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「強く叩けば身体が壊れる…」餅を詰まらせた患者。極限のプレッシャー下、看護師が震えた“究極の選択”

  • 2026.1.19
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。現役看護師ライターのこてゆきです。

世間がお祝いムードに包まれる正月。病院もまた、穏やかな年明けを願う空気に包まれます。しかし、私たち看護師は知っています。その静寂こそが、嵐の前の静けさであることを。

今回は、精神的な不調と身体的な衰弱という、心身ともに複雑なケアを要する患者さんの急変対応を通じて感じた…「命を預かる重圧」のリアルをお話しします。

平和な病棟が、瞬時に「戦場」へ

Aさんは、長く心の不調を抱えながら療養されており、加えて重い身体疾患の影響で、体力も大きく低下していました。普段は穏やかな方ですが、認知機能の低下により、時折思いもよらない行動をとることがありました。

事件が起きたのは、正月の行事食が提供された時です。私たちは、餅がもたらす危険性を熟知し、Aさんには提供されないよう細心の注意を払っていました。しかし、どれだけ対策を講じても、予測できない事態は起こりえます。その日も、私たちの想像を超える形で、Aさんは他の方の餅を口にしてしまったのです

「Aさんが詰まらせた!」

同僚の声に反応し駆けつけると、患者さんの表情は明らかに変化していました。

平和だった病棟の空気は、一瞬で凍りつきました。

極限のプレッシャー下での「判断」

私たちはすぐさま救急対応に入りました。吸引器の準備、背部叩打。しかし、私の頭の片隅には、常に「身体的に非常に脆くなっている状態」という事実が重くのしかかっていました。

無理な姿勢や強すぎる衝撃を与えれば、衰弱した彼の身体は壊れてしまうかもしれない。けれど、今この餅を取り除かなければ、命そのものが危険にさらされる。

「無理な処置が命取りになる」という恐怖と、「今やらなければ」という使命感。

その極限のプレッシャーの中、スタッフは一言も発さず、視線だけで役割を分担し、命を繋ぎ止めるためのベストな処置を続けました。

意思疎通の壁を越えた「執念」

迅速な対応により、幸いにも餅の摘出には成功しました。しかし、本当の戦いはそこからでした。

呼吸は戻ったものの、何が起きたか理解できず、窒息の恐怖からパニックに陥るAさん。暴れようとする彼の細い手を、私は全力で、けれど壊さないように優しく握りしめました。

「Aさん、大丈夫ですよ。終わりましたよ。私がここにいます」

精神的な不安を抱える方の場合、こうしたパニック時に言葉だけで安心を届けるのは容易ではありません。

しかし、その時私は、言葉を超えた何かで彼と繋がろうとしていました。必死に声をかけ、手を握り続けるその感触だけが、彼を現実へと引き戻す唯一の命綱だと信じて声をかけ続けます。

精神科病棟における「身体管理」の宿命

処置を終え、ようやく落ち着きを取り戻して眠りについたAさんの寝顔を見つめながら、私は吐き出すような安堵とともに、深い重圧を再認識しました。

精神科病棟において、精神症状のケアだけでなく、こうした深刻な身体合併症を管理することの難しさは想像を絶します。患者さんが自分の苦しさを正確に伝えられないからこそ、私たちは人一倍の観察力と、決断力が求められるのです。

正月早々に突きつけられた命の重み。それは、どんなに平穏な時であっても、私たちは常に「誰かの人生の最後の砦」であることを、静かに、そして強く教えてくれました。



ライター:精神科病院で6年勤務。現在は訪問看護師として高齢の方から小児の医療に従事。精神科で身につけたコミュニケーション力で、患者さんとその家族への説明や指導が得意。看護師としてのモットーは「その人に寄り添ったケアを」。


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