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「繁忙期は12月まで」はひと昔前?元ドライバーが明かす、年末より過酷な“第2の波”

  • 2026.1.22
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さんこんにちは、元宅配員のmiakoです。

冬の繁忙期と聞くと、多くの方は「12月いっぱい」と思い浮かべるかもしれません。実際、宅配業界でも長く「12月31日までが繁忙期」とされてきました。

大晦日までを乗り切れば、年が明けて一息つける。
かつては、そんな空気が確かにありました。

私が入社した頃も、1月1日は物量が一気に落ち着き、少人数で現場を回す体制になるのが当たり前でした。
宅配員にとっても、「新しい年の始まり」は一年のピークを乗り越え、少し肩の力を抜き、気持ちを切り替えるためのタイミングだったのです。

しかし、現在の1月はそう簡単に落ち着いてはくれません。
年が明けたからといって、現場の緊張感が和らぐことはなく、むしろ1月ならではの重さがのしかかる時期になっています。

かつての年始と今の違い

宅配業界では長いあいだ、「繁忙期は12月まで」という認識がありました。
お中元やお歳暮といった贈答需要が集中する時期を過ぎ、年が明ければ物量は一気に落ち着く。
年末年始は人の移動こそ多いものの、荷物の波としては一区切りつく時期だったのです。

実際、私が入社した10年ほど前は、1月1日の現場はごく少人数で回す体制が一般的でした。
年末までの慌ただしさとは対照的に、静かなスタートになることも珍しくなく、宅配員にとっては、年末のピークを乗り越えたあとの、いわば小休止のような位置づけだったように思います。

ところが、その感覚は少しずつ変わっていきました。
特に大きな転機となったのが、いわゆる「コロナ禍」です。
人々の生活様式や買い物の仕方が変わり、年末年始の物流の流れも、それまでとは違う形になっていきました。

1月は落ち着く、という前提そのものが、現場では通用しなくなっていったのです。

コロナ禍を境に変わった1月の物流の波

年末年始の物流の流れが大きく変わるきっかけとなったのが、コロナ禍でした。

緊急事態宣言下での外出自粛や店舗の営業制限などにより、人々が自宅で過ごす時間は一気に増えました。
それに伴い、買い物の方法も大きく変化していきました。

インターネットの普及により、それまで以上に在宅のまま仕事や生活を成り立たせる人が増え、若い世代だけでなくシニア層にもデジタル活用の普及が進み、社会全体にデジタル化が加速したのがこの時です。

外出自粛の影響もあり、オンラインショッピングの利用が急速に広がりました。
日用品や食料品、ギフトまで、これまで店頭で購入していたものが宅配に置き換わり、宅配需要は特定の時期だけでなく、年間を通じて増え続けるようになったのです。

コロナ禍以前の冬の繁忙期といえば、お歳暮ギフトから始まり、クリスマス商品やおせちなど、年末年始のイベントに伴う荷物がひと月を通して絶え間なく続き、年が明ければ徐々に落ち着く流れがありました。しかし、巣ごもり需要が定着したことで、個人向け配送が常態化し、繁忙期と通常期の境目が曖昧になっていきました。

コロナ禍が明けたあとも、その流れは止まりません。

自宅で過ごす人向けに店舗側もさまざまな企画を用意し、消費者もそれを当たり前のように利用するようになりました。
その結果、1月は「落ち着く時期」ではなく、「年末から続く忙しさを引きずる時期」へと変わっていったのです。

年始の現場を押し上げた福袋と初売り商品

1月の物量を押し上げる大きな要因のひとつが、福袋や初売り商品です。

かつては、年始の福袋といえば元日の早朝から店舗に並び、直接購入するのが一般的でした。
しかし近年では、オンラインでの事前予約や抽選販売が主流になり、年内から発送準備が進められるケースも増えています。

この変化により、福袋や初売り商品は「年始に店頭で受け取るもの」から、「年始に自宅へ届くもの」へと姿を変えました。年が明けたタイミングで一斉に配送される荷物が増え、宅配会社には1月1日から多くの荷物が流れ込むようになったのです。

また、年末にお届けしたものの不在で持ち戻りとなった荷物が、年明けに再配達となるケースもあります。そこに、事前予約されていた初売り商品や福袋、おせちなどが重なり、年始の現場は想像以上の物量になります。

特におせちは新年を迎えるのにとても大切な食品であり、保管できる期限も限られます。
初詣に出かけて不在だったお宅から「今帰ってきて、この後必要だから持ってきて!」と言われても、通常以上の荷物があふれる中での再配達は、なかなか思うように対応するのが難しいのが現状でした。

年が明けたからといって、現場が落ち着くわけではありません。
むしろ、慌ただしい一年の仕事始めを迎えるような感覚で、宅配員たちは1月の配達に向かうことになります。

時間指定が守れなくなる1月特有の事情

1月は、時間指定をしていても予定どおりにお届けできない場面が起こりやすい時期です。
その背景のひとつに、年末年始ならではの人の動きがあります。
帰省や旅行、初詣などで普段以上に人が移動し、道路状況が大きく変わるのです。

特に年始は、幹線道路や高速道路だけでなく、住宅街の周辺でも渋滞が発生しやすくなります。
配達ルートどおりに進めないことも多く、通常であれば問題なく回れるエリアでも、想定以上に時間がかかってしまうことがあります。

さらに、荷物は増える一方で、不在も増えがちです。帰省先から戻る途中だったり、初詣や外出で家を空けていたりと、在宅していると思って向かった先で受け取れないケースも少なくありません。不在による持ち戻りや再配達が重なることで、時間の余裕はさらに削られていきます。

時間指定は守るべき大切な約束です。
しかし、交通状況や不在が次々と発生する現場では、その時間内にお届けするための「目標」として捉え、最善を尽くしている、というのが正直な感覚かもしれません。

ただ、宅配員たちは、極力そのお約束を守ろうと必死になります。
交通状況や不在が重なる1月は、その約束を守りたくても守りきれない状況が生まれやすい時期でもあります。

現場では、限られた時間の中で、どう動くか、どこまで対応できるかという判断を迫られながら、配達を続けているのです。

初売りが落ち着いた後に来る、もうひとつの波

年始の福袋や初売り商品がひと段落すると、現場は少し落ち着くように思われがちですが、実際にはその後に「もうひとつの波」がやってきます。

帰省や旅行を終えた人たちが、自宅へ戻るタイミングで一斉に荷物を発送するためです。
地方に帰省した際の衣類などの荷物や、お土産を詰めた段ボール、スーツケースなどが、この時期にまとめて届きます。

ニュースなどで見たり、実際に体験したことがある人もいるかもしれませんが、帰省ラッシュで混み合う中、大きな荷物を持って電車やバスなどで移動するのは大きな負担になります。
そのため、スーツケース、それも特に大きめのものを宅配で送る人も多くなります。

スーツケースは、宅配の中でも扱いに気を使う荷物です。大きさもあり、重さもあります。
中には詰められるだけ詰め込まれていることも少なくありません。
荷台に載せるだけでも一苦労で、配達中に転がってしまったり、他の荷物とぶつかってコロが壊れてしまわないよう、置き方にも細心の注意が必要になります。

さらに、エレベーターのないマンションの上階へお届けする場合もあります。
大きくて重さのあるスーツケースは抱きかかえることができず、段ボールの荷物よりも重心がずれやすく、持ち運ぶのにバランスを崩しやすいのです。
ケース側面のハンドルを持ち、階段を踏み外さないよう一段ずつ慎重に運びます。
踊り場ごとに息を整えながら、目的の階まで進み、ようやく到着した先で不在だったときは、また同じように慎重に運び、車へ持ち戻らなければなりません。
体力も時間も、静かに削られていきます。

初売りが終わっても、1月の配達が楽になるわけではありません。
むしろ、こうした大きな荷物が重なることで、現場では「第二のピーク」を迎える感覚になるのです。

人の手で成り立つ物流と1月の重圧

荷物の発送や配達は、すべてシステムで管理され、機械的に動いているように見えるかもしれません。注文も配送状況の確認も、画面ひとつで完結します。
しかし、その裏側では、荷物を集め、仕分けし、運び、届けるという一つひとつの工程を、「人の手」が支えています。

1月は、その負荷が特に大きくなる時期です。
年末から続く物量に加え、初売りや福袋、帰省や旅行後の荷物が重なり、現場には余裕がありません。
時間指定や再配達、不在対応など、判断を迫られる場面も増えていきます。

荷物が多い日ほど、「急がなければならない」という気持ちと、「慎重に扱わなければならない」という責任の間で、宅配員は揺れます。
どちらか一方を選べばいいわけではなく、両立させなければならない。その積み重ねが、重圧としてのしかかってくるのです。

年が明けると、気持ちの上では一区切りついたように感じるかもしれません。宅配員としても、区切りをつけたい思いはあります。
しかし、宅配の現場では、1月は決して軽い時期ではありません。
年末から続く物量に、初売りや福袋、帰省や旅行後の荷物が重なり、まだまだ終わらない繁忙期のような感覚の中で配達が続いています。

時間指定や再配達、慎重な取り扱いが求められる荷物。
その一つひとつに向き合いながら、宅配員たちは日々判断を重ねています。

人手不足が続く中でも、荷物を待っている人がいる限り、配達は止まりません。
現場を支えているのは、特別な仕組みではなく、ひとりひとりの宅配員の判断と行動です。

荷物が無事に届くその裏側で、人の手と人の判断が支えている現実があることを、心の片隅に置いてもらえたら嬉しいです。



ライター:miako
宅配ドライバーとして10年以上勤務した経験を生かし、現場で出会った人々の温かさや、働く中で積み重ねてきた“宅配のリアル”を、経験者ならではの視点で綴っています。
荷物と一緒に交わされてきた小さなエピソードを、今は文章としてお届けしています。


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