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夫「ローン名義は俺で問題ないよな?」と即決。妻の貯蓄も頭金にしたのに…新築が“地獄”になった40代夫婦

  • 2026.1.21
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

住宅ローンの名義や、誰の持ち家にするのかといった大きな決断を夫婦で迫られたとき、深く考えずに判断してしまった経験はないでしょうか。

「そこまで細かく決めなくても大丈夫」
「いずれ話し合えばいいだろう」

その場では空気を悪くせずに済み、手続きもスムーズに進みます。むしろ、合理的で賢い選択をしたように感じることもあるでしょう。

しかし、不動産とお金が絡む話では、その判断が数年後、夫婦関係が揺らいだタイミングで一気に表面化します。そして、取り返しのつかない問題へと発展しかねないのです。

今日は、住宅購入の際に名義の話を後回しにしたことがきっかけで、家が生活の拠点ではなく「争いの中心」になってしまった夫婦の実例をご紹介します。

手続きの楽さを優先した、名義の決定

今回ご紹介する登場人物は、40代後半の共働き夫婦Aさんご夫妻です。結婚15年目で、お子さんは中学生が一人。世帯収入も安定しており、周囲から見れば堅実な家庭でした。

賃貸住宅の更新をきっかけに、「どうせなら長く住める家を」と考え、戸建ての購入を決めたそうです。

住宅ローンの相談を進める中で金融機関から説明されたのは、ごく一般的な内容でした。

「ご主人は公務員で収入が安定しているため、単独名義にしたほうが審査や手続きがスムーズに進みますよ」

その流れで、ご主人が奥様に確認しました。

「名義は俺で問題ないよな?」

奥様は一瞬考えたものの、そこで深く踏み込むことはありませんでした。どうせ家族で住む家なのだから、という思いが先に立ったからです。

実際、頭金には奥様の貯蓄も含まれており、毎月の返済も実質的には夫婦で半分ずつ負担していました。ただ、この時点で「名義が意味するもの」や、将来の扱いについて具体的な話し合いが行われることはありませんでした。

認識のズレが、離婚の話とともに表面化する

夫婦関係に変化が表れ始めたのは、家を購入してから数年が経った頃でした。浮気や大きな金銭トラブルがあったわけではなく、価値観の違いや日々の小さな不満が積み重なった結果だったといいます。

離婚の話が現実味を帯びたとき、避けて通れなくなったのが「この家をどうするのか」という問題でした。奥様は、家は当然、夫婦で共有しているものだと考えていました。頭金も出し、返済も実質的に負担してきた以上、その感覚は自然だったと思います。

しかし、書類上の現実は違っていました。

建物の名義も、住宅ローンの契約も、ご主人単独だったのです。もちろん、この事実自体は住宅ローンを組んだ時点で分かっていたことでした。

ただ当時は「住宅の名義は夫にするもの」という認識がごく自然にあり、特別な疑問を持たなかったといいます。ご主人や義両親からも「夫名義のほうがいいだろう」と言われ、あえて異を唱える理由が見当たらなかったそうです。

ところが離婚という現実を前にした途端、その名義の違いが一気に重みを持ち始めます。同じ家に住み、同じようにお金を出してきたつもりでも、最終的な判断に関われる立場は対等ではなかった。

当時は普通だと思っていた判断が、ここにきて大きな差となって表面化します。話し合いは次第に感情的になり、家庭内では収まらない状況に。

そして最終的に、離婚調停へと進むことになりました。

名義というたった一行の記載が、立場を決定づけた

一般論としては、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産は名義にかかわらず共有財産とみなされ、分与の対象になります。

ただし、このご夫妻の場合、その前提を裏付ける整理が十分とはいえませんでした。頭金についても、奥様が独身時代の貯蓄を充てたという認識はあったものの、婚姻後の家計と明確に切り分けて管理されていたことを示す資料がなく、「奥様個人の財産」として認めてもらうことが難しかったのです。

また、住宅ローンについても、実際には家計から支払われていたものの契約上はご主人単独の返済として整理されていたため、書類上の記録が優先され、奥様の貢献分を正確に反映させることができませんでした。

奥様は後から、最初の判断を強く後悔したと語っていました。一方でご主人も、手続きを優先しただけの名義が、ここまで大きな問題になるとは思っていなかったそうです。

こうしてこの家は、生活を支える場所ではなく、互いの主張がぶつかり合う、いわば「地獄のような場所」へと変わってしまいました。

名義は信頼ではなく、将来のリスクで考える

住宅の名義やローンは、「今うまくいっている関係」を前提に決めるものではありません。多くの家庭で、「普通はこうするもの」という認識のまま決められているからこそ、後になって問題が顕在化します。

今回のケースでは、名義を軽く決めたことが後になって夫婦の立場を大きく分けてしまいました。もし次のような対応をしていれば、状況はまったく違っていた可能性があります。

  • 出資割合に応じて、建物を共有名義にしておく
  • 単独名義にする場合でも、離婚や売却時の清算方法を事前に決めておく

名義の話をすることは、相手を疑う行為ではありません。「それが一般的だから」「そう言われたから」という理由で流してしまわず、将来を見据えて一度立ち止まることが結果的に家族を守ることにつながります。

家は、本来、人生を支える拠点になるものです。しかし判断を誤れば、簡単に人生を縛る重荷にも変わってしまいます。

これから住宅購入を考える方には、名義という一行を軽く扱わないでほしいと思います。その判断ひとつで避けられたはずの地獄が生まれるケースは、決して少なくありません。

※本記事は、実際の相談事例をもとに構成していますが、個別の事情によって結論は異なります。名義や権利関係については、専門家に確認することが重要です。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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