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築50年団地を500万円で購入→リノベ計画が頓挫し…30代夫婦が失った140万円の誤算

  • 2026.3.17
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

家を購入する際、築年数の古い団地を安く手に入れ、内装をおしゃれにリノベーションして暮らすという選択をする方もいます。価格が手頃なため、リノベーション次第で理想の住まいを作れると考える人も少なくありません。

しかし、実際の現場では少し違う現実を見ることがあります。専有部分であれば自由にリノベーションできると思って購入したものの、管理規約によって工事内容が制限され、希望していた間取りが実現できないケースです。

今日は、築50年の団地を500万円で購入した30代夫婦の事例をご紹介します。理想の住まいを作るために始めたリノベーション計画を、管理規約によって大きく変更せざるを得なくなったエピソードです。

500万円団地で理想のリノベができるはずだった

昔からお世話になっている大家さんの娘さん、Aさん夫婦の話です。

Aさん夫婦は、家賃を払い続けるよりも安く住宅を購入し、自分たちの好みにリノベーションして住みたいと考えていました。そこで数年前、築50年で、約60平米の団地を500万円で購入。リノベーション費用は約800万円を想定していました。総額は約1,300万円。

新築マンションと比べると大幅に安く、理想の住まいが実現できると考えていました。

そこで設計事務所に依頼し、フルスケルトン(内装をすべて解体し、間取りから作り直すリノベーション)の計画を進めました。

奥さまが特にこだわっていたのはキッチンの配置です。キッチンを窓側へ移動し、リビングと一体化した広いLDKにする計画でした。

主な希望は次のとおりです。

  • 窓側にキッチンを移動
  • リビングと一体のLDK
  • 回遊できるキッチン動線
  • 大きなダイニングテーブルを配置

いわゆる団地リノベーションで人気の間取りです。ところが、この計画は思わぬ理由で進められなくなります。

管理規約で「キッチン移設は不可」と言われた

工事前の確認として、管理組合へリノベーションの図面を提出したときのことです。管理会社の担当者が図面を確認し、キッチンの位置を見てこう説明しました。

「キッチンの移設は難しい可能性があります」

Aさんは驚き、専有部分なら自由に変更できるのではないかと質問しました。

しかし団地の場合、給排水管(キッチンや浴室の水を流す配管)が建物全体でつながっているため、水回りを大きく移動できないケースが多くあります。配管の位置や傾きの関係で、設備の移設が制限されるためです。

管理規約では、次のような制限がありました。

  • キッチンの大幅な移動は不可
  • 浴室やトイレも基本的に既存位置から変更できない
  • 排水勾配(排水管の傾き)が確保できない場所への設置は不可

この説明を受け、窓側へキッチンを移動する計画は実現できないことがわかりました。理想としていたLDKの間取りは、この時点で大きく見直す必要が出てしまったのです。

床材や窓も自由ではなかった

問題はキッチンだけではありませんでした。打ち合わせを進める中で、さらにいくつもの制限があることがわかりました。

奥さまが希望していたのは無垢フローリング。

しかしこの団地では、階下への生活音を防ぐため遮音等級(音の伝わりにくさの基準)が定められています。そのため、床材には次のような制限がありました。

  • 指定された遮音フローリングのみ使用可能
  • 無垢フローリングは基本的に使用不可

さらに、共用部分に関わる設備についても制限がありました。

  • 窓サッシは共用部分のため個別交換は不可
  • 玄関ドアのデザイン変更は不可
  • 共用部分に接する壁の構造変更は不可

つまり、専有部分であっても自由に変更できるわけではありません。奥さまは落胆した様子でした。

理想の間取りは消え、費用だけ増えた

管理規約の制限がわかったことで、設計は大幅にやり直しになりました。すでに設計事務所へ支払っていた図面作成費用は約40万円です。設計変更による返金はなく、この費用はそのまま負担になりました。

さらに設備の配置を変更したことで工事内容も変わり、リノベーション費用も増えていきました。

当初の想定は次のとおりです。

  • 物件価格:約500万円
  • リノベーション費用:約800万円
  • 合計:約1,300万円

しかし設計のやり直しや仕様変更により、追加費用が発生しました。

  • 再設計費用:約40万円
  • 仕様変更による追加費用:約100万円

その結果、総投資額は約1,440万円。想定より約140万円の増加です。

さらに、奥さまが希望していた「回遊できるLDKの間取り」は断念することに。完成した住まいは、一般的な団地に近い間取りになりました。

団地は安くても「自由設計」とは限らない

団地は価格が比較的安いため、購入してリノベーションを前提に検討する人も少なくありません。しかし、団地だからといって自由に間取りを変えられるとは限らないのです。

マンションや団地には管理規約があり、工事内容に制限が設けられていることがあります。リノベーションを前提に購入する場合は価格だけで判断せず、次の点を事前に確認しておくことが大切です。

  • 水回り(キッチン・浴室・トイレ)の移動が可能か
  • 床材の遮音規定があるか
  • 窓や玄関ドアなど共用部分の変更が可能か

これらの条件を購入前に確認していれば、今回のように計画の大幅な変更を避けられた可能性があります。団地のリノベーションを検討する際は、専有部分だから自由に改装できると思い込まないことが重要です。

建物ごとに管理規約があり、長年の運用によって決められたルールが存在します。まずはその内容を確認したうえで、リノベーションの計画を立てることが大切です。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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