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長男だからお前が払え。誰も住まない実家の固定資産税を巡り、兄弟が絶縁した正月の話【不動産のプロは見た】

  • 2026.1.24
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

固定資産税の支払いを巡って、相続した不動産のことで家族と揉めた経験がある方もいるかもしれません。相続によって実家を共有名義で引き継いだ場合、登記上の持ち分がどうであれ、固定資産税の納税通知書は代表者1人にまとめて届くことが多くあります。

その結果「とりあえず払っておく」人が固定され、いつの間にか負担と不満だけが一方に積み重なっていきます。

今日ご紹介するのは、まさにこの構図の中で起きた出来事です。相続した実家を共有で持ち続けたことで、固定資産税が兄弟姉妹の関係を静かに壊していきました。

「あとで決めよう」で始まった共有名義

登場するのは、50代の長男Aさん、40代後半の次男、長女です。両親はすでに他界し、郊外に戸建ての実家が残されました。相続が発生した時点で3人ともそれぞれ自宅を構えており、実家に戻って住む予定は誰にもありません。

きょうだいで話し合いは行われましたが、すぐに方向性を決めることはできませんでした。その結果、いったん次のような判断に落ち着きます。

  • 売却は今すぐ決めない
  • 解体についても、判断を先送りする
  • ひとまず、3人の共有名義で相続する

当時は、波風を立てない無難な選択に見えたのかもしれません。しかしこの段階で、固定資産税や管理費を誰がどう負担するのかといった具体的な取り決めは一切されていませんでした。

「きょうだいなのだから、いつでも話せる」

そんな空気が、問題を棚上げしたまま時間だけを進めていきました。

誰も住まない家の“担当”にされた長男

実家は空き家のまま、誰も出入りしない状態が続いていました。時間だけが過ぎ、生活の中で実家を意識する場面はほとんどなくなっていきます。

それでも、支出だけは毎年きっちり発生しました。

  • 固定資産税:約18万円(年間)
  • 草刈りや最低限の管理費:約5〜6万円(年間)

合計すると、年間でおよそ24万円前後。住んでいない家に、何年もかかり続けるお金です。

この負担を、最初の数年は長男のAさんが立て替えていました。

「今は自分が払っておく」「あとで精算すればいい」

そう考えていたからです。

ただ、年数が重なるにつれ、気持ちは少しずつ変わっていきました。

  • 誰からも声はかからない
  • 精算の話も出ない

固定資産税を支払うたび、Aさんの中に「このまま、自分が払い続けることになるのではないか」という感覚が残るようになっていきました。

正月、固定資産税の話題で空気が変わる

久しぶりにきょうだいが顔をそろえた正月でした。酒も進み、昔話で場が和んできた頃、Aさんが口を開きます。

「そろそろ、実家のことを決めないか。税金も、ずっと俺が立て替えているし」

重い空気になる前に、話を前に進めたかったのかもしれません。しかし、その直後に返ってきた次男の一言で、空気が一変しました。

「でも、長男なんだから、そのくらいは仕方ないだろ」

Aさんの表情が変わります。

「誰も住んでいない家だぞ。どうして、俺が払う前提になるんだ」

そこから先は、固定資産税の話だけでは済みませんでした。

  • 親の介護のとき、誰がどれだけ関わったのか
  • 相続の話し合いで、何を我慢してきたのか
  • これまで飲み込んできた不満

押し込めていた感情が、一気にあふれ出します。正月の席は結論が出ることもないまま、気まずさだけを残して終わりました。

固定資産税の負担だけが、先送りされた

その場では、売却や解体の話も出ました。ただ、方向性がまとまることはありません。それぞれの考えは、噛み合っていませんでした。

  • 長男:早く手放し、固定資産税の負担から解放されたい
  • 長女:思い出が残る家を、すぐに処分する決断ができない
  • 次男:話し合いが揉めるなら、できるだけ関わりたくない

意見は出ても、合意には至らない。結局、具体的な方向性は何も決まりませんでした。

それ以降、きょうだい間の連絡は少しずつ減っていきます。用件があるときだけ、短いやり取りをする。そんな関係に変わっていきました。やがて、連絡そのものが途絶えます。後日、Aさんがぽつりとこぼした言葉が、今も印象に残っています。

「家を相続したつもりだった。でも、面倒なものまで一緒に引き継いでいたんだな」

全員が後悔した「共有で持つ」という判断

現在も、実家は空き家のまま残されています。住む人はいません。

  • この先どうするかを決める人もいない
  • 固定資産税だけは毎年変わらず発生する

時間が解決してくれることはありませんでした。きょうだいの関係も自然に元へ戻ることはなく、距離が空いたまま年月だけが過ぎています。しばらく経ってから、3人それぞれが同じ言葉を口にしました。

「共有で持つという判断が一番よくなかった」

当時は無難に思えた選択が、結果として誰も決断を引き受けないまま、時間だけが過ぎる状態を生みました。家だけでなく、きょうだいの関係まで縛り続けてしまったのです。

相続で「平等」を選んだ家族の行き着く先

あとから振り返れば、選択肢がなかったわけではありません。ただ、相続の時点で負担の決め方を詰めなかったことが、問題を長引かせました。

本来であれば、次の点を整理しておくべきでした。

  • 相続の段階で、固定資産税を誰がどの割合で負担するのかを明確にしておく
  • 管理費や草刈りなど、毎年必ず発生する費用の支払い方法を決めておく
  • 感情が絡む前に、親族以外の第三者(不動産会社など)を交えて整理する

誰も住まない実家は、時間が経つほど「持っているだけの負担」になります。固定資産税と最低限の管理費は、使われなくても毎年発生するからです。

特に共有名義は公平に見えて、実際には責任が曖昧になりやすい形です。支払う人と決める人が分かれたままでは、不満だけが残ります。

固定資産税の扱いを決めないまま時間が過ぎると、最後に壊れてしまうのは、家ではなく人との関係かもしれません。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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