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平屋ブームに乗っかったら「逃げ場がない…」30代夫婦を襲った"構造的な大誤算"【一級建築士は見た】

  • 2026.3.17
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「階段がない平屋なら、子どもも安心だし老後もラク。もうこれしかないと思ったんです」

そう話してくれたのは、平屋ブームをきっかけに家づくりを始めたGさん(30代)夫婦です。

ワンフロアで完結する暮らしやすさ、家事動線の短さ、家族の気配が近い安心感。平屋の魅力は十分に分かっているつもりでした。

ところが土地探しを進めるうちに、頭から離れなくなったのが「水害」のこと。平屋は逃げ場がないのでは?という不安にぶつかり、“理想のはずの家”が一気に心配事の中心になってしまいました。

「2階がない」ことが、水害では弱点になりうる

水害時のリスクは、建物が壊れることだけではありません。実際に困るのは、浸水後の生活が立ち行かなくなることです。

平屋は生活機能がすべて1階に集まるため、浸水すると寝る・食べる・電気を使うといった最低限の暮らしが一気に止まりやすい構造です。

2階建てなら、1階が浸水しても2階に避難して一時的に生活を維持できる可能性があります。しかし一般的な平屋は“垂直避難”の選択肢がそもそもありません。この点が、平屋を検討する人ほど不安になりやすい理由です。

ハザードマップの「色」だけで判断するとズレる

水害の相談で多いのが、「ハザードマップが薄い色だから大丈夫ですよね?」というものです。

もちろんハザードマップの確認は必須ですが、注意したいのは前提条件です。浸水の想定は「特定の降雨」「河川条件」などのシミュレーションであり、現実の降雨や排水状況によって実際の被害とズレることがあります。

さらに、地図上で安全に見えても、敷地の前面道路が低くて冠水しやすい、近くに水路がある、周辺の開発で流れ込みやすい、といった“局所要因”で体感リスクが上がることもあります。

つまり、色だけで安心するのも、逆に色が濃いだけで即アウトと決めるのも、どちらも大誤算になりやすいのです。

不安を消す鍵は「土地」と「床の高さ」…ここが盲点

平屋で水害への不安を小さくするには、建物の工夫より先に、土地の読みが重要です。特に盲点になりやすいのが次の2点です。

・敷地の“微高低差”:
周辺より数十cm高いだけでも、雨水の集まり方が変わることがあります。

・床の高さ(基礎の立ち上がり):
床を地盤からどれだけ上げるかで、軽微な浸水への耐性が変わります。

「平屋はコストを抑えたいから、基礎は普通でいい」と考えがちですが、水害が気になる立地では、床の高さは安心感に直結します。ここを詰めずに間取りや設備から決めてしまうと、後から対策しようとしても選択肢が狭くなります。

「水害が不安な平屋」の現実的な備え

水害リスクをゼロにはできませんが、“不安を現実的に減らす”ことはできます。平屋を諦める前に、次の視点で整理してみてください。

1.候補地のハザードを複数で見る
洪水だけでなく、内水(下水・排水のあふれ)、土砂災害も確認します。水害の性質で対策が変わるからです。

2.敷地と道路の高さ関係を現地で確認する
雨の日・雨の翌日に見に行くと、排水のクセが分かります。「道路が川になる」場所は要注意です。

3.床を上げる・設備を上げる発想を持つ
床の高さの確保、給湯器やコンセント位置など、浸水時に致命傷になりやすい設備は“上へ”が基本です。

4.避難計画を家づくりの一部にする
平屋は垂直避難ができない分、早めの避難判断が重要です。避難先、避難経路、車移動の可否、家族連絡のルールまで決めておくと不安は軽くなります。

平屋は、暮らしやすさが大きな魅力です。一方で、水害に対しては「逃げ場がない」という構造上の不安がつきまといます。だからこそ、間取りの前に土地と高さを読み、建物では床と設備を守る設計を取り入れ、最後は避難計画まで含めて整える。

これが「平屋にしたのに不安が消えない」という大誤算を避ける、現実的な解決策になります。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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