入源を持っていたいかを考える。それは恐怖をあおるためではなく、備えを具体化するためです。
 
曖昧なまま怖がるより、一度きちんと最悪を想定するほうが、人は落ち着きます。不安は曖昧だからこそ、大きく感じるもの。輪郭を与えると、扱えるようになります。

編集部:なるほど。もう一つのキーワード、「安全基地の確保」についてはどうでしょうか。

サトマイさん:安全基地とは、「ここに戻れば大丈夫」と思える場所や人のことです。多くの人はそれをパートナーや家族に求めますが、私は一つに限定しないほうがいいと思っています。
 
仕事のコミュニティー、友人関係、趣味の仲間。人間関係の領域を広げるイメージですね。複数の安全基地があれば、どこかが揺らいでも自分が崩れにくくなります。

編集部:ライフイベントへの不安も、支えが複数あれば軽くなる。

サトマイさん:さらに言えば、「何があっても生きていける」と思える自分のスキルや貯金、健康な身体なども安全基地の一つです。
 
もし将来うまくいかないことがあっても、「この失敗以外にも自分を支えるものがある」と思えれば、選択の怖さは和らぐもの。
 
結婚や出産は、人生のすべてを預ける選択ではありません。あくまで人生の一部。そう考えられたとき、不安は少し小さくなります。

不安は消さず“連れていく”という選択

編集部:ただこうやって整理しても、不安そのものがゼロになるわけではありませんよね……。

サトマイさん:心理学では、不安を排除しようとするほど、逆に強くなると言われています。
 
だから私は、不安を無理になくそうとするのではなく、「連れて歩く」という感覚を持つことをおすすめしています。

編集部:連れて歩く?

サトマイさん:不安に名前をつけるんです。「ダイスケ」でも「マーキュリー」でも、何でもいい(笑)。
 
例えば「また不安が出てきたな」と思ったら、「あ、マーキュリーが来たな」と認識する。100%回避できないものとして、ポケットに入れて一緒に歩くイメージです。

編集部:不安を「自分そのもの」にしないことですね。

サトマイさん:そうです。不安は“湧いてくるもの”であって、“自分”ではありません。
 
名前をつけると、不安と少し距離が取れて、「また来たね」と客観視できる。不安をゼロにしようとするよりも、扱い方を覚えたほうがずっと楽です。

編集部:なるほど。サトマイさん自身は、20代前半で「独立」という不確定な将来に向き合ってきましたが、当時はどのように不安を乗り越えていましたか。

サトマイさん:私は「マシな地獄を選び続ける」というタイプです。
 
当時は会社員を続けるのも地獄(収入は安定しているけれど、才能を使い切れない)。起業するのも地獄(収入は不安定で、営業で傷つく)。どちらが“楽か”ではなく、どちらが“マシな地獄か”で選んできました。

編集部:マシな地獄…!

サトマイさん:何を選んでも大変なことはあります。私の独立の話に限らず、将来結婚しても、しなくても。仕事を頑張っても、子育てを頑張っても。人生に「完全に楽な選択」はありません。

編集部:たしかに。そう言われてみると人生の選択って「どちらをとっても地獄」な側面がありますよね。

サトマイさん:そうだと思います。だからこそ、「どちらなら自分が納得できるか」で選ぶ。覚悟を持って自分で決めたと思えれば、不安があっても前に進めますから。

編集部:不安がまったくない道なんてないからこそ、あとは自分が納得できるかですね。

サトマイさん:はい。不安があるのは、本気で生きようとしている証拠です。なくすことを目指すのではなく、扱い方を身に付ける。その方が、長い人生では強いと思いますよ。

取材・文/大室倫子

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