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「担任を変えてくれない限り休ませます」保護者が激怒。タブレット指導巡り、元教員を襲った恐怖

  • 2026.1.22
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元小学校教員ライターの、みずいろ文具です。
学校には、ときどき耳を疑うような連絡が入ることがあります。

こちらには身に覚えがないのに、保護者の方は強い不信感を抱いている。
思い出すと今でも気持ちが暗くなる出来事をお話しします。

放課後に入った一本の電話

高学年を担任していたときのことです。授業と関係のない時間にタブレットを出し、インターネットを見てしまうHくんがいました。

再三注意しても改善が見られなかったため、私は落ち着いた声でこう伝えました。

「ルールを守れないなら、いったん預かります」

このような場合は、感情的に怒鳴るのではなく事実を淡々と伝え線引きをするようにしていました。
タブレットは一時的に預かり、放課後に本人と話して返すつもりでした。

ところがその日の夕方、保護者から電話が入りました。

「うちの子が、先生に大きな声できつい言葉を言われて傷ついてます。もう学校に行きたくないそうです。タブレットも無理やり取り上げられたみたいで…」

思わず「そんなこと言っていない」と叫びたくなるのをこらえ、私はまず事実を整理しました。
タブレット使用の状況、注意の回数、預かった理由。できるだけ落ち着いて説明しました。

しかし、返ってきたのは、お子さんを心配するがゆえの、さらに強い口調でした

「我が子を疑うんですか?もう学校に通わせられません。担任を変えてくれない限り休ませます」

もう、こちらの説明は届かなくなっていました。

子どもの話が変わる理由

子どもの話が、家庭に届くころには別の形になっている。
これは、私が教員として経験した中では、決して珍しくない出来事でした。

私たちは、常に正しいと言い切りたいわけではありません。
しかし子どもは、出来事を“事実そのまま”ではなく、“感じたまま”で話すことがあるのです。

たとえば、

  • 叱られてショックだった(=とても強い言い方に感じた)
  • 失敗を認めたくない(=理由を別のものにしたくなる)
  • 親に怒られるのが不安(=自分を守るために話が大きくなる)

高学年になるほど、プライドや恥ずかしさも強くなります。
「自分が悪かった」と言うより、「先生がひどかった」と語るほうが、心を守れることもあるのです。

どうして保護者は信じてしまうのか

一方で、保護者の方が子どもの言葉を信じるのも自然なことです。

親にとって、我が子は守るべき存在。
「学校で傷ついた」と言われたら、まず味方になりたくなる。これは親として当たり前の反応です。

さらに近年は、SNSやネットの情報によって、
「先生の言動で子どもが傷つくこともある」
「学校は隠ぺい体質」
といった疑念や不安が増幅しやすい時代でもあります。

だからこそ、子どもが壁にぶつかったときに、事実確認が置き去りになり、すれ違いが大きくなってしまうのです。

すれ違いを広げないために必要だったこと

その後、私は管理職と相談し、保護者の方と改めて話し合う場を持ちました。

「お子さんがつらかったこと」にはまず寄り添う。
そのうえで、「実際にあったこと」を一つひとつ整理して共有する。

今後のタブレットの使い方も、あらためて明確にしました。

結果として、Hくんは少しずつ登校できるようになりました。
ただ、私の中にはやりきれない思いも残りました。

ルールを守るという正当な指導をしても、事実とは違う形で伝わってしまうことがある。

この出来事の後は、子どもたちに指導する際に「保護者から何を言われるだろうか。誤解されないだろうか」と常に頭に浮かぶようになってしまいました。

子どものために「受け止め」と「整理」を

子どもの気持ちを受け止めることは、とても大切です。
同時に、事実を冷静に整理することも、子どもの成長につながります。

たとえば家庭では、こんな声かけが助けになります。

「つらかったんだね。教えてくれてありがとう」
「いつ、どこで、何があったのか、一緒に整理してみよう」
「先生にも確認してみようね」

“味方になる”ことと、“事実を確かめる”ことは両立できます。
その姿勢が、子どもに「気持ちは大事にしていい。でも、きちんと事実に向き合うことも大切」と教えてくれます。

学校側もまた、指導の経緯を記録し、早い段階で家庭に共有するなど、すれ違いを防ぐ工夫が必要です。

信頼関係は「どちらが正しいか」を争って育つものではありません。
小さな情報共有と、丁寧な事実整理の積み重ねで守られていくのです。

子どもが安心して通える学校であるために。
すれ違いを小さなうちにほどける関係を、育てていけたらと思います。



ライター:みずいろ文具

関東の公立小学校で15年間、子どもたちと向き合ってきました。教室での日々を通して感じた喜びや戸惑い、子どもたちから教わったことを、今は言葉にしています。教育現場のリアルや、子どもたちの小さな成長の瞬間を、やさしい視点でお届けします。


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