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訪問看護で「なんでまだ来ないんですか?」予定時間前に何度も電話してくる娘…発覚した“本当の理由”に「言葉を失った」

  • 2026.6.16
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。現役看護師ライターのこてゆきです。

訪問看護をしていると、利用者さん本人だけでなく、ご家族とも長いお付き合いになります。その中で時々出会うのが、「何かあるたびに電話をしてくる家族」です。

現場では「心配性な家族」「少し過干渉な家族」と受け止められることもあります。けれど、その行動の背景を知ると、見え方が大きく変わることがあります。

今回は、訪問予定日のたびに事業所へ電話をかけてくる娘さんとの関わりを通して、私自身が考えさせられた出来事です。

「今日来ますよね?」から始まる電話

Aさんは80代の女性。心臓に疾患があり、自宅で療養されていました。

週3回の訪問看護を利用しており、体調確認や服薬状況の確認を行っていました。Aさん自身は穏やかな方で、訪問時もいつも笑顔で迎えてくださいます。

ただ、ご家族である娘のBさんには少し特徴がありました。訪問予定日の朝になると、ほぼ必ず事業所へ電話が入るのです。

「今日ですよね?」
「何時頃来られますか?」

ここまではよくある確認です。しかし、その後も電話が続きます。

「今どの辺ですか?」
「もうすぐですか?」

そして時には、

「なんでまだ来ないんですか?」

と予定時間前にも関わらず連絡が入ることがありました。

「また電話…」スタッフの本音

正直に言うと、スタッフの間では少し話題になっていました。

「あ、またBさんから電話」「今日も確認入ったね」

そんな会話が出ることもありました。もちろん心配な気持ちは理解できます。けれど毎回となると、対応する側にも戸惑いが生まれます。

ある日も事業所へ電話が入りました。

「今日、ちゃんと来てくれるんですよね?」

その都度予定時間を説明します。それでも安心できない様子でした。

さらに別の日には、

「本当にちゃんと見てくれてるんですか?」

という言葉もありました。その頃の私は、

「そんなに心配なら一緒に住んだ方が安心なのでは…」

と思ってしまったこともあります。今思えば、とても表面的な見方でした。

訪問しても落ち着かない様子

Bさんは訪問時にも不安そうでした。私たちが到着するとすぐに質問が始まります。

「今日はむくみどうですか?」
「息苦しそうじゃないですか?」
「顔色悪くないですか?」

血圧測定をしていても、

「大丈夫ですか?」
「入院とかになりませんよね?」

と何度も確認されます。

Aさん本人が

「そんな心配せんでも大丈夫やで」

と笑っていても、Bさんの不安は消えません。むしろ訪問が終わる頃になると、

「次の訪問まで何もないですよね?」

とさらに心配そうな表情になることもありました。

「父の時もそうだったんです」ある日聞いた一言

そんなある日のことです。訪問を終えたあと、Bさんがぽつりと言いました。

「私、見逃したくないんです」

私は最初、その意味が分かりませんでした。

「見逃したくない、ですか?」

そう聞き返すと、Bさんは少し黙り込みました。そして静かに話し始めたのです。

「父の時も大丈夫だと思ってたんです」

Bさんはそう言いました。詳しく聞くと、数年前にお父様を亡くされていたそうです。当時、お父様も自宅で生活していました。

体調不良を訴えていたわけではありません。家族も普段通りだと思っていました。けれどある日、急変。救急搬送され、そのまま亡くなられたそうです。

Bさんは今でもその時のことを後悔していました。

「顔色がおかしかった気もするんです」
「もっと早く病院に連れて行けばよかったかもしれない」
「なんで気づけなかったんやろって、今でも思います」

話しながら涙ぐむ姿を見て、私は言葉を失いました。

不満ではなく恐怖だった。見え方が変わった瞬間

その話を聞いてから、これまでの電話の意味が変わりました。

「今日ですよね?」も、「何時頃来ますか?」も、「なんでまだ来ないんですか?」も、看護師への不満ではなかったのです。Bさんは訪問看護を信用していないわけではありませんでした。

むしろ逆でした。看護師が来てくれることで安心できる。だからこそ、来るまでが不安だったのです。また何か見逃してしまうかもしれない。

また突然何か起きるかもしれない。その恐怖が、何度も電話をかけさせていたのでした。

それから私は、Bさんから電話が入るたびに少し違う視点で話を聞くようになりました。

「お母さんの様子で何か気になることありましたか?」
「今日は特に心配なことがありますか?」

そう聞くと、

「昨日少し息切れしてて…」「夜中に咳してたから…」

と不安の中身を話してくれるようになりました。すると電話の回数も少しずつ減っていきました。

不安を否定されるのではなく、受け止めてもらえることで安心できたのかもしれません。

家族も支援の対象。「また電話だ」と思う前に

訪問看護は利用者さんを支援する仕事だと思われがちです。

もちろんそれは間違いではありません。けれど実際には、ご家族もまた支援の対象です。介護疲れ。将来への不安。そして過去の喪失体験。

そうしたものを抱えながら生活している方も少なくありません。

Bさんの場合、亡くなったお父様への後悔が今も消えていませんでした。

だからこそ、お母様の小さな変化にも敏感になっていたのです。

あの日以来、私は家族から何度も連絡が来た時、「また電話だ」と思う前に、「何が不安なんだろう」と考えるようになりました。

もちろんすべてのケースに同じ背景があるわけではありません。それでも、強い言葉や厳しい態度の裏に、不安や悲しみが隠れていることは少なくありません。

Bさんの「なんでまだ来ないんですか?」という言葉も、本当は「また大切な人を失いたくないんです」という叫びだったのかもしれません。

訪問看護をしていると、利用者さんだけでなく、ご家族の人生にも触れることがあります。

そして時には、その不安や後悔に寄り添うことも看護の一つなのだと、改めて感じた出来事でした。



ライター:こてゆき

精神科病院で6年勤務。現在は訪問看護師として高齢の方から小児の医療に従事。精神科で身につけたコミュニケーション力で、患者さんとその家族への説明や指導が得意。看護師としてのモットーは「その人に寄り添ったケアを」。


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