1. トップ
  2. 新築1年で後悔。「使うたびに溜息が出ます」洗面台に一目惚れも…30代主婦を襲った“誤算”【一級建築士は見た】

新築1年で後悔。「使うたびに溜息が出ます」洗面台に一目惚れも…30代主婦を襲った“誤算”【一級建築士は見た】

  • 2026.1.22
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

「SNSで一目惚れした洗面台を再現したくて、こだわって『造作洗面台』にしました。見た目は今でも大好きなんですけど……使うたびに溜息が出ます」

そう語るのは、新築戸建てに入居して1年のDさん(30代主婦・夫婦+子ども2人の4人暮らし)。

木のカウンターの上に器を置いたような「ベッセル式」のボウル、壁付けの真鍮水栓。まさに“映える洗面”の代名詞のような空間を実現しました。

しかし、いざ暮らしが始まると現実は過酷でした。

使うたびに周囲は水浸し、汚れは目立ち、朝は家族で大渋滞。おしゃれを優先したはずが、皮肉にも日々のゆとりを削る「大誤算」となってしまったのです。

水はねと汚れが「毎日」積み上がる

最初に直面したのは、想像以上の「水はね」でした。

器型のボウルは縁が低かったり、浅かったりするものが多く、手洗いやうがいをするだけで周囲に水滴が飛び散ります。さらに、水栓の位置が高いとおしゃれに見える反面、水がボウルに当たる衝撃が強くなり、跳ね方も派手になりがちです。

Dさん宅では、木製カウンターの継ぎ目やボウルの付け根に水滴が残り、乾くと白い水垢がこびりつくようになりました。

「使うたびに拭けばいい」と思ってはいたものの、慌ただしい朝にそれは至難の業。結局、夜にまとめて掃除をする羽目になり、「洗面台のために家事が増えた」と感じるようになってしまったそうです。

朝の“渋滞”で、おしゃれが裏目に

もう一つの誤算は、朝の「渋滞」と「散らかり」でした。

歯磨き、洗顔、ヘアセット。家族が同じ時間に集中する洗面所は、家の中でも一番の“戦場”です。多くの造作洗面は見た目をスッキリさせるため、作業スペースや仮置き場が最小限になりがちです。

Dさん宅でも、出しっぱなしのドライヤーや整髪料、お子さんのヘアゴムがカウンターを占領。どれだけおしゃれなボウルを選んでも、物が溢れれば一気に生活感が出てしまいます。

「きれいに保ちたいのに、構造上保てない」というギャップが、ストレスを加速させていました。

原因は「SNSで選んだ仕様」

原因は造作洗面そのものにあるのではありません。「SNSで切り取られた美しさ」が、自分たちの「実際の動線」と噛み合っていないことにあります。

  • ボウルの浅さ
  • 掃除のしにくさを考慮していない素材選び
  • 生活用品の量に見合わない収納計画

水回りは、一日のうちで何度も、そして365日欠かさず使う場所です。たった一度の「使いにくい」が、一年で数千回のストレスとして蓄積されていくのです。

後悔しないための現実的な対策

これから計画する方は、まず「ボウルは深め」を基本に考えてみてください。

さらに、水栓から出る水がボウルの底にどう落ちるか、ショールームで実際に水を出して確認するのが最も確実です。ただし、全ての展示品で水が出せるわけではない点に注意が必要です。

また、素材選びは「拭きやすさ」がとても重要です。継ぎ目が少なく、水が染み込みにくい素材を選ぶだけで、数年後の美しさが全く違ってきます。

収納については、「家族全員が同時に使う道具」の量をあらかじめ把握しましょう。出しっぱなしを禁止するのではなく、「出しっぱなしでも雑然と見えない置き場」を最初から作っておくことが、朝の渋滞とストレスを解消する鍵となります。

すでに完成している場合は、トレイを使って「仮置きスペース」をルール化したり、壁面に小さな棚を後付けして「空中収納」を増やすだけでも、使い勝手は大きく改善します。

水回りは“毎日使う現場”

Dさんの事例が教えてくれるのは、「おしゃれ=満足」とは限らないという現実です。

洗面台は「見せ場」である前に、家族が毎日をスタートさせる大切な「現場」です。映えるかどうか以上に、「濡れる・汚れる・混む」という現実を前提に設計すること。そこをクリアして初めて、おしゃれな空間は本当の意味で暮らしを豊かにしてくれます。

新築の洗面は、写真のイメージではなく、実際の暮らしの解像度を上げて選ぶ。これが、後悔しない家づくりの鉄則です。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名OK】