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「今日は駅員いるんですね」無人駅で“抜き打ち改札”。不正乗車した客の「悪びれない一言」に絶句

  • 2026.1.19
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。
今日は、私が駅員時代に経験した「不正乗車への対応」をご紹介します。限られたリソースで正しい運賃を収受しようとする駅員たちのある1日をご覧ください。

不正乗車の多い無人駅

私が最初に勤務していた駅には、ある観光地へ直通する路線が通っていました。この路線は私が配属されていた駅以外はすべて無人駅です。そのためなのか、不正乗車が多いと聞いていました。安いきっぷで乗ってそのまま降りてしまうほか、無人駅から乗る場合は何も買わずに乗車する方もいるそうです。

有人駅にするなり自動改札機を置くなりすれば不正乗車を減らせるかもしれませんが、どちらにもコストがかかります。詳しくは知りませんが、有人駅にするなどの対策で得られる収入とそのためのコストなどを天秤にかけ、無人駅での運用を会社として選択したのでしょう。

とはいえ、だからといって正規の運賃を支払わない方を野放しにしているわけではありません。私の会社では、特に予告なく駅員が無人駅へ行き、お客さまからきっぷを回収する業務を時おり行っていました。

抜き打ちきっぷ回収!

お客さまがちょうどのお金を持っていなかった場合に備えてお釣り用の現金を用意し、列車で観光地の最寄り駅まで移動します。上りも下りも30分に1本くらいしかこないような駅なので、先輩たちは「退屈でイヤだ」と言っていましたが、私はのんびり仕事ができて好きでした。

この観光地はデートスポットでもあり、私が経験することのなかった思い出を作ろうとする若者たちも多く訪れます。私の経験上、不思議なことに、恋人同士とみられるお二人は、そろって正しいきっぷをお持ちか、あるいは残念ながらお二人ともお持ちでない、というケースが多かったように思います。

正しいきっぷを持っていないからといって、すぐさま不正乗車扱いするわけではありません。あくまで「なんらかの理由できっぷを買えなかったのだろう」「なにか買い間違えた事情があったのかもしれない」と考えて、正規の運賃との差額をいただきます。

支払いより言い分が先

駅が違えば料金表も異なるので、差額の計算にも普段の駅より手間がかかります。小さな無人駅には、正しいきっぷを持っていないお客さまで行列ができてしまいました。

「〇〇駅からは500円ですね。このきっぷは初乗りの100円分なので、差額400円お願いします」

「いや、買い間違えたんですよ」
「買い間違えたなら免除」というルールでもないのに、誰に聞かれるでもなくそう言います。

「買ったがどこかになくした」「列車がもう来ていたので飛び乗った」など、レパートリーは多様です。

たまに「券売機にお札が詰まった」など本当に買えない事情もあるので、完全に聞かないわけにもいきません。このときは一度運賃をいただき、その後お客さまの申告通りにお札詰まりが見つかれば返金します。

お釣りが足りない!

下車駅で運賃を支払うことが想定外だったのか、下車駅での支払いが想定外だったのかもしれませんが、数百円の運賃を高額紙幣で支払おうとするお客さまも多くいらっしゃいました。

一応、ある程度のお釣りには対応できるように1,000円札や硬貨を持ってきてはいますが、通常は無人駅なので両替できるような金庫はありません。100円玉や10円玉がものすごい勢いで減っていきます。

「ご案内です。ただいま100円と10円が不足しています。お客さまのご協力をお願いいたします!」
支払い待ちの行列を整理する先輩が声を上げました。果たして、どれだけのお客さまの耳に届いていたのでしょうか。この日はなんとか、ギリギリ最後まで対応することができました。

運賃は「駅員がいれば払う」ものなのか?

無人駅に自動改札機を設置できない理由には、コスト面のほかに「故障時のリスク」もあるでしょう。もし券詰まりなどで自動改札機が止まってしまったら、有人駅なら駅員がすぐに対応できます。ところが無人駅の場合は近隣の有人駅から駅員が向かうことになり、到着するまでは誰も改札を通れなくなってしまいます。そのため、物理的に閉じるタイプの自動改札機は置きにくいのではないでしょうか。

鉄道会社がお客さまからいただく運賃は「列車でお客さまを送り届ける対価」であり「改札口の通行料」ではありません。設備上は自由に通れるからといって正しいきっぷを買わずに列車に乗り、下車駅で運賃が足りないとわかっているのに素通りしてはいけないのはこのためです。

無人駅の抜き打ち改札をしていて、印象的だったお客さまの言葉があります。買い忘れのため、申告通りに隣の駅から初乗り分だけいただいたときのことです。

「ここ、きょうは駅員いるんですね」

その真意は、私にはわかりません。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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