1. トップ
  2. 「きっぷの売上金がマイナスに」締め切り直前に青ざめた…。コロナ禍の駅員を襲った“想定外の誤算”

「きっぷの売上金がマイナスに」締め切り直前に青ざめた…。コロナ禍の駅員を襲った“想定外の誤算”

  • 2026.1.18
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。
今日は、私が駅員時代に経験した「思わぬ誤算」をご紹介します。きっぷの変更にかかる手数料についても解説しているので、ぜひ旅行の計画に活用してみてください。

振り返っても大変だったコロナ禍

2020年。新型コロナウイルス感染症の流行が日本でも一気に拡大し、鉄道会社も対応に追われました。県境をまたぐ移動が制限されたり、Go To トラベルキャンペーンがスタートしたりと、日ごとに状況は変わっていきます。

長年にわたって猛威を振るったコロナウイルスでしたがなんとか終息し、徐々にコロナ前の景色が駅にも戻ってきました。主要駅などでは、2時間以上待ち続ける窓口も復活です。「それはそれでどうなんだ」と思わなくもないですが、見えない恐怖と隣り合わせだったあの頃よりは、やはりこちらのほうがいいでしょう。

コロナ禍では感染拡大を防ぐのを第一に、経費節減のためにさまざまな工夫もしていました。窓口の規模縮小や徹底した節電・節水などです。売り上げが見込めないのなら経費を切り詰めようという作戦でした。そのようなある日、閑散とした窓口である出来事が起こります。

緊急宣言を理由に行き先変更

「このきっぷの行き先を変えてほしいんですが」

そのお客さまが持っていたきっぷは、前日に緊急事態宣言が発表された隣の県へ向かうものでした。コロナ禍では特例として、感染防止を理由とした無手数料の払い戻し対応もしていましたが、このお客さまは県境をまたがない近くの駅への変更をご希望でした。

変更であればコロナ禍の特例はなく、通常通りです。持っているきっぷの運賃と新しいきっぷの運賃を比較し、新しい方が高ければ差額をいただき、安ければ差額を返金します。今回はかなり距離が短くなり、大幅な返金となりました。

「これじゃ、きょうの売り上げはほとんどないだろうな…」

このような世相なのだから仕方ない、と感じました。払い戻しと違い、変更による返金は窓口の売り上げから差し引かれます。返金した額と同額のきっぷを売って、ようやく売り上げゼロになるのです。

ガラガラのカウンター

この駅には4つの販売カウンターがあるのですが、コロナ禍ではそのうち2つの営業時間を短縮していました。私がこの時担当していたのもその対象で、午後3時には残りのカウンターにあとを任せて窓口を閉じてしまいます。

このとき、すでに正午を過ぎていました。「返金分を取り戻す程度の売り上げはあるだろう」という甘い見立ては、徐々に「あれ、これマズいか?」という不安に変わっていきます。お客さまが一向に来ないのです。

カウンターの場所も不利に働きました。4つあるカウンターのうち、私がいたのは入口から見て左端。大抵のお客さまは正面のカウンターへ向かいます。時間が進むにつれ、不安は諦めへと変わっていきました。

駅員人生一度限りのマイナス締め切り

午後3時。ほとんどお客さまの応対をしないまま、窓口を締め切る時間を迎えました。販売機の履歴を見ても、数えられる程度の応対しかしていません。返金した額の方が多いのは明らかです。

通常は売上金を当務駅長に渡すのですが、きょうはその売上金がありません。売上金がないどころか、変更による返金でマイナスになるのは、私が駅員として勤務してきて初めてのことで、後にも先にもこの一度きりでした。

この売上金マイナス事件ですが、もし私が元のきっぷをコロナ対策の特例として無手数料で払い戻し、新たにきっぷを買っていただく案内をしていれば発生しませんでした。払い戻しの窓口は別にあり、払戻金は売上金から差し引かれないためです。そう案内しなかったのは、「払い戻し窓口に行ってから、また来てください」とご案内するのも二度手間になると判断したためです。

きっぷの変更手数料は?

きっぷの変更について、差額のみを受け取ったり返金したりすると説明しましたが

「おや、変更手数料はかからないのかな?」

と疑問に感じた方もいるのではないでしょうか。

鉄道会社やサービスによっては異なる場合がありますが、私が勤めていた会社では、原則として乗車券や特急券などの変更に手数料はかかりません。その代わり、変更できるのは一度きりです。もし再度変更したくなったら、手数料をかけてきっぷを払い戻し、新しく買う必要があります。

無観客での開催となってしまったオリンピックから数年。2025年大阪で開催された万博には、鉄道を利用して多くのお客さまが訪れました。コロナ禍を乗り越えた2026年、現場がパンクしない程度に鉄道旅がにぎわってくれたら幸いです。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名OK】