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相手のセンターライン越えなのに「過失2割」を告げられ…自動車保険27年のプロが見た、想定外の落とし穴

  • 2026.3.17
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

「センターラインを越えてきたのは相手だから私は悪くない」

事故直後、多くの人がそう感じるはずです。たしかに、対向車のはみ出しという明らかな違反があれば、過失は100:0になるでしょう。しかし、実際の示談交渉では「回避義務」という考え方が持ち出され、想定外の過失割合が提示されることがあります。

見通しの良い直線道路で起きた突然の接触

Bさんは、見通しの良い片側1車線道路を通常どおり走行していました。交通量も少なく、特別危険を感じる状況ではなかったといいます。しかし、対向車が突然センターラインを越えて接近。「危ない」と感じた瞬間にブレーキを踏みましたが、接触は避けられませんでした。

警察の現場確認でも、相手車両のセンターラインオーバーは明らか。Bさんは当然のように「これは相手が100%悪い事故になるはずだ」と考えていました。

修理依頼を受けた私も、話を聞く限りBさんの過失はゼロだろうと思っていました。

8:2と告げられた理由――「回避義務」という壁

ところが、保険会社から提示された過失割合は8:2。

理由として挙げられたのが、「回避義務があった可能性」ということでした。

回避義務とは、たとえ相手に明らかな違反があったとしても、自分にも事故を防ぐための注意義務があるという考え方です。「もう少し早く減速できなかったか」「より左に寄る余地はなかったか」「危険を予測できなかったか」――そうした点が検討対象になります。

今回のケースでは、見通しの良い直線道路だったことが逆に材料とされました。視界が開けている以上、対向車の異変を早めに察知できたのではないか、という見方です。

しかし、Bさんの感覚としては「突然だった」という一言に尽きます。それでも回避できた可能性があると判断されれば、過失はゼロにならない。相手がセンターラインを越えてきても、必ず100:0になるわけではない。この現実に、Bさんは強い違和感を覚えました。これについては、私自身も「相手のセンターライン越え=過失ゼロ」という単純な話ではないことを、改めて思い知らされることになったのです。

さらに、過失割合が確定しない段階では保険金の支払い割合も決まらないため、Bさんは修理を一時ストップせざるを得ない状況になりました。

「早く直して元の生活に戻りたいのに、割合が決まらないと進められないんですね……」

そう不安そうに話されるのも無理はありません。

ドライブレコーダーが示した決定的証拠――そして過失ゼロへ

納得できないBさんから相談を受けた私は、事故当時のドライブレコーダー映像をBさんが加入している保険会社に提出することを提案しました。

すると後日、保険会社から「この映像をもとに再検討が行われ、最終的な過失割合は100:0に修正されました」と報告があったのです。

ドライブレコーダーには、対向車が突然センターラインを越えてくる様子がはっきりと記録されていました。さらに、危険を認識した直後にブレーキをかけた記録も確認できました。映像からは、回避するための時間的余裕がほとんどなかったことが客観的に読み取れたのです。

もし、ドライブレコーダーがなければ、「見通しが良かったのだから回避できたのではないか」という推測だけで8:2が確定していた可能性もあります。しかし、映像という客観的証拠があったことで、「回避義務は十分に果たしていた」と判断されたのです。

今回の事故は、単に過失割合が覆ったという話ではありません。「相手が悪いはず」という思い込みだけでは、自分を守れないことがある――その現実を教えてくれる出来事でした。センターラインオーバーという明らかな違反があっても、過失ゼロが当然とは限らない。だからこそ、万が一に備えて証拠を残しておくことの重要性を、私自身も強く実感しました。事故は一瞬ですが、その後の判断は証拠で決まります。

ドライブレコーダーは、いざというとき自分の運転を証明してくれる存在になるのです。


筆者:河野みゆき
自動車販売・整備・保険業に27年従事。損害保険募集人資格を保有し、車両購入からメンテナンス、カーライフに関わる保険まで幅広く対応。現場経験をもとに、ユーザー目線でわかりやすい情報発信を行っています。


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