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残クレ「金利1.9%」で新車納車→数ヶ月、住宅ローン審査で届いた“非情な通告”…30代男性を襲った「落とし穴」

  • 2026.1.18
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

念願のマイホーム計画中に訪れた新車購入のタイミング。年利1.9%という低金利キャンペーンに後押しされ、手元の現金を残すために残価設定クレジットを選択。しかし、その合理的な判断が後の住宅ローン審査で思わぬ壁となったという事例があります。

ネット銀行から届いたのは大幅な減額回答。ある男性の実体験を通じ、家と車を同時期に検討する際に陥りがちな落とし穴について解説します。

完璧な資金計画のはずだった

Aさん(30代後半男性・既婚・子ども1人)は、長年の夢であった注文住宅の計画を順調に進めていました。土地探しも終わり、あとはハウスメーカーとの契約と住宅ローンの本審査を残すのみとなっていた状況です。

そんな順風満帆な計画が進む中で、以前から気になっていた車のフルモデルチェンジが発表されます。現在の車も車検が近づいており、さらに子どもの成長に合わせて車内が手狭になってきたこともあって、Aさんは家と一緒に車も新調しようと考え始めました。

ただし、これから家を建てる身として、手元の現金は頭金や諸費用のために極力温存しておきたいところです。そんな彼の背中を押したのが、ディーラーから提案された残価設定クレジットという選択肢でした。

さらに運が良いことに、そのタイミングで特別低金利キャンペーンを実施しており、年利1.9%という破格の好条件が提示されたのです。手元の現金を減らさずに済み、しかも低金利で月々の支払いも抑えられる。これなら住宅ローンと合わせても家計への負担は最小限に抑えられ、まさに完璧な作戦だとAさんは確信していました。

残価設定クレジットの仕組みと魅力

ここで、Aさんが選択した残価設定クレジットの仕組みについて整理しておきましょう。

残価設定クレジットは、数年後の車両価値(残価)をあらかじめ設定し、その額を最終回の支払いに据え置く仕組みです。通常のオートローンが車両本体価格の全額を分割で支払うのに対し、この方式では支払いの負担を大幅に軽減できます。

例えば、500万円の車で5年後の残価が200万円に設定された場合、利用者が分割で支払うのは差額の300万円分と金利手数料だけで済みます。そのため、通常のフルローンに比べて月々の支払額を大幅に抑えることができるのです。

ここに、Aさんが飛びついた1.9%という低金利が加わります。これから住宅ローンという大きな固定費を抱える彼にとって、これ以上に合理的な選択肢はないように思えたのも無理はありません。

また、契約満了となる最終回には、一般的に3つの選択肢から選ぶことができます。車を返却して残価を精算するか、新しい車に乗り換えてその査定額を残価に充てるか、あるいは残価を一括または再ローンで支払って乗り続けるかという選択です。

ライフスタイルに合わせて乗り換えがしやすく、月々の出費も抑えられる。一見するとメリットが多いように見えるこのシステムですが、住宅ローンの審査という土俵に乗った瞬間、その評価が一変してしまうことがあります。

住宅ローン審査で突きつけられた減額回答

新車が納車され、順調なスタートを切った数ヶ月後、いよいよ住宅ローンの本審査の日がやってきました。Aさんは金利の低さを最優先し、人気の高いネット銀行の住宅ローンに申し込みました。年収や勤続年数にも問題はなく、車のローンも月々の負担額は低く抑えているため、まったく不安を感じることなく自信を持っての申請でした。

ところが、数日後に届いた審査結果は、Aさんの予想を大きく裏切る内容だったのです。希望していた借入額から大幅な減額の回答となってしまいました。その額では、すでに決めていた土地と建物のプランを実現することは到底できません。

一体何が起きたのか。困惑したAさんが確認したところ、銀行側からある具体的な指摘があったことが判明しました。原因は、既存の借り入れである車のローンによる返済比率オーバーだったのです。

銀行が見ている返済負担率の落とし穴

なぜ月々の支払いを抑えたはずなのに、このような結果になってしまったのでしょうか。その答えは、住宅ローン審査で重要視される「返済負担率」という指標にありました。

返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合のことで、一般的には30〜35%以下が審査通過の目安とされています。ここで重要なポイントは、この年間返済額には住宅ローンだけでなく、車や教育ローン、クレジットカードのリボ払いなど、すべての借り入れが含まれるということです。

Aさんは「残クレで月々の支払額を安く抑えているから、返済比率は問題ないはず」と考えていました。しかし、ここが盲点でした。

金融機関によっては、実際の毎月の支払額をそのまま審査に使うとは限りません。据え置いている残価を含めた「借入総額」を基準に、毎月の返済額を独自に再計算するケースがあるのです。 つまり、実際には負担を軽くしていても、審査上は「もっと高額な返済をしている」とみなされ、その分だけ住宅ローンに回せる枠(返済負担率)が圧迫されてしまった可能性があります。

最も低金利な金融機関は使えなくなることも

ネット銀行での大幅減額という結果を受けて、Aさんには現実的な選択肢が2つ残されました。1つは家のグレードを下げて借入額を減らすこと、もう1つは審査基準が比較的柔軟だが金利が高めの他の金融機関で借りることです。

すでに間取りも決まり、家族の期待も高まっている状況で、今さら予算不足を理由に計画を縮小するのは現実的ではありません。結果としてAさんは苦渋の決断で、当初予定していた超低金利のネット銀行を諦め、希望額に近い融資を承認してくれた別の金融機関を利用することになりました。

この選択が与える影響は決して小さくありません。わずかコンマ数パーセントの金利差であっても、数千万円を35年かけて返済する住宅ローンの場合、この差は総返済額で数百万円もの違いとなって現れることがあります。車を先に購入したという単純な順序の違いだけで、生涯にわたって支払うコストが大幅に増加してしまったのです。

教訓:家と車はどちらを先に買うべきか

では、Aさんのようなケースを避けるためには、どうすれば良かったのでしょうか。

1つの有効な考え方として、大きな借り入れは住宅ローンを組んだ後に行うのが望ましいとされています。もしAさんが車の購入を住宅ローンの融資実行後、つまり家の引き渡しが完了した後に行っていれば、住宅ローンの審査には一切影響しなかった可能性が高いでしょう。

また、どうしても車が必要だった場合でも、現金一括で購入できる中古車を選んでいれば、借入としての記録は残らず、審査への影響を最小限に抑えられたかもしれません。

もちろん、すでに残価設定クレジットを組んでしまっている場合でも、まったく対策がないわけではありません。住宅ローンの審査前に残価設定クレジットを一括返済し、完済証明書を銀行に提出することで、借入なしとして扱ってもらえるケースも多いようです。この場合、確かに手元資金は減ってしまいますが、住宅ローンの金利優遇を受けられるメリットと天秤にかければ、十分に検討の余地があると言えるでしょう。

そのお得はトータルで見て本当にお得か

残価設定クレジット自体は、決して悪い仕組みではありません。特にAさんが利用したような低金利キャンペーンなどを上手く活用すれば、手元の資金を温存しながら新しい車に乗れるため、非常に有用な選択肢となり得ます。

しかし、これから家を建てる人にとっては、その月々の安さが思わぬ盲点となり、人生で最も大きな買い物である住宅ローンの条件を悪化させる要因になってしまうリスクがあります。

重要なのは、月々いくら払うかという目先の数字だけでなく、総額でいくら支払うことになるのか、そしてその契約が他のライフイベントにどのような影響を与えるのかを総合的に判断することです。目先の数字の魅力に惑わされず、人生全体のバランスシートを見渡す視点を持つことが何より大切なのかもしれません。

家と車、どちらも人生における大きな買い物だからこそ、その順番と支払い方法については慎重に検討し、長期的な視点で最適な選択をしていきたいものです。



ライター:根岸 昌輝
自動車メーカーおよび自動車サブスク系ITベンチャーで、エンジニアリング、マーケティング、商品導入に携わった経験を持つ。
現在は自動車関連のライターとして活動し、新車、技術解説、モデル比較、業界動向分析など、業界経験に基づいた視点での解説を行っている。