1. トップ
  2. 「年収300万円台・手取り20万」の新社会人が、最初の1台で陥る“住宅ローン並み”のワナ

「年収300万円台・手取り20万」の新社会人が、最初の1台で陥る“住宅ローン並み”のワナ

  • 2026.1.25

 

undefined
出典元:PIXTA(画像はイメージです)

新社会人にとって、クルマは単なる移動手段以上の特別な買い物です。しかし、周囲の空気やローンが通るという基準だけで選んでしまうと、数年後の生活にじわじわと影響が出てくることも。

この記事では、年収300万円台の手取り事情という現実をベースに、購入総額ごとのローン返済比率シミュレーションを交えながら、無理なく乗り続けられるクルマ選びの「ゾーン」について整理します。

「数年後も無理なく乗り続けられるか」という視点

新社会人にとって、クルマの購入はやはり一大イベントといえるでしょう。人生で初めて手にする高額商品であり、多くの場合、数年がかりの支払いがスタートする契約でもあります。

もちろん、最初の1台で人生が決まるわけではありません。ただ、そこでの選択がボディブローのように、日々の生活へじわじわ効いてくることは意外とよくある話です。

周囲を見れば、先輩は当たり前のようにローンを組み、SNSや広告には魅力的なクルマが並んでいます。そうした空気の中では、「このくらいが普通かな」と感じてしまうのも無理はありません。

しかし、ここで一度立ち止まって考えたいのが、「今、買えるか」よりも「数年後も無理なく乗り続けられるか」という視点です。

まずは、新社会人の多くがスタートラインとする「年収300万円台」という数字。その内訳を、あえてシビアな「手取りベース」で見つめ直すことから始めてみましょう。

年収300万円台の「手取り」は、額面の印象よりタイト?

新社会人として働き始め、年収300万円という数字を目にすると、学生時代と比べてある程度の余裕を想像する方もいるかもしれません。

例えば、ボーナスなしで毎月均等に支払われる場合、額面は月25万円になります。しかし実際には、そこから社会保険料や所得税、住民税(2年目以降)などが差し引かれます。これらを引くと、環境によって異なりますが、月々の手取り額は20万円前後になります。

特に、一人暮らしなどの新生活が始まったばかりのタイミングでは、そこから家賃や通信費、食費などの固定費が出ていくため、クルマに回せる余力は想像より限られていると感じる人が多いのが現実です。

だからこそ、新社会人にとって重要なのは、年収そのものより、毎月の手取りとその中で固定費がどれくらい占めるかを把握することです。クルマは便利ですが、駐車場代や保険料を含め、家計の中では固定費化しやすい存在でもあります。

まずはローンが通るかを確認するより先に、これからの家計に対して、クルマという荷物がどれくらいの重さになるのかを掴んでおく。それが、新社会人が後悔しないための現実的なアプローチの一つなのです。

ローンが通る=生活が楽、ではない理由

購入の現場では「この金額なら問題なくローンが通りますよ」と言われることがあります。もちろん、金融機関の審査基準としては事実なのでしょう。

ただ、注意したいのはローンが通ることと、生活が楽であることは一致しないという点です。

月々の支払いが数字として成立していても、それが数年続けば家計への影響は蓄積します。貯蓄がしにくくなったり、急な出費に対応できなくなったりして、気づかないうちに生活の精神的な余裕が削られていくこともあり得ます。

ですので、ここでは“正解の車種当て”をするのではなく、「家計の中でクルマをどれくらいの“サイズ感”に置くか」を先に決めてしまいましょう。予算の枠組みを作るほうが、結果として迷いがなくなり、後悔しにくい選び方に近づけます。

手取りから逆算する、選べるクルマ

では、限られた手取りの中で、具体的にどのクルマを選べばよいのでしょうか。「月々いくらなら払えるか」から考えるのも一つの手ですが、月々の支払額は、支払い回数などでいくらでも調整(安く見せること)ができてしまいます。

そこで、ごまかしのきかない「乗り出し総額(車両価格+諸費用)」を基準に、3つのゾーンで整理してみましょう。

ここでは現実的なラインとして、【頭金なし・金利5%・60回払い(5年)】でローンを組んだ場合の目安額と、それが「手取り(月20万円想定)の何%に相当するか」を算出します。

知っておきたい「安全圏のロジック」

一般的に、家計において無理のない返済比率は、全ての借入を合わせて手取りの20%以内と言われています。 新社会人の多くは他にローンがない前提ですが、もし奨学金などの返済がある場合は、その分を差し引いて予算を立てる必要があります。

これを踏まえると、クルマ関連費(ローン+維持費)の目安も同様に見えてきます。クルマにはローン以外に駐車場代や保険料などの「維持費」が必ず発生し、これだけで手取りの5〜10%程度かかります。そのため、たとえ他のローンがなくても、20%ギリギリまで借りるのは危険です。

維持費と合わせた総支出を抑えるためにも、「クルマのローン返済額そのものは、手取りの10〜15%以内に収める」のが、貯金をしながら乗り続けるための鉄則です。

堅実・安心ゾーン(目安:総額100万円以下 / ローン返済:月約1.9万円〜)

まずは、中古の軽自動車や、少し年式の進んだコンパクトカーが狙えるゾーンです。

この価格帯の最大のメリットは、フルローンを組んでも返済額が手取りの約1割(10%)で済む点です。維持費を合わせても、クルマ関連費全体を「手取りの20%以内」という安全圏に収めやすく、最も理想的なバランスといえます。

「まずは生活の基盤を固めたい」「将来のために貯金も並行して進めたい」という新社会人にとって、この10%という数字は非常に理にかなった選択肢です。

バランス・挑戦ゾーン(目安:総額150万円前後 / ローン返済:月約2.8万円〜)

次に、状態の良い中古コンパクトカーや、登録済未使用車の軽自動車などが視野に入るゾーンです。クルマとしての性能や安全装備も充実してくるため、満足度は高くなります。

ただし、ローン返済比率は手取りの約15%に達します。ここに維持費が加わると、クルマ関連費全体は手取りの20〜25%に迫り、家計の「安全圏」ギリギリのラインとなります。

「他の趣味や交際費を少しセーブしてでも、納得できるクルマに乗りたい」という場合、このゾーンが生活を守れる防衛ラインになると心得てください。

覚悟が必要なゾーン(目安:総額250万円以上 / ローン返済:月約4.7万円〜)

新車の普通車や、人気のSUVなどが候補になるゾーンです。

見た目の魅力は抜群ですが、ローン返済だけで手取りの24%近く(約4分の1)を占めることになります。ここに維持費を加えると、手取りの35〜40%近くがクルマに消えることになり、これは住宅ローン並みの負担率です。

借金総額が大きい事実は変わりません。クルマのために働く状態になりかねないため、このゾーンを選ぶなら、実家暮らしで家賃がかからないなど、特別な条件と覚悟が不可欠です。

新車=正解・中古=妥協ではない理由

クルマ選びにおいて、新車には保証や最新装備といった代えがたい安心感があります。一方で中古車には、購入時の負担を抑えやすいという現実的なメリットがあります。

最初の1台に求める役割を、「毎日の移動手段を確保すること」「生活を圧迫しないこと」にあると考えてみると、どうでしょうか。そう考えると、中古車は妥協ではなく、将来のための賢い“戦略”として見えてくるはずです。

「まずは手頃なクルマで慣れて、数年後に資金ができたら乗り換える」。そんなふうに乗り換える前提で最初の1台を捉えれば、選択肢の見え方もポジティブに変わってきます。

最初の1台は“完成形”でなくていい

年収300万円台であっても、カーライフを楽しむことは十分可能ですし、無理せず乗り続けられるラインは作れます。

ポイントは、車種を当てに行く前に手取りの何割をクルマに置けるかを決め、その支払いをしてもなお生活を楽しむ余力が残るかを確認すること。

最初の1台は、理想を詰め込んだ完成形でなくても構いません。生活の余裕を守る選択は、数年後に振り返ったとき、必ず「あの時無理をしなくて良かった」という形で効いてくるはずです。



ライター:根岸 昌輝
自動車メーカーおよび自動車サブスク系ITベンチャーで、エンジニアリング、マーケティング、商品導入に携わった経験を持つ。
現在は自動車関連のライターとして活動し、新車、技術解説、モデル比較、業界動向分析など、業界経験に基づいた視点での解説を行っている。