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夫の不倫で離婚も「売れば終わると思っていました」と絶望。不動産社長が明かす、ペアローンに潜む恐ろしい罠

  • 2026.1.22
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

夫婦で家を買うとき、「どちらかに負担を偏らせたくない」「対等な立場で返していきたい」と考える方は少なくありません。その結果として選ばれやすいのが、ペアローン(夫婦それぞれが住宅ローンを契約し、お互いが相手の連帯保証人になる仕組み)です。

一見すると合理的で、公平な選択に見えるため、共働き世帯を中心に年々増えています。しかし、不動産の現場にいると、その「平等さ」が、後になって夫婦の選択肢を狭めてしまう場面を何度も目にします。とくに夫婦関係が変化したとき、ペアローンは簡単には解消できない契約として重くのしかかります。

今日は、公平さを重視して組んだペアローンが、関係の変化によって大きな負担となってしまった実例をご紹介します。

「対等でいたい」気持ちから選んだペアローン

相談に来られたのは、40代前半の共働きAさんご夫妻。結婚10年目で、小学生のお子さんが1人。世帯年収にも余裕があり、家計は安定していました。

新築マンションを購入する際、2人が選んだのがペアローンです。持ち分(不動産をどれだけ所有しているかを示す割合)は2分の1ずつ。毎月の住宅ローン返済も、きっちり折半していました。

「どちらか一方に負担が偏る形にはしたくなかったんです」

Aさん夫婦は、当時をそう振り返ります。

ペアローンは、「夫婦で同じように収入を得ている以上、返済も対等であるべき」というAさん夫婦の考え方に最も合った選択肢でした。購入当初はこの決断に迷いはなく「これが一番まっとうな決め方だ」と自然に思っていたそうです。

夫の不倫が発覚する

マンションを購入してから数年後、Aさん夫婦の関係は思いもよらぬ出来事で一変しました。夫の不倫が発覚したのです。最初は話し合いで関係の修復を試みました。

しかし、一度失われた信頼は簡単には戻りません。会話は次第に減り、同じ空間にいながらも、視線を交わさない日々が続きます。

「もう、同じ屋根の下で暮らし続けるのは無理だと思いました」

奥様は、当時の心境をそう振り返ります。やがて離婚の話が現実的になり、Aさんが直面したのが家をどうするかという問題でした。

「家を売って、すべて清算すればいい」

多くの方が、まず思い浮かべる選択です。しかし、このケースでは、その考えがすぐに通用する状況ではありませんでした。

ここから、想像以上に厳しい現実が待っていたのです。

売っても終わらない。残債という“見えない壁”

ペアローンで購入した家を離婚時にどう扱うかについては、財産分与として、一般的に次の3つの選択肢があります。

  • 家を売却する
  • 単独ローンに一本化して、どちらかが住み続ける
  • 離婚後も共有したままにする

しかしAさん夫婦の場合、売却という選択肢は最初から現実的ではありませんでした。マンションの市場価格自体は大きく下がっていませんでしたが、返済初期の住宅ローンは利息の割合が高く、数年では元本がほとんど減らない仕組みです。

その結果、売却価格よりローン残高の方が多くなり、売っても数百万円の残債が残る可能性が高いことが分かりました。住宅ローンが残ったままでは、抵当権(金融機関が物件に設定している担保)を外すことができず、事実上、借金を清算しない限り売却は完了しません。

「売れば終わると思っていました。まさか借金だけが残るとは…」

では、残る選択肢はどうだったのか。単独ローンへの切り替えは審査の壁が高く、現実的ではありませんでした。共有を続ければ、家の使い方や将来の売却を巡って意見が対立しやすくなります。

さらに契約内容によっては、一方が家を出たことで一括返済を求められるおそれもあります。こうしてAさん夫婦は、どの選択肢も前に進めない状態に追い込まれてしまったのです。

離婚後も続く同居。終わらない精神的消耗

話し合いは長期化し、家の中には常に重たい空気が漂っていました。いわゆる「家庭内別居」の状態です。

「顔を合わせるだけで、気力が削られていく」
「子どもが、この空気を感じ取っているのが一番つらかった」

Aさん夫婦は、当時をそう振り返ります。

最終的に離婚自体は成立しました。ただし、住宅ローンと不動産の問題は解決しないままでした。財産分与(離婚時に夫婦で築いた財産を分けること)の話し合いでは、売却や名義整理といった抜本的な解決策が見つからず、家は共有名義のまま、ローンも当面は折半する形に落ち着いたのです。

書類上は一応の整理がついたものの、生活の負担が軽くなったわけではありません。住まいも支払いも、相手と完全に切り離せない状態が続きました。

「平等に組んだはずのローンが、こんな形で人生を縛ることになるとは思いませんでした」

Aさん夫婦の表情からは、当時の判断を悔やむ気持ちがにじんでいました。

ペアローンは「別れた後」を想定しないと地獄になる

このケースを通じて強く感じたのは、ペアローンは仕組み自体よりも、想定の甘さが大きなリスクになるという点です。購入当時Aさん夫婦には、次のような視点が欠けていました。

  • 離婚した場合、売却や単独返済は現実的か
  • 残債が出たとき、負担をどう分けるのか
  • 財産分与まで含めて話し合えているか

「今は仲がいいから大丈夫」その前提で組んだローンほど、関係が変わった瞬間に選択肢を奪います。家は、本来、暮らしや人生を支える存在です。

しかし判断を誤ると、別れる自由さえ奪う契約に変わることがあります。ペアローンを検討している方は一度立ち止まり、最悪の状況から逆算して考えてみてほしいと思います。それが、このような“同居地獄”を避けるための、数少ない備えです。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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