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「輸入車はすぐ壊れる」は本当?クルマの専門家が明かす、日本車と同じ感覚で乗ると痛い目に遭う“意外なワケ”

  • 2026.1.28

 

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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

「輸入車には乗りたいけれど、壊れるのが怖い」

多くの人が抱くその不安は、実際のところどうなのでしょうか?実は輸入車=壊れやすいというイメージの裏には、故障に対する定義の曖昧さや、日本特有の使用環境、そして設計思想の違いといった背景が存在しているようです。

本記事では、客観的なデータとメカニズムの視点から「壊れやすさ」の正体を紐解き、輸入車と賢く付き合うためのヒントをご紹介します。

「修理が怖い」で諦めない。輸入車は本当に壊れやすいのか?

街中でふと見かけた流麗なボディラインや、独特の排気音。一度でも、輸入車という選択肢が頭をよぎったことがある方なら、同時にこんな心の声が聞こえてきた経験があるのではないでしょうか。

「外車って、すぐ壊れると聞くけれど本当かな?」「出先で止まったらどうしよう……」

ある程度ライフスタイルが確立し、クルマ選びにもこだわりを持ちたい世代にとって、この「故障への不安」こそが、輸入車購入への最後にして最大のハードルとなっていると推察できます。友人からの忠告や、ネット上の「警告灯が消えない」といった、センセーショナルな体験談を目にすれば、二の足を踏んでしまうのも無理はないでしょう。

しかし、私たちが漠然と感じている「壊れやすい」というイメージは、果たして現在の輸入車すべてに当てはまることなのでしょうか?もしかすると、以前のイメージや、一部の目立つ事例が独り歩きしている可能性も考えられます。

そこで今回は、自動車の専門家としての視点から、感情論ではなくデータと論理に基づいて「輸入車の故障」の正体を少しずつ解き明かしていきたいと思います。これを読み進めることで、長年抱えていた不安の霧が、少し晴れてくるかもしれません。

そもそも「故障」とは何か?トラブルの正体を知る

まずは、「車が壊れた」という言葉の意味を整理することから始めてみましょう。多くの人が故障と聞いてイメージするのは、高速道路でボンネットから白煙を上げたり、突然エンジンがかからなくなって立ち往生したりするような、いわゆる致命的なトラブルではないでしょうか。

では、実際のトラブルの原因は何が多いのでしょうか。JAF(日本自動車連盟)が公表している「2024年度 JAFロードサービス出動理由TOP3」のデータを確認してみると、興味深い事実が見えてきます。ここで圧倒的な1位を占めているのは、全体の約4割にも及ぶ「バッテリー上がり(過放電)」であり、次いで2位が「タイヤのパンク」となっています。

このデータから読み取れるのは、トラブルの多くが車両そのものの設計ミスや欠陥というよりは、消耗品の寿命やメンテナンスのタイミングに起因している可能性があるということです。つまり、輸入車に乗っている人が「車が止まってしまった」と言うとき、その実態は「エンジンが壊れた」わけではなく、「バッテリーの交換時期を見誤った」あるいは「タイヤの空気圧管理が甘かった」というケースも少なくないと考えられます。

もちろん、これらは定期的な点検と交換で防げる「管理可能なリスク」と言えるでしょう。「壊れやすい」という言葉の中には、こうした日常的なメンテナンスで防げるトラブルも含まれてしまっているのが現状なのです。まずは、致命傷と消耗品の劣化を分けて考えることが、不安解消の第一歩となるはずです。

データが証明する「国籍よりもモデル差」の事実

消耗品のトラブルが多いとはいえ、「やっぱり日本車に比べれば作りが甘いのでは?」という疑問も残るかもしれません。そこで、客観的な品質評価として世界的に参照されている、J.D. Powerの調査データを見てみましょう。

2025年の米国自動車耐久品質調査(VDS)の結果を見ると、確かに日本の「レクサス」が高いスコアで首位を獲得しており、トヨタも上位にランクインしています。日本車の信頼性が世界トップレベルであることは、データが如実に示していると言えます。

一方で注目したいのが、輸入車勢の健闘ぶりです。欧州スポーツカーの代名詞であるポルシェや、BMW傘下のMINIなどは、業界平均を上回る良好なスコアを記録しています。逆に、同じ輸入車でもブランドやモデルによっては、平均を下回るケースも見受けられます。

こうしたデータから見えてくるのは、「輸入車だから壊れる、日本車だから壊れない」という単純な図式ばかりではない、という事実です。現代の自動車産業において、品質の差は国籍という大きな枠組みよりも、個々のメーカーやモデル、さらにはその年式による差のほうが大きいといえるかもしれません。

したがって、「外車=故障」と一括りにするのではなく、検討しているそのモデルの信頼性はどうなのか?という視点で、個別に情報を見極めることが大切になってくるでしょう。

なぜ日本では「輸入車は弱い」と感じるのか?

データ上では優秀な成績を収める輸入車もある中で、なぜ日本ではこれほどまでに「外車はよく壊れる」と言われ続けるのでしょうか。その背景には、車そのものの品質だけでなく、日本の特殊な環境が大きく関わっていると考えられます。

一般的に、欧州車(特にドイツ車など)は、「冷涼で乾燥した気候」や「アウトバーン(速度無制限区間)での高速巡航」を前提に設計されていると言われています。つまり、彼らの設計思想には、走行風をたっぷりと当てて、エンジンや部品を冷却することが組み込まれているのです。

それに対し、日本の道路事情はどうでしょうか。世界的に見ても高温多湿な気候に加え、信号や渋滞による頻繁な「ストップ&ゴー」が繰り返されます。平均車速は低く、真夏のアスファルトの上では、エンジンルーム内に想像以上の熱がこもることになります。

この熱と湿気のコンビネーションが、欧州車にとっては厳しい条件となるようです。例えば、樹脂製のパーツやゴムパッキン、繊細な電子制御センサーなどは、想定以上の熱負荷を受け続けることで、想定よりも早く劣化が進んでしまう可能性があります。

もちろん、各メーカーもただ手をこまねいているわけではありません。販売する国の環境を想定した厳しいテストを行い、その基準をクリアした車両を販売しています。それでもなお、日本の高温多湿と渋滞が組み合わさった特殊な環境は、シミュレーションを超える負荷を車に与えてしまう場合があるのかもしれません。

これを「日本の気候に合っていない」と表現することもできますが、見方を変えれば、車にとっては非常に過酷な環境で頑張っているとも言えるでしょう。日本で輸入車に乗るということは、環境の異なる国へアスリートを連れて行くようなものかもしれません。彼らがベストパフォーマンスを発揮できるよう、その土地の環境に合わせたケアが必要になるのは、ある意味で自然なことといえるのではないでしょうか。

「予防整備」か「事後整備」か。決定的な思想の違い

環境の違いに加えて、もう一つ押さえておきたいポイントがあります。それは、日本車と輸入車の間に存在する「メンテナンスに対する思想」の違いです。

私たち日本人は、日本車の持つ高い耐久性に慣れ親しんでいます。日本車は「メンテナンスを多少忘れても、車検までは走れてしまう」ほど、部品の耐久性に十分な余力を持たせて設計されているケースが一般的です。そのため、壊れてから修理工場に持ち込むという「事後整備」的な乗り方でも、大きな問題になりにくい傾向があります。

対照的に、輸入車、特に欧州車の設計思想は「予防整備」が基本にあるといわれています。彼らは「部品には明確な寿命があり、本来の性能(走る・曲がる・止まる)を維持するためには、壊れる前に定期的に交換すべき」と考える傾向が強いようです。

そのため、ゴムブッシュやセンサー、ポンプ類などは消耗品として設計されており、一定の期間や走行距離で交換することが前提となっています。時折メーターパネルに警告灯が点灯することがありますが、これは必ずしも「もう動かない」という深刻な合図ではなく、「そろそろ部品交換の時期ですよ、性能が落ちていますよ」という、車からのメッセージでもあるのです。

この文化的な背景を理解せずに、日本車と同じ感覚で「何もせずに乗り続ける」と、当然ながら警告灯は点灯し、調子を崩すことになるでしょう。これを故障と捉えるか、性能維持のための定期的なメンテナンスと捉えるか。この意識の違いこそが、「輸入車は維持費がかかる」「壊れやすい」という評価につながっている一因かもしれません。

輸入車とは「対話」を楽しむパートナーである

ここまで見てきたように、「輸入車=壊れやすい」というイメージは、必ずしもすべてが事実というわけではありません。正確には、「日本の特殊な環境下で、日本車と同じような感覚で接すると、機嫌を損ねやすい傾向がある」と言い換えることができるでしょう。

輸入車に乗るということは、単なる移動手段を手に入れるだけでなく、車という機械と向き合い、対話をする時間を手に入れることでもあります。「最近エンジンの音が変わったかな?」「そろそろあの部品の交換時期かな?」と気にかけること。その少しの手間を、面倒だと感じるか、愛着だと感じるかで、カーライフの豊かさは変わってくるはずです。

もしあなたが、その手間さえもクルマを所有する喜びの一部として受け入れられるなら、輸入車はあなたの良きパートナーになり得るでしょう。ドイツ車の剛性感、イタリア車の情熱的なエンジン、フランス車のしなやかな乗り心地。それらは、適切なメンテナンスという対価を払ってでも味わう価値のある、特別な体験かもしれません。

「壊れるのが怖い」と諦めてしまう前に、まずは「どのようなメンテナンスが必要なのか」を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。信頼できる専門店を見つけ、予防整備のサイクルを理解すれば、輸入車ライフは決して恐ろしいものではないはずです。そこには、輸入車だからこそ味わえる、味わい深いカーライフが待っているかもしれません。


参考:
Vehicle Dependability Still Suffering Due to Pandemic Aftershocks, J.D. Power Finds(J.D. POWER)
2024年度 JAFロードサービス出動理由TOP3(JAF)


ライター:根岸 昌輝
自動車メーカーおよび自動車サブスク系ITベンチャーで、エンジニアリング、マーケティング、商品導入に携わった経験を持つ。
現在は自動車関連のライターとして活動し、新車、技術解説、モデル比較、業界動向分析など、業界経験に基づいた視点での解説を行っている。